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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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62/210

56年目-5 動き出すエリス

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


エリス・モリガナ(51)

ヴァール(???)

 WSO統括理事がかつての戦友達や、その後継達に次々連絡を取ってともに第五次モンスターハザードへの対抗を呼びかけていく中。

 ある意味ではヴァールがもっとも頼りにしている存在とも言える初代聖女エリス・モリガナはその頃、日本にいた。すでに世界規模で頻発するスタンピードに作為的なものを予感し、独自に捜査を行っていたのだ。

 

 シルクロードを陸路で横断しつつ、途中モンスターの氾濫あらばこれを食い止め。各地のスラムや裏社会のマーケットに潜入しては、密かに情報を仕入れ。

 そうして中国は香港から貨客船に乗って日本に辿り着く頃には、一連のスタンピードが委員会によるものと結論付けたのである。

 

 日本についてからエリスは、引き続きスタンピードに対応しながらも少し休息期間をとった。

 当時すでに先進国の仲間入りを果たしていた日本で幾ばくか旅の疲れを癒やしていたのだ。

 

 ──ヴァールからの電話が届いたのはそんな中でのことだった。

 二代目聖女から聞き出した情報を元に割り出した彼女の滞在する旅館に、連絡がきたのである。

 

 

 

 風呂上がりでさっぱりした身体にビールが染みる。浴衣姿のエリス・モリガナは宿泊中の温泉宿にて一人、夜景を眺めながら晩酌を楽しんでいた。

 かれこれ一ヶ月ほど滞在している関西北部の宿だが、これがまた風情があってよろしいとご満悦のエリスだ。ソフィアに発行してもらった特別製の探査者証明書は成人済みであることだけを認可して実年齢の記載はなく、それゆえ《不老》の社会的影響を最低限に抑えつつ成人の嗜みも大体味わうことができる。

 

 ここに来るまでの道中、ひたすらモンスターを倒し続けていささか疲れた。

 その労をねぎらう意味も込め、こうしてしばらく全力で遊ぶのだと彼女は、週刊少年漫画雑誌を山積みにしつつ、ツマミを食べてビールを飲みまくっているわけだった。

 

「……だってところにヴァールさんから連絡が来て、なんだなんだと一瞬焦りましたよハッハッハー! いやーお久しぶりです」

「忙し……くはなさそうだな。お楽しみのところすまない、エリス。重要な用件だったものでな」

 

 そんな折、宿の女将から電話アリの報せを受けたのがつい先程。

 なんだ誰だと受話器を受け取ってみれば、まさかのWSO統括理事様。これには少しばかりの酔いも吹き飛んで、エリスは軽口を叩きながらも真剣な心地で彼女に応対した。


 おそらくだが用件といえばアレしかない。

 シルクロードを通っての旅路において突き止めた、この頃頻発するスタンピードの真実。20年ぶり3度目の暗躍。

 ヴァールからしてみれば通算45年目となる因縁の犯罪組織に付いてだろう。

 

「委員会……ですね、話っていうのは」

「……さすがだ、エリス。やはり突き止めていたか。そうだ、此度の連続スタンピードは紛れもなく奴らによる人為的犯行。第五次モンスターハザードだとWSOは認定した」

「でしょうねー。まあエリスさんも突き止めたのは日本に来る直前、香港にいた頃のことなんでついこないだなんですけど。いやーしつこいですねーあいつらホント」

「まったくだ」

 

 電話越しにも伝わる呆れ。ヴァールはもはや、委員会に対して呆れの感情しか持っていないようだった。


 だろうな、とエリスは思う。ヴァールこそはこれまでのすべてのモンスターハザード、その最前線に携わり戦ってきた紛れもない英雄だ。

 そんな英雄が率いるWSO相手に、今度で3度目ともなる大事件を引き起こすなど──破滅願望でもあるのかな? と首謀者には問い質してみたい気分だ。

 

 しかして初代聖女は油断大敵と内心でつぶやいた。

 逆に言えばそれほどまでに分が悪いと思える騒動をあえて仕掛けてきたのは、向こう側にもそれ相応の手札があるということなのだろう。

 舐めてかかると痛い目を見るかもしれない。


 もう何十年と昔、たまたま出くわしたかつての仲間とラスベガスのカジノに挑んだ結果、見事にボロ負けして二人で半泣きになりながら逃げ帰った苦い記憶を思い出しつつ……

 エリスは首を左右に振り回し、意識を現在に戻して尋ねた。

 

「ハッハッハー。で、私にも協力しろってことですね? もちろん構いませんよ、至急そちらに向かいます。ええといつものWSO本部でいいですか?」

「いや、お前はそれより先に合流してほしい者がいる。ちょうど今いるだろう日本の、中部地方にな」

「はへ? え、誰です助っ人さん?」

 

 首を傾げるエリス。日本の中部地方、そこは30年前に第三次モンスターハザードが引き起こされた地であり、自身も当時近くにおり、ヴァールと再会を果たした場所の付近でもある。

 そんなところにわざわざ何を? 訝しむエリスへ、統括理事たる永遠の探査者少女は言うのだった。

 

「第三次モンスターハザードの際、ワタシとともに最前線で戦ってくれた早瀬光太郎という男だ。今回は彼や彼の率いる探査者達の手も借りたい」

「早瀬、光太郎……ですね。はいはい」

「連絡はしておくので、すまんが彼らとともにスイスまで来てくれ。WSO日本支部のスタッフが引率するよう命じておくので彼らに従うようにな。ああ、もちろん旅費はこちら持ちだ」

「了解です! エリスさん的にも渡航費用が浮くからラッキーですとも、ハッハッハー!」

 

 段取りを告げるヴァールに、エリスはすぐさまうなずき答えて笑う。

 30年前、奇しくもニアミスする形でお互いモンスターハザードに関与していたエリスと光太郎が……この時、初めて顔合わせをする運びとなったのだ。

 明日から一日一度、0時更新でお送りします、よろしくお願いしますー

ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 エリスが早瀬の孫を弟子にしている「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] 居場所を突き止めて旅館に電話ということは、まだ携帯電話が普及していないのかな。 エリスさんが携帯電話を持っていない線もあるかー
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