56年目-1 20年ぶりの暗躍、そして
本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢
ヴァール(???)
新世代の探査者の萌芽が次々芽生える中、悪は変わらず悪であった。
大ダンジョン時代到来から55年が経過するあたりでまたしても、モンスターハザードの気配が漂ってきたのだ。
というのもこの頃、世界各地で散発的にスタンピードが起きる頻度が高まり、人為的なものでないのかという疑いがかけられだしていたのである。
当然ソフィア・チェーホワ率いるWSOは即座に捜査を開始。専属エージェントから直属組織・国際探査裁判所が擁する能力者犯罪捜査官チームを全世界規模に展開。情報収集に努めた。
そしてその結果、世界規模のスタンピードはまさしく人為的なもの、すなわちモンスターハザードであることが判明し。
加えて言えばその主謀者は……第一次モンスターハザードと第四次モンスターハザードの際に暗躍していた、委員会と呼ばれる組織であることも分かったのであった──
「3度目の正直とでも言うつもりか? ふざけた話だ、まったく」
スイス、ジュネーヴ。WSO本部施設は最上階、統括理事室。
専用の執務机に着きつつ、怒りというよりはもはや呆れを隠さずにヴァールは、捜査資料に目を通しながらもウイスキーのグラスを傾けた。
世界最高峰のエージェント達によってよく精査されまとめられた、信頼できる情報だ。
それゆえにそこに記された、近年世界各地で頻発しているスタンピードが人為的なものであるという断定。およびそれを主謀する組織が以前、2度に亘り似たような事件を引き起こしてきた委員会であるという結論もまた、受け入れるしかないものなのであった。
「一度目は45年前……能力者大戦の時。能力者達の保護と終戦への働きかけが実りかけていた時期に仕掛けてきたのを、他ならぬワタシが叩き潰した」
思い返すは大ダンジョン時代発生後10年目。折しも数年続いた能力者大戦も末期に至り、終戦と平和への目処が立ち始めていた頃のことだ。
特に戦争の被害が大きかった地域で異様にスタンピードが多発し、一体何ごとかと調べに行ったヴァールが相対することとなったのが委員会なる正体不明の組織の幹部だった。
そこから連中がダンジョン内のモンスターを意図的に外部に誘き寄せ、人々の住む町や村にけしかけていたことを知り、第一次モンスターハザードを巡る戦いが始まったのだ。
結果から言えば半年ほど、世界各地を巡ったヴァールがほとんど一人で組織を追い詰め、幹部達もほとんど捕縛したのであるが……肝心の組織の主導者、ボス的な立ち位置の者は姿すら確認することができずじまいだった。
それゆえだろう、委員会は水面下にて復活を遂げ、そこから25年後に再び悪辣な計画を実行に移した。
マリアベール・フランソワが大活躍を見せた、第四次モンスターハザードである。
「二度目、三度目はそれぞれ関係ない組織によるものだったが。まさか四度目になってまた、委員会が動くとも思っていなかったな……」
酒精を軽く流し込んだ頭で思い出す。20年前、忘れもしないイギリスはスコットランドでの戦い。
大探査者として名を馳せ、今は子育てのために一時引退中のマリアベールと出会い、ともに犯罪組織の魔の手から人々を守り抜いたのだ。
第二次モンスターハザードにおける隠れた英雄、エリス・モリガナが参戦してくれたことも印象強く、ヴァールにとってあの頃の戦いは不謹慎ながらどこか、充実したものを覚えるものだった。
最終的にマリアベールが事件の主謀者たる委員会大幹部を打倒して逮捕。それに伴いスタンピードもまた終息していったものの……その時は組織の中でも一セクションだけの犯行だったようで結局、本丸たる首領の姿は見ることさえも叶わなかった。
「そしてそこから20年経って、今回の第五次モンスターハザードというわけか……一体どこのどいつか知らんが、WSOを相手によくここまで姿を隠し通すものだ。委員会の黒幕め」
苦々しさとともに酒を飲み干す。途中の第二次、第三次まで含めればこれで5度目の人為的スタンピード誘発事件、通称モンスターハザードの発生になる。
そのうち三度も主謀者として動いている委員会。ヴァールとしては最初から加減など一切していなかったが、どうやら手札が足りていなかったのかと自覚せざるを得ない。
そう、足りなかった。自分一人で解決した第一次の時はもちろんのこと、エリスやマリアベールとともに戦った第四次の時にも、根本的に前線での対応人数が少なかったのだろう。
なまじ己も含めて一騎当千の強者ばかりだったがゆえに、数より質を求めたというのも大きかったかも知れない。
だからこそ、今回はオールスターで行く。
かつて、ともに戦ったかけがえのない戦友達。彼ら彼女らの力を借りて、今度こそ委員会を追い詰め、その黒幕に何が潜んでいるのか……ナニモノが蠢いているのかを突き止めそれを阻止するのだ。
ヴァールは机の上、電話の受話器を手に取りダイヤルを回す。彼女の知る、素晴らしい探査者達の助力を得るために。
「エリスに早瀬、マリアベール……は引退中だ、念のため身の回りの注意だけは呼びかけるが基本は育児優先だな。加えてダンジョン聖教にも声をかけておくか。アーデルハイドが来るかはともかく神谷や聖騎士団の力はぜひ欲しい。あとはベリンガム、たしか弟子を取ったとか言っていたがまだ現役だったろうか。それから、ええと──」
連絡帳を確認しながら一人一人、電話をかけていく。
かつてのモンスターハザードにて活躍していた者達とその縁者、ヴァールも知っている実力派探査者達をこの際、集められるだけ集めるのだ。
第五次モンスターハザード。
後の世においては歴代モンスターハザードの中でも最大規模の戦いが行われたとされる事件は、この時からちょうど1年後に本格化するのであった。
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