54年目-1 新たなる世代
本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢
アラン・エルミード(15)
ユリアン・デューン(33)
次代が流れ、世代も変わる──
大ダンジョン時代にある種の区切りをつけるとするならば、探査者マリアベール・フランソワの一時引退こそがもっともそれに値するタイミングと呼べるのかも知れない。
というのも彼女の引退とほぼ同じ頃、新たなる世代とも言うべき若者達が探査者としての産声をあげ始めていたからだ。
若き日のマリアベールが活躍した時期を絢爛と称すならば、世界にダンジョンが現れて半世紀が経つこの時期はまさに灼熱と呼ぶべきだと、そう主張するダンジョン歴史学の研究者もいるほどである。
熱き血潮のサウダーデ・風間。
大ダンジョン時代の怪童グェン・サン・スーン。
秘境探査のプロフェッショナル、ジェイコブ・マークリー。
三代目聖女、そして初代ダンジョン聖騎士団長マルティナ・アーデルハイド。
その後継たる四代目聖女にして第六次モンスターハザード解決の立役者、フローラ・ヴィルタネン。
叡智の里長、シェン・ロウハン。
そして──数々の功績を打ち立て第五次モンスターハザードにおいては主導的活躍を見せ、現代の探査者界隈にあってもソフィア、マリアベールと並び史上最高の探査者であるとの見方も強い大探査者アラン・エルミード。別名"ハザードカウンター"。
こうした歴史に名を残す綺羅星達が、この頃、台頭しつつあったのだ。
アラン・エルミードは15歳になったこの頃、スキルに覚醒した。
そして当たり前のように全探組に登録して職業探査者となり、故郷フランスは南西部を根城にしていた先輩、ユリアン・デューンを師匠として修行の日々に入ったのである。
「んー! 最高よアラン! あなたは天才ね!」
「ありがとうございます、師匠」
ダンジョン内、モンスター蔓延る部屋内をスキルによって一掃して、少しの休憩中。
見事な戦いぶりを見せたアランは師、ユリアンに抱きつかれて素っ気なく返事をした──頬を染めつつの、典型的な青臭い少年の照れ隠しである。
金髪を肩口ほどにまで伸ばした、幼気が未だ残る顔立ちが美しい少年だ。
探査者になって間もないながらも保有するファースト・スキルが強力無比であり、それゆえ早くもゆくゆくはこの地方を代表する存在になってくれるのではないかと全探組の職員達からも大きな期待を寄せられている。
そんな彼に抱きつくのは師匠のユリアン・デューン。
元々はイギリスの探査者だったが10年ほど前、この地に移住して以来ひたすら探査業を行っている。33歳、既婚。一児の母。
若い頃には大探査者マリアベール・フランソワともいわゆる先輩後輩の仲であり、本人もそのことを誇りに思っていた。
そんな彼女だが、自身の息子にも近しい歳のアランをいたく気に入り、鼻高々といったふうに自慢して高らかに誇示していた。
歴戦と言っていいキャリアの彼女をもってしてなお、アランのステータスはすさまじいスキルに彩られていたのだ……そしてそれを操る本人の才覚もまた、あのマリアベールにも匹敵しかねないとユリアンは見ていた。
名前 アラン・エルミード レベル9
称号 賢者
スキル
名称 極限極水魔法
称号 賢者
効果 魔導系、魔法系スキルの威力に補正
スキル
名称 極限極水魔法
効果 極めて高威力、広範囲に水を用いた魔法を展開する
上記がアランの現在のステータスである。レベル9、これ自体はなりたての探査者の域を出ないもので特筆すべきことでもないのだが……何をおいてもスキルが異常極まりない。
アランのステータスが記載された、WSOと全探組による共同発行の探査者証明書を眺め、身震いすら起こしながらもユリアンはつぶやく。
「いやはや、本当にすごいね《極限極水魔法》……今のところ世界に一つきり、アランだけのスキルなんだっけ」
「みたいです。ただ、《極限極風魔法》や《極限極土魔法》と似たようなスキルはあるようですから、魔法系や魔導系スキルと同じでシリーズタイプなんでしょうけど」
「それでいてそれら系統のスキルとは比べ物にならない威力と範囲……か。F級になりたて、新人もド新人な君がE級モンスターの群れを一掃できるなんて無茶苦茶だよね」
「正直、倒せるとは分かっていてもまだまだ怖いですけどね──モンスターもそうですし、このスキルそのものも」
抱きつかれたままぶっきらぼうに目を逸らし、顔を赤くしつつもやり取りを重ねるアラン。ユリアンは師としてなんら不足なく、彼としても尊敬に値すると慕ってはいるがそれはそれとして距離感が近すぎる。これでは照れ臭くて、顔もまともに見れない。
そんなわけで素っ気なく返すアランだが、彼自身、己の身に宿った超絶的と言える力に対し、少なからず恐れを抱いているようだった。
通常15歳の少年ともなれば、超能力たるスキルを得れば多少は調子付こうというもの。彼も最初は内心で天狗鼻になっていたところはあったのだが……
彼が手にしたファースト・スキル《極限極水魔法》は、そんな慢心や驕り高ぶりを吹き飛ばしてしまうほどに凶悪な力を秘めていたのだ。
初めてそのスキルを使用した時、たまたま試し打ちの形ゆえに誰もいない近場の海沿いを選んだのは本当に僥倖だった。
凪いだ浜辺に大災害を齎してしまった記憶は、恐らく生涯忘れることはないだろう。アランは自戒と後悔の念、そして手にした力への責任をこの時、強く抱いていた。
「ここまで恐ろしいスキルを、こんな子供が手にしてどうなるっていうんですかね……自分でも自分が怖いですよ」
「アラン……大丈夫! その力は制御できれば、きっとあなたやあなたの大切なものを守る力になってくれるわ! 少しずつ、焦らずゆっくりと使いこなしていきましょう? ね?」
「…………はい」
期せずして手にした強すぎる力に、怯える弟子を抱きしめて慰める師匠。
まるで母親のようなその温もりに、アランは高鳴る鼓動を抑えつつ、けれど甘えるように身を委ねるのであった。
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