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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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44/210

43年目 マリアベールと二代目聖女

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


マリアベール・フランソワ(25)

ラウラ・ホルン(35)

 後にWSO特別理事の座につくことになるマリアベールであるが、意外にもダンジョン聖教との関係はそれ以前からのものであった。

 そもそもが第四次モンスターハザードの際には幻の初代聖女、エリス・モリガナと知り合っているという縁もある。


 とはいえ実のところ、エリス自身はダンジョン聖教とさしたる関連性はない。

 件の宗教組織が結成されたのは彼女の跡を継いだ二代目聖女、ラウラ・ホルンによるもので、しかもその頃にはエリスは行方をくらませていたのだが……

 彼女個人を猛烈に慕い尊崇するラウラがエリスを探して世界中を巡る旅を続ける中で、マリアベールと接触するのは自然の成り行きとも言えた。

 

 大ダンジョン時代到来から42年目の初夏。

 25歳になったマリアベールの元に、齢35にもなった二代目聖女が襲来したのである。

 

 

 

「失礼。あなたがマリアベール・フランソワさんでよろしかったかしら?」

「あーん?」

 

 ドイツは北東部にある全探組支部内、酒場も兼ねての談話室にて。

 その日のダンジョン探査も終えてドイツビールとソーセージ、ザワークラウトにありついていたマリアベールの元を、一人の女が訪ねていた。

 

 ブラウンの髪を肩口で切り揃えた、マリアベールよりは年嵩の女だ。穏やかな顔つきで服装もクラシックな白シャツに青色のスカートと、落ち着いた装いである。

 さしあたりビールジョッキに一口つけて、喉を潤してからマリアベールはうなずき答えた。

 

「いかにも私がマリアベール様だけど、一体どこのどちらさんだい? ダンジョン探査の誘いなら悪いが後にしてくれないかね、酒が呑みたいのさ」

「聞いた通りの酒豪なのね……スカウトじゃないわ。人を探しているのだけれど、あなたが数年前、その方にお会いしたとソフィア・チェーホワ様からお聞きしたから。ずいぶんと探したのよ?」

「ソフィアさんからぁ? なんだいなんだい、またぞろややっこしい話じゃないだろうねーまったく。まあ座んなよ」

 

 しょうもない勧誘なら適当に追い返して、話も聞かずにバックレてやろう──思春期の頃ほどでなくとも未だにそのような、豪放磊落とも唯我独尊とも、はたまた破天荒とも言える言動は健在だ。

 敵も多いが味方も多い、天下無双のフランソワ。この時期ではそのようにも言われるようになっている若き日のマリアベールだったが、女がソフィアの名を出した途端に嫌そうな顔をしながらも着席を促した。

 

 第四次モンスターハザードから概ね7年ほどが経つ。その間にも彼女とソフィア、あるいはヴァールは交流を深め、すっかりと馴染みの仲となっていた。

 だがそれゆえの弊害もあり、マリアベールの粗野な言動や酒への極端な傾倒を嗜めるソフィアやヴァールについて、尊敬すべき友人として見ながらもたしかな苦手意識をも持つようになっているのが実際のところだ。

 

 あの人ら、平気で妙な無茶振りしてくるしなあ……と内心でぼやきつつ、しかして彼女らの紹介で来たのならば無碍にもできないとひとまずは応対する。

 あからさまな態度に苦笑いしつつも女は着席し、そしてゆっくりと名乗り始めた。

 

「ごめんなさいね、お食事中に。私はラウラ。ラウラ・ホルン。ダンジョン聖教の二代目聖女をやってるの」

「はあ、聖女ねえ……ダンジョン聖教ったらアレかい、なんぞよく分からん御高説をあっちこっちでくっちゃべってる」

「すごい言いようね……一応その集団のトップなのだけれど、私」

「知るかいよ、ンなこと。それこそWSO統括理事くらいの身分になってからデカい口は叩くもんさね、聖女さんよ。ハハハ!」

 

 犬歯を剥き出しにして、凄絶な気迫を纏って威圧を放つ。マリアベールにとり、宗教関係者という時点で目の前の女は敵一歩手前だった。

 説教たらしいのが嫌いゆえ、特に最近猛烈な勢いで勢力を拡大している新興宗教など、何かにつけてうざったらしい勧誘をしてきそうで面倒極まりないのだ。

 

 そんな彼女だがここから時を経ること58年後、つまり現代においては"救世の光"なる新興宗教団体にソフィアともども接近することになる。

 先輩として認める御堂将太の曾孫、香苗がとある少年探査者を祭り上げるために組織したという異常な成り立ちの団体になぜ近づいたのか、それについてはまたの機会に話すとしても──


 とにかくこの時点でのマリアベールは、ダンジョン聖教というものに対して敵愾心に近い感情を抱いているというのは間違いなかった。

 

「ソフィアさんほどの人がまさか誑かされるわけもなかろうが、さりとて意図は読めねぇ。言いな。なんのつもりでこのマリアベール様に近付こうってんだい?」

「なんとも嫌われたものですね……本当に人探しですよ。初代聖女、エリス・モリガナ様を探しています。あなたは7年前、スコットランドにおけるモンスターハザード事件においてあの方と共闘したと聞いておりますから」

「何ぃ? エリス先輩だってぇ?」

 

 思わぬ名前を聞いて目を丸くする。エリス・モリガナ。

 7年前の第四次モンスターハザードにおいて知り合い、以降も何度か出くわしている極めて特殊なタイプの探査者を、ラウラは探しているらしかった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 ラウラについての言及もたまにある「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] >とある少年探査者を祭り上げるために組織 改めて文章にすると、字面がヤバ過ぎる……
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