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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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42/210

41年目-1 マリアベールと酒・2

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


マリアベール・フランソワ(23)

 世界各地を武者修行がてらうろつくマリアベールだが、この時期から彼女は現地で軽く弟子を取り、後進の育成や指導に時間を費やし始めてもいた。

 第四次モンスターハザードでソフィアやヴァール、エリスといった尊敬できる先輩達と共闘したことで、いくらか意識が変化していたのだ。

 

 すなわち後輩達に対し、過度なハラスメントから護るだけでなく強くなるきっかけを与えることで自衛の手段を与えるべきだという理論展開。

 結局のところ後輩達が先輩よりも経験が浅く、実力も下回るから付け込まれるのだ。であれば経験を積み、彼らを超える実力を早々に身に着けてしまえば良い。そう考えたのである。

 

 そうして彼女はこの頃、23歳あたりから83歳にもなる現代に至るまで60年、各国各地域に弟子を多く持つこととなる。

 代表格と言えよう現代最強クラスの探査者、サウダーデ・風間の出現はもうあと20年ほど待たねばならないが、それでも数多くの探査者達が彼女の下で修行し、練度を著しく高めたという事例は山のようにあった。

 

 そんな彼女は当然、弟子の多くからも慕われていたが唯一、本気で嫌がられていた側面があった。言わずもがなだが酒である。

 どこへ行っても宴を開き、現地の弟子含めて探査者や周囲の者達を巻き込んで盛大な飲み比べをするのだ。しかも頻度が高く、たまにならば良いものをほとんど毎日のようにそれを行うのだからまったくもって質が悪い。

 

 大ダンジョン時代が40年を経過する頃、第四次モンスターハザードから5年後。

 マリアベールは完全に宴好きの酒飲み美女へと変貌していた。

 

 

 

「ハハハ! おうお前さんら、今日も頑張ったなあ! 明日も頑張るんだぜ、そのためにもオラ、食えや呑めやァ!!」

「は、はい……」

「い、いただきます……」

 

 アメリカはニューヨークの酒場にて。山盛りのピザとフライドポテト、そしてビール瓶をダース単位でテーブルの上にドンと置いたマリアベールは、今現在の教え子達に豪快にも笑いかけていた。

 若い男女の探査者で、お互いに好きあっているカップルの仲でもある。マリアベールより2つ年下だが成人しており、それゆえにこうして飯はおろか酒まで勧められているのだった。

 

 しかも連日である。

 縁あって弟子になってから早3ヶ月、マリアベールの豪快な言動と裏腹の優しく、しかし理論だった指導法の甲斐もあってメキメキと実力を伸ばしている二人。

 それゆえ師への尊敬と感謝の念は常に尽きることがないのだが、それはそれとしてこうも毎日メチャクチャな量の食事と酒を食うように言われるのだけは、どうにかならないものかと心底困り果てていた。

 男のほうが、意を決して告げる。

 

「せ、先生! あの、さすがに毎日こんな量は食べられません。しかもお酒なんて、下手すると僕ら体壊しちゃいますよ!?」

「あーん? ……なんだい若いってのに、こんなもんくらい本当は一人でペロリと平らげるくらいがちょうど良いんだぜ? まあ食える分だけでいいし、呑みたくねえなら呑まないで良いけどさ」

「あ、ありがとうございます! いただきます、食べ物だけ……」

 

 マリアベールもさすがに、無理矢理飲ませる趣味はない。それをやればこの世の何より嫌う"自称先輩"どもに自分まで堕ちてしまうと信じているからだ。

 とはいえ物足りなさを覚えるのは事実で、軽く唇を尖らせながらも一人、ビール瓶を開けてはすさまじい勢いで呑み始めた。合間にピザやフライドポテトも大変なスピードで食べつつの、一人宴会だ。

 

 ホッとしつつもカップル探査者達はピザを食べ始めた。なんだかんだ探査終わりだ、腹が減っているのは間違いなく、こちらもこちらで勢いよく食べ進めていく。

 その様子に満足げな笑みを浮かべ、マリアベールはうんうんとうなずいた。

 

「そうそう、よく食べなよあんたらも。結局探査はモンスターとの殺し合い、体力気力が物を言う世界なのさ。たくさん食って身体作らねえと、肝心な時に力を出し切れねえかもだしな」

「はい! ……あの、先生もそんな経験がお有りなんですか?」

「私はないが、先輩の知人にいたらしいよ。なんのつもりか知らんけどローカロリーを標榜したらしくてな、見事に探査中にガス欠でぶっ倒れたらしい。んなアホなっつって私も、同席してたもう一人の先輩も唖然としてたなぁ。ありゃ第四次モンスターハザードの最中だったが懐かしい話だよ、ハハハ!」

「第四次モンスターハザード……!!」

 

 話しながらビールを呷り笑うマリアベールをよそに、弟子の女はゴクリと息を呑んだ。

 第四次モンスターハザードなどと軽く言ってのけるが、つまりは目の前の師マリアベールが世界規模の英雄として名を轟かせることとなったきっかけ、伝説の戦いに他ならない。


 そして彼女ほどの人物が先輩と呼ぶ存在など限られている。おそらくそのうちの一人は……WSO統括理事ソフィア・チェーホワその人だろう。

 当代最強の探査者本人から、永遠の探査者少女との間にあったエピソードを今、彼女達は聞かされたのだ。興奮しないわけにもいかず、カップルは互いに顔を見合わせて瞳を煌めかせるのだった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 マリアベールの弟子も出てくる「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] モンスターハザードみたいな大規模戦闘中にガス欠で倒れるって、下手するとその人を助けに動いたことで戦線崩壊する危険性もあったのでは……? 探査者は体が資本なので、過度なローカロリー食は控えま…
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