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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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38/210

38年目-1 大仕事を終えて

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


マリアベール・フランソワ(20)

ヴァール(???)

エリス・モリガナ(33)

 大ダンジョン時代特有の事件であるモンスターハザードも、すでに第四次を数えるほどに勃発していた。

 一年近くかけての戦いはスコットランドを舞台に繰り広げられ、しかしてどうにか探査者達の勝利に終わった。

 

 WSO統括理事ソフィア・チェーホワを筆頭に、14年前に消息を絶ったきりだった初代聖女エリス・モリガナ。

 そして新進気鋭の天才若手探査者マリアベール・フランソワの三人が主体となって、謎の組織委員会の企みを阻止したのである。

 

 そこからさらに一年近くして、事後処理も終わった頃に三人は再び集まった。諸々の事案もすべて解決し、ここに正式に第四次モンスターハザードが終結したからだ。

 すなわち改めての打ち上げ会。年も立場も離れてなお固い友誼に結ばれた3人ならではの、ささやかながら祝勝会が行われていた。


 

 

「ハッハッハー。いやあ第四次は大変な仕事でしたね、二人とも」

 

 エリス・モリガナが、ワインを飲みながらソフィアとマリアベールを労った。場所はイギリスの首都ロンドンは全探組施設の近くの酒場。

 一年前のこの日に最終決戦を行い、見事に第四次モンスターハザードの黒幕たる組織を撃退してみせた三人。

 それが一年を経た今再びこの地に集い、そしてささやかながら食事をしながら話に花を咲かせていた。

 

 フィッシュアンドチップスをビネガーソースに軽く付け、頬張りながらもマリアベールがじっとりとした目で応える。

 

「ったく、本当ですよエリス先輩。あんな七面倒な仕事になるって分かってたら受けてなかったですよ、私は」

「まあ、そう言うなマリアベール。お前がいなければ間違いなくもっと長引いていたのだ、あの騒動は。感謝しているぞ」


 ぼやく彼女に、ソフィア──否、ヴァールが微笑みながら宥めた。ビールの注がれた大ジョッキを手にし、しきりに傾けては一度にそれなりの量を飲んでいる。

 大ダンジョン時代も40年近くも経てば、ソフィアにしろヴァールにしろ酒の味や効能は覚えている。多少のストレス解消や慶事を祝する際には、すっかり呑むようになっているのだ。


 今回、10年ぶりに彼女と再会したエリスとしては、その姿は驚くに値するものだった。それと同時に旧交を温めようと飲みに行ったところ、盛大な絡み酒の被害にあってしまったことも記憶に新しい。

 頼むから絡むならマリーにしてね? と内心で祈りながらも、調子よくエリスは言った。


「ハッハッハー。エリスさんとしても、とても頼り甲斐のある後輩さんとこうして縁を結ぶことができて大変有意義だったとも。君的にはどうだい? 私はともかくソフィアさん、ヴァールさんと知り合えたのって割と、キャリア的にも大きいと思うよ?」

「キャリアなんざどーだって良いんですけどね。まあ、お二人に出会えたのは得難いと思ってますよ……自分で言うのも情けないですけど、鼻っ柱へし折られちまいましたし?」

 

 けっ、と拗ねたように視線を逸らしてマリアベールはジントニックを呷った。第四次モンスターハザードから概ね2年、20歳を過ぎた彼女はこの頃にはすっかり酒の味を覚えて大の酒豪になっている。

 普段なら陽気に豪快にジョッキを空にするのだが……ことヴァールとエリスの前ではなかなかそうもいかない。

 

 この2人とはこのモンスターハザード騒動において初めて出会い、友誼を結んだわけであるが……当初は血気盛んなマリアベールが喧嘩を吹っかけては取り押さえられるというやり取りが幾度となくあった。

 大の"先輩嫌い"であるがゆえ、見た目はともかく中身は数十年単位で年上の先達2人に即座に噛みついていたのだ。

 

「さすがに得物までは振り回さなかったっつっても、普通に拘束されてりゃ世話ないですわ。アジアじゃこういうの、井の中の蛙大海を知らずっつーんですってね。ハハハ……」

「まあまあそう言わずに。エリスさんの《念動力》もヴァールさんの《鎖法》も、対人戦だと滅法インチキだからさあ」

「というか拗ねなくていいので、頼むから先輩と見るや殴りかかる癖を改めてくれ。普通に凶悪なのだし、突っかかられるこちらとしては生きた心地がしなかったぞ」

 

 刀を持ち出すほど見境がないわけでもなかったが、持ち出したとて勝てた気はしない。

 そうマリアベールが認めざるを得ないほど、そうした突っかかりは即座に返り討ちにされていた。


 エリスの場合はスキル《念動力》によるサイコキネシスで。ヴァールの場合はスキル《鎖法》による鎖で。

 二人がかりで完膚なきまでに拘束されてしまい、強制的に無力化されたのだ。これにはさしもの狂犬も鼻っ柱を折られてしまい、こうして落ち込みを見せているのだった。

 

 そもそもなんの落ち度もない相手に、先輩だからという理由だけで殴りかかるなど巷の通り魔でもしないだろうに……と、呆れた視線を投げかけるヴァールとエリスに怯まず彼女は続けて言った。

 

「ま、さすがにお二人さんのことは先輩だって認められますよ。私がぶっ殺してやりたいのはあくまで先輩面したクソッタレどもだけなんで」

「殺すな殺すな。たしかに質の低い探査者が年季だけ自慢する現状はWSOにとっても課題だが、なんでも殴れば解決するようなものであってはならない。話が進まなくなる」


 相変わらず短絡的な台詞を吐く若手に、幼き見た目の大ベテランは即座に釘を刺す。

 たしかに昨今、探査者歴が長いもののろくな経験を積んでいない低レベルな探査者が新人や若手に対して、横暴に振る舞い始めているという。そうした報告はWSO統括理事としても各地で耳にしていた。


 明確に、多少話を煮詰める必要はあるものの早急に解決しなければならない問題だ。

 で、あるからこそ議論を重ねて改善策を練るべきであって、マリアベールのように単純暴力で黙らせるというのは下策も下策だとヴァールは語るのだった。

 むう、と押し黙るマリアベール。そんな彼女にウイスキーのロックをお代わりしながら、エリスが指摘する。


「あれだね、マリーはもうちょい世界を巡ってきたほうが良いかもねー。見聞を広めればいろんなものの見方ができるようになるかもだ。あ、でも裏社会には首突っ込まないようにねハッハッハー。ヤバいからフツーに」

「私が思うに、エリス先輩こそ一番ヤベーんじゃねーかって思うんですけどねえ……」

「エリスよ、お前はお前であまり危険な土地を放浪するなよ? WSOはいつでもお前を保護する体制を整えているからな」

 

 マリアベールの視野の狭さ。それが過剰な過激さに繋がっているのだと主張するエリスだが、彼女は彼女で普段、身を置いている場所や環境そのものが過激極まりない。

 やはり彼女に対しても釘を刺すヴァール。今はまだWSO統括理事としての威厳に溢れた姿だが……

 

 この1時間後、今度は彼女自身がアルコールの勢いでエリスやマリアベールに絡み酒を披露することになり。

 終いには呆れ返った2人から、カウンターのごとく大きな釘を刺される羽目になるのだった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 意外とかわいいヴァールが見られる「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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[一言] この頃から絡み酒してたんかヴァールよ……
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