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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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36/210

36年目-3 第四次モンスターハザード

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


マリアベール・フランソワ(18)

ヴァール(???)

エリス・モリガナ(31)

 第四次モンスターハザードにおいて、若手ながら獅子奮迅の活躍を見せたマリアベール。

 WSO統括理事や初代聖女の助けをも受けつつ戦場を、人為的に引き起こされたスタンピードの中を駆け抜けた彼女の実力の大半は、この事件において完成されたと言っても良い。

 

 大断刀。そう彼女自身が名付けるいわば、流派だ。

 後々スキル《剣術》が《居合術》に進化する中で構成も居合抜きに特化したものになっていった技だが、それでもこの時点ではまだ、通常の剣技の範疇に収まっていた。

 

 だが、それでもその実力はすさまじいものであり。

 歴代モンスターハザードを乗り越えた先達2人をして、その切れ味の冴え渡る様や戦慄と感動を禁じ得ないものだったのである。

 

 

 

 ────刃の煌めきとともに、モンスターがまとめて数体両断された。

 血でなく煌めく光の粒子となって消えていく敵の群れに、マリアベールは獰猛に笑い、続けざまにもう一閃を放つ。

 

「《剣術》! 大断刀ォ……ビッグベンッ!!」

 

 力任せの一撃。だがその実、力を入れる箇所や塩梅、全身の動きに至るまでのすべてが斬撃の威力を底上げするよう仕向けられた、まさしく大断刀。

 都度、肉体のパフォーマンスを最大限近くまで要求するこの動きと剣技を、彼女は頭で考えて、理屈で納得して使っているわけではない。


 あくまでも野生……そして本能。

 何よりマリアベール・フランソワという一人の人間が持つ、第六感めいた勘の良さがそうした奇跡的な斬撃を当たり前のものとして実現せしめていた。

 

「ぐるぉおおおおああああっ!!」

「ぐぎゃごぇあああああ!!」

「大断刀・コーンウォール! しゃらくさいね、まとめて膾だ雑魚どもがァッ!!」

 

 スコットランドの農村、モンスターハザードの災禍に晒された土地の民を背にしての防衛戦。

 マリアベールはさらに、斬撃による衝撃波を放った。彼女の前方全面に扇形の剣閃が奔る。射線上にいたモンスターの群れなど当然、すぐさま切り裂かれてやはり粒子に還っていく。

 

 まさしく八面六臂の大活躍。

 少し離れたところで同じようにモンスターを相手取っていたヴァールとエリスもその様を見、感嘆の息を漏らしていた。

 

「ハッハッハー、あの子すごいですねヴァールさん。バッタバッタと薙ぎ倒してますよ、っと《念動力》!!」

「うむ、素晴らしい腕前だ。あれでまだ20歳にも満たないというのだから末恐ろしいものだな──《鎖法》、鉄鎖乱舞!」

 

 歴戦の2人からしてもマリアベールの動きは見事の一言であり、諸手を挙げて称賛しながらも各々のスキルを発動、自分達は自分達でモンスターを薙ぎ払う。


 特に、大ダンジョン時代の興りから第一線で戦い続けているヴァールからすれば30年前頃、初めてステータスを手にした探査者達に比べても明らかに強さの次元が違うことに余計に感じ入るところがあるようだった。

 スキル《鎖法》で具現化した鎖で方々の敵を貫きつつも続けてエリスに向かって言う。

 

「当たり前の話なのだが、時代が進むにつれて探査者そのものの実力も底上げされていっている。そんな中であの子はまさしく時代の寵児とも言える才覚を宿しているのだろう。昨今の若手は誰しも有望だが、マリアベールは桁が違うな」

「うわーべた褒め! たしかにエリスさんがあのくらいの歳の頃、あんなふうに戦えたかっていうと微妙なところですねー。なんせ最初は私、半べそかきながら戦ってましたし。ハッハッハー」

「……ジョークにしても止めてくれ、エリス。そんなお前を戦わせたワタシには、そう言われたとて謝罪するしかできない」

「あれ!? 責めてませんけど!? ハッハッハー、ヴァールさん気にしすぎですよ?」

 

 小粋なジョークでも利かせようかと、軽いノリで口走った言葉に思いの外ダメージを受けたらしいヴァールに、焦るエリス。

 無表情なんだけどこの人、意外とソフィアさんより打たれ弱いし情に脆いっぽいんだよなあ〜と内心で考えつつも、近づいてきたモンスターを手にしたナイフでかき切る!

 

「いよいしょっと! ──《念動力》! ナイフよ、そら行け!」

「ぐぎゃあああああっ!?」

「にゃごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 スキル《念動力》の力を受け、エリスの意のままに動くナイフが次々にモンスターを襲い、貫き消滅させていく。

 元々は近接用に使っていた──エネルギーを集中させ、ナイフの刀身を強化していた──彼女だが、永きに亘る放浪の中でこうした遠隔操作をも実現させていた。


 すさまじい勢いで敵を駆逐していく2人に、一方のマリアベールもまた、感心とも畏怖ともつかない吐息を漏らして横見していた。

 とてつもない手練手管。若さゆえに経験不足なところのある自分では、まず間違いなく彼女達のようには動けないだろう。

 負けず嫌いな質でも認めざるを得ない戦いぶりに、思わず独り言ちる。

 

「やっべえな、アッチの2人……見た目私と同じくらいでも、やっぱ中身は相当歳食ってるみたいだな、年季がちげえや」

「うおおおおおおああああっ!!」

「《剣術》大断刀・ビッグベン!! ……へへっ! なんでも良いや、"先輩"達に負けてられねえやなっ!!」

 

 先輩嫌いの"狂犬"だが、尊敬するに値するならば素直に認めるだけの度量ももちろんある。

 マリアベールはヴァールとエリスを、自身が目標とすべき先輩と見定め……負けるものかと、いつか追いつくと言わんばかりに刀を振るうのだった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 三人それぞれがモンスター相手に大立ち回りする「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] エリスさんは下手にジョークを言うと、ヴァールに刺さるからなぁ
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