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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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35/210

36年目-2 マリアベールとWSO統括理事

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


マリアベール・フランソワ(18)

ソフィア・チェーホワ(???)

ヴァール(???)

 探査者マリアベール・フランソワ18歳。

 すでにこの頃には才気煥発にして、天衣無縫の強さを誇っていた彼女に、ある一つの転機が訪れた。

 

 スコットランド周辺で頻発していたスタンピード──ダンジョン内のモンスターが何らかの理由で地上に溢れ出る現象のことだ──の調査のためイギリスを訪れていたWSO統括理事、ソフィア・チェーホワとの出会いである。


 65年前の大ダンジョン時代においても、すでに時代を牽引する指導者であった彼女には秘密があった。

 その一端に触れ、マリアベールの人生はより高みへと昇っていくこととなる。

 

 

 

 スコットランドにて異常発生しているスタンピードの調査に乗り出したWSOの特別チーム。

 そのリーダーでもある統括理事ソフィアの誘いを受けたマリアベールは、現地の広野にて彼女と行動をともにしていた。

 

「それで? このへんで待ち合わせてるんですかい、助っ人とやらと」

「ええ、そうよマリーちゃん」

 

 白シャツにジーンズ、ブーツに腰には刀。いつもどおりの金髪を腰元まで伸ばしたマリアベールが確認したところ、ソフィアはたおやかな笑みを浮かべて肯定した。

 輝ける金色の髪が、ウェーブがかって風に揺らされ波打っている。マリアベールのスポーティな服装とは対象的なドレス姿の少女で、彼女と同年代頃に見える。


 同性の彼女をして、絵に書いたような美少女とさえ思わせるその女はしかし、年齢不詳の不老不死と揶揄されているほどに謎めいた人物だ。

 何しろ35年前、スキルが初めて発現した時期から活動を開始したと一般には言われており……その頃から今に至るまでまったく姿が変わらないらしいのだから。


 マリアベールとしてはことの真偽はどうでも良かったが、その実力は本物だと認めており、それゆえに多少気になるところはあった。

 ソフィア本人もさることながら……彼女の裏側、"もう一人のソフィア・チェーホワ"についてである。

 

「今日は"アッチの人格"じゃないんですね、ソフィアさん。私はどっちでも良いんですけど、改めてどういう仕組なんだか気になっちまいますよ」

「あらあら、好奇心旺盛ねえ。前にも言ったと思うけど、いわゆる二重人格みたいなものよ。厳密には違うけど、結果的には似たようなことになってるもの」

「アバウトなことを……人に言えないような話ってわけで?」

「うふふ」

 

 ニコニコと、花咲くような笑みのまま。しかし肝心なことを何も話さないソフィアに対してマリアベールは嘆息した。

 二重人格……たしかにそうなのだろう。このソフィア・チェーホワという人間にはもう一つの人格がある。

 

 "ヴァール"とだけ名前が判明しているそのモノは、ソフィアと異なりひどく無機質で冷淡、かつ無慈悲な印象の顔つきと言動になる。

 同じ顔だと言うのにある瞬間から、昼と夜を切り替えるように別人に変貌するのだ。これには知り合って間もないマリアベールも驚き、思わず身構えてしまったほどだった。


 と、ソフィアの様子が変わった。

 言ったそばからかい! とマリアベールが身構える。そうしてWSO統括理事の裏の顔、詳細不明の別人格が降臨した。

 

「────む、ここは。マリアベール・フランソワ、だったか?」

「……まーたいきなり変わりやがって。あーそうだよ、ってかアンタ、ソフィアさんとは記憶を共有とかしてねえのか」

「魂は別だからな。そうか、ここは、ああ。エリスと合流するのか」

 

 微笑みを絶やさなかったソフィアとは同じ顔ながらまるで異なる無表情。冷厳さをも纏った雰囲気は、この世のものとは思えない威圧を備えている。

 マリアベールもこれには一筋汗を流した。それでも持ち前の負けん気から普段通りの対応をすれば、彼女、ヴァールは何者かの名をつぶやいた。

 即座にそれを聞き拾う。

 

「エリス? 今から来る人の名前かい。ソフィアさん何も教えてくれなかったんだよなあ」

「あまり吹聴するべき人間でもないからな、彼女は。だがまあ、もう来る頃合いだ。ここまで来て教えないというのもお前には悪いか」

「……ヴァールさん、だったか? アンタのほうがソフィアさんより話が分かるってどういうこったよ」

「ワタシに言われてもな……ソフィアも多方面に機密を抱えているのだ。話したくても話すべきか分からないこともあるのだと、理解してやってくれ」

 

 肩をすくめるヴァール。素っ気なくもどこか、こちらを気遣う様子が伺えてしまいマリアベールは今度こそチグハグさに呆れたように笑みをこぼした。

 まるでソフィアの保護者か何かだ、これでは。別人格というからには本当に別人なのだろうが、同じ身体でこうも変わるものかと、世の広さ不思議さに感心すら覚える。


「それで? どんな人だい、そのエリスだかクリスだかって。若い子? それかオバハン?」

「エリス・モリガナだ。年はたしか今年で31歳だったか。だが見ればきっと驚くだろう。彼女は年を取らない体質なのだ」

「…………ソフィアさんやアンタといい、最近流行ってんのか? 不老不死」

「不死ではないがな、ワタシ達とエリスが特異なのだ。不老不死など、現世においては永遠の夢幻であるべきモノだよ」


 案外こっちのほうが取っつきやすいかも、などと考えてマリアベールは幾分、気安げに彼女へと話しかけていく。

 後の世においてはWSOの統括理事と特別理事。ともに大ダンジョン時代の大権威たる2人の最初は、概してこのようなものだった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 老いたマリアベールと老いない三人が仲良く登場する「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[良い点] 存在しないはずの不老が二人も確認されている時点で 世界って終わりかけてたんやなって [気になる点] もしかして100話で100年いく感じですか?
[一言] ソフィアさんはヴァールの保護者で、ヴァールはソフィアさんの保護者なのだ
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