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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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30/210

31年目-2 封印されているスキル

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


マリアベール・フランソワ(13)

 大ダンジョン時代において、最も有名な探査者は誰か──

 その問いへの答えはいくつか挙げられるが、概ねの人が以下の2人を挙げるだろう。

 すなわちWSO統括理事ソフィア・チェーホワと同組織特別理事、マリアベール・フランソワである。

 

 片や言わずと知れた永遠の探査者少女。不老不死と噂されており、実際に初めて姿が確認されてから今日に至るまで、まるで何一つ変わらぬ姿を保ち続けている。

 口さがないものをして"妖怪"とまで言わしめるほどのその美貌の永久ぶりに、羨む声は古今東西を問わず世界中にて囁かれているものである。

 

 しかしもう一人、それに比肩する実力と知名度を誇る探査者がいる。

 S級探査者マリアベール・フランソワ。最高齢現役探査者であり、現代においては83歳を迎えた探査者の最長老たる人物だ。同時にWSOの特別理事でもあり、ソフィア・チェーホワの右腕とも懐刀とも言われるほどに両者の付き合いは長く、深い。

 

 そんなマリアベールの探査者としてのデビューは遥かに70年前。

 極めて特殊なスキルを得たことから、彼女は生涯をかけた求道に身を投じることとなる────

 

 

 

 スキルを獲得した。ステータスを確認できる。

 そのようなアナウンスを受け、マリアベール・フランソワは狂喜乱舞して自室ではしゃぎ飛び跳ねた。

 

 まだ13歳の、小柄な少女である。イギリスの貴族フランソワ家の末に生まれ、当時としては高水準の教育を受け、若くして淑女たるべしと礼儀作法から宮廷作法まで叩き込まれている。

 しかしその実、本人の気質はいわゆる"お転婆"であり、男勝りな気質も合わせて上に3人いる兄、2人いる姉からは可愛いながらも手を焼く末の妹として認識されていた。

 

 そんな彼女がステータスを得た。すなわち探査者としての道が開けたのだ。

 幼く勝気少女には、まさしく降って湧いた望外の喜びであった。

 

「アッハハハ! 《ステータス》! 《ステータス》ゥ!!」

 

 

 名前 マリアベール・フランソワ レベル1

 称号 ノービス

 スキル

 名称 ディヴァイン・ディサイシヴ

 

 称号 ノービス

 効果 なし

 

 スキル

 名称 ディヴァイン・ディサイシヴ

 効果 救世技法/現在封印中

 

 

 喜び叫ぶ少女の前に現れる、彼女にしか見えない彼女の能力を示す画面、ステータス。

 それが現れたこと、そのものに大笑しながらも……しかし確認していくうちにマリアベールのあどけない顔がキョトン、としたものに変わった。

 スキルに何か、幼いながらも不穏なものを感じ取ったのだ。

 

「スキル……《ディヴァイン・ディサイシヴ》? え、救世? ……封印中? 封印?!」

 

 高等教育を受けているがゆえ、封印中とされている彼女のファースト・スキルが現状、使えないものである可能性に気づく。

 マリアベールは愕然とした。そんな中、ドアをノックする音が響く。

 

「マリー? マリー! どうしたんだいマリー、何かあったのかい!?」

「ぱ、パパ〜……」

 

 彼女の父、チャールズが自室にて騒ぐ娘を心配してやって来たのだ。フランソワ家の屋敷は広いが家族間の自室同士は近く、防音設備があるわけでもないので過度に騒げば当然目立つ。

 未だ反抗期を迎えていないマリアベールは、涙ながらに父を招き入れ、そして事情を説明した。スキルを得たこと、ステータスを得たこと。探査者への道が開けたこと。

 

 ──そしてファースト・スキルがなぜか封印中だということ。

 

「こ、これって探査者なら普通なのかなぁ? わ、私だけ、なのかな〜……?」

「ふむ……知り合いに探査者がいるからすぐに話を聞いてみようか。とりあえず全探組に行って、新規探査者登録をしないといけないな」

 

 スキルを持たない父にも、マリアベールの状況が特殊なのかそうでないのかの判別はつかない。

 ゆえに知り合いの探査者にアポを取る算段を内心にてつけつつ、ひとまずは全探組施設へと向かうべきだと娘を諭した。

 

 この時代にはすでに、スキルを獲得した者に対してのWSOおよび全探組への速やかな報告と新規探査者登録は義務付けられている。

 同時に能力者大戦の教訓を元に、能力者には探査者としての進路しか許されていないという社会構造もすでに構築されていた。

 チャールズが、マリアベールの頭を優しく撫でる。

 

「マリー……かわいいマリー。探査者になったら、決してモンスターと戦ったりはせずに全探組かWSOの事務員として裏方での仕事に就くんだよ」

「え? 嫌よそんなの。私は戦うわモンスターと! 剣持ってね、ズシャーッ! ザシューって!」

「…………」

 

 いくらダンジョンに入る権利を持ち、またモンスターと戦える能力を持ったからと言ってマリアベールはまだまだ子供だ。

 それ以前にかわいい娘に鉄火場を拝ませるつもりなどない父心なのだが、そんなことは露知らずとばかりに少女は明快な笑みをもって応えた。

 

 さきほどはしゃいでいた、最大の理由だ……マリアベールは元々、探査者になってモンスターを倒したかったのである。

 特に理由はない。強いて言えば物語に出てくるような英雄に、なってみたいという幼稚な想いからのものだろう。それはチャールズにも分かっていたため、ため息混じりにやれやれと肩をすくめるばかりであった。

 

 結果から言えばこの後、マリアベールは70年もの期間を常に最前線で戦い続け、英国が誇る最大の英雄とまで称えられる大探査者になるのであるが。

 そんなことはこの時、この親子には知る由もないことであった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 70年後のマリアベールが出てくる「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] まったくどうにも、登場人物が軒並み暴走とやらかしと黒歴史にまみれておるなあ…… しかもいわゆる前史なので、結末そのものは決まっているというね。 読者としてはとても面白いのでいいのですけ…
[一言] ガラが悪くなる前のマリーさんだ!
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