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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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179/210

87年目-2 ベナウィ、S級探査者へ

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


ベナウィ・コーデリア(28)

ソフィア・チェーホワ(???)

 探査者として独立して5年が経つ頃。ベナウィ・コーデリアにもある一つの、そして大きな転機が訪れることとなる。

 S級探査者への認定だ……太平洋出身、または活躍中の探査者としては実に三人目となる、世界最高峰ランクの探査者へと認められたのである。

 

 弱冠28歳。けれどもレベルも700を超えており、かつスキル《極限極光魔法》の威力があまりにも桁外れに高いこと。

 それらがベナウィがS級たるにふさわしいと認定されるに至った、主だった理由なのであるが。実のところここにはさる大物探査者の意向も絡んでいた部分があった。

 

 大ダンジョン時代の立役者にして秩序の守護者。

 永遠の探査者少女──ソフィア・チェーホワWSO統括理事。

 ありとあらゆる探査者の頂点に君臨する、とさえ言われる探査者の、そして大ダンジョン時代の精神的象徴たる彼女の肝入りがあったのだ。

 その真意は、謎に包まれたままである。

 

 

 

「マリーちゃん……マリアベール・フランソワさんから話は聞いていましたけれど。本当に背の高い方なのね、コーデリアさん。なんだか羨ましいわ」

「いやーははは……恐縮です、チェーホワ統括理事」

 

 スイスはジュネーヴ、WSO本部、統括理事室。

 新しくS級探査者となったベナウィ・コーデリアは、面談という形でソフィア・チェーホワと向かい合い話をしていた。

 

 すでに80年以上続くこの大ダンジョン時代の、総元締めとも呼べる女傑だ……外見は可憐な10代の少女ながら、何年生きているのか、何歳なのかは誰にも分からない不可思議と神秘に満ちた存在でもある。

 ベナウィにとって師匠たるサウダーデ・風間どころか、大師匠にあたるマリアベール・フランソワさえもが幼い頃からこの姿のままだというのだからすさまじい。

 

 何よりWSO統括理事というS級探査者からしても雲の上の立場たる人。

 そんな天上人に微笑みながら言われては、さしもの楽天家ベナウィであっても緊張を禁じ得ず。スキンヘッドを掻きながら、愛想笑いして返事するばかりであった。

 

「うふふ。聞けばコーデリアさんはサウダーデくんの弟子、なのよね。マリーちゃんの弟子のサウダーデくんの弟子のコーデリアさん。時間の流れを感じるわ」

「マリアベール様も師匠も、統括理事にだけは頭が上がらないと言っておりました。いやはや私も、こうしてお会いするとその気持ちが良く分かります。なんとも、すごい方だなと」

「ふふ、大袈裟ねあの子達も。おばあちゃんやおじさんになっても、私には変に身構えるのよ」

「は、はは。気持ち、分かりますね〜」

 

 ベナウィにとってはそれこそ頭が上がらない師匠や大師匠を、まるで子供か赤ん坊扱い。

 さすがに実力的にはあの二人のほうがもはや上なのだろうが、そんな評価とは関係のないところで格が違うのだと思い知らされるばかりだ。

 

 感心するやら感嘆するやら畏怖するやら。とにかく尊敬の眼差しを向けてくるベナウィに軽く微笑みながらも、ソフィアのほうも内心にて独り言ちる。

 ──彼が、三人目。

 

 

(スキル《メサイア・アドベント》……間違いなく"あのスキル"の一つね。まさかマリーちゃんの縁者だなんて思いもしなかったけれど、これも"あの方"の予定通りなのかしら)

 

 

 ベナウィのステータスについては当然ながら把握済みで、だからこそソフィアは彼と知己になりたかったのだ、なんとしても。


 《メサイア・アドベント》。

 ベナウィが授かったファースト・スキルであり、現在封印中で詳細不明の謎に満ちたスキルだ。

 これまでの87年間にて、世界にこうした封印中の正体不明スキルとその保持者を三人、ソフィアは把握して交友関係を築き上げていた。


 御堂将太の《究極結界封印術》、マリアベール・フランソワの《ディヴァイン・ディサイシヴ》。

 そして何より自身の裏人格たるヴァールが一時預かりの形で保有し、"計画"通りに行けばシェン一族の末裔に引き継がれるであろう《アルファオメガ・アーマゲドン》。

 

 そして最後の一つ《メサイア・アドベント》を保持するのがベナウィ・コーデリアだった。

 ずっと探していた最後の一人が、よもや別の保持者の孫弟子などとは予想もしていなかったが……あるいは"大いなる存在"からしてみればすべてが予定調和なのかもしれないと、ソフィアは深く息を吐いた。

 小声で、本当に小声でつぶやく。

 

「……とにかく、これでひとまずの舞台は整ったのね。あとは」

「ミス・チェーホワ? どうされました?」

「あ、いえ。あなたのような素晴らしい方がS級探査者になってくださったなら、これからの大ダンジョン時代や探査者界隈はさらに盛り上がりを見せるでしょうと。そう思いまして」

「えっ……いやあ、それはさすがに過大評価では? はははは、お聞きかもしれませんが私、かなりのうっかり者ですし」

「まあ! それではあの"うっかりベナウィ"はやはり渾名なのですね」

 

 耳聡く聞き拾うベナウィと誤魔化しのやり取りを重ねつつ。ソフィアは静かに、心のなかでその続きを重ねてつぶやく。


 

 ────あとは、いつの日にか現れる"後継者"を待つのみ。

 

 

 ソフィアとヴァールが、そして世界が待ち望む救世主の登場まで、あと14年。

 着々とすべての準備は、整いつつあった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 泣く子もビビるダンジョン破壊者ベナウィが活躍する「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[良い点] ソフィアさんはベナウィさんがいるとうっかりしがちですね。 ポエミー本編での主人公との初顔合わせでもベナウィさんをうっかり忘れてましたし。
2024/05/27 06:40 こ◯平でーす
[一言] 初対面の人に対して不審者ムーヴをかますことに定評のあるソフィアさんが不審者していない!?
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