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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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175/210

85年目-2 太平洋、三大クランリーダーの会合

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


サウダーデ・風間(44)

ロナルド・エミール(27)

フローラ・ヴィルタネン(44)

 太平洋ダンジョンの周囲に人工的な土地と経済圏が構築され、そこを拠点にしての大規模な探査事業が行われ始めて15年が経つ。

 通常ではまず考えられないほどの長期、かつ多人数による継続的なダンジョン探査が行われているにも関わらず、肝心の太平洋ダンジョンの攻略はこの時点でもなお、20階層を少し過ぎて未だ底知れない状況下にあった。

 

 一階層ごとの広さと複雑さが途方もなく、さらには短時間でモンスターが復活するという特殊な仕様もある。

 さらにはそのモンスターの強さだ……F級探査者でもどうとでもできるレベルのものから、A級探査者であっても骨が折れるような化物まで。ありとあらゆる種類のモンスターが、各階層の様々な部屋、空間内に無造作といっていいほどの多様性をもって現れるのだ。


 これらをもって太平洋ダンジョン攻略に取り組んでいるA級探査者にして四代目聖女、フローラ・ヴィルタネンは率直な表現をもってかの地を称した。

 すなわち"地獄"。たとえ一階層であってもなんの油断も慢心もできない、あまりに過酷かつ凶悪なダンジョンであるとダンジョン聖教のインタビューに答えたのだ。

 

 さて、そんな地獄のダンジョンの最前線を常にひた走る探査者達も当然いる。

 複数のパーティを寄せ集めて構築したいわゆるクランだ……現代では8つほどの代表的なクランがあるが、この時点では3つばかりが存在していた。

 

 一つはサウダーデ・風間率いる"太平洋攻略隊"。太平洋においては最も古くからあるクランで、トップのサウダーデが世界屈指の探査者であり人徳もあることから結成から今にかけ、人気が最もある集団だ。

 現代においても最大手であり、それだけに入団には厳しい審査が必要なある種のエリートクランとも言える。


 二つ目はフローラ・ヴィルタネン率いる"ダンジョン聖教太平洋支部"。その名の通り敬虔なダンジョン聖教信徒が集うクランで、現代においてはフローラの後継とも言われる女傑、ローラ・リルケリアが頭目を務めている。

 

 そして三つ目。アイオーンことロナルド・エミール率いる"レッツゴー太平洋"。

 ふざけた名前と裏腹に極めて練度の高い探査者パーティによって構成された、少数精鋭のクランだ。

 第七次モンスターハザード以後、渡洋したロナルドが見事に大成した結果でもあった。

 

 

 

 太平洋客船都市内、最大最高規模の豪華客船にある、太平洋においては最も高級なレストランのVIPルームにて。

 いずれも名だたる探査者達が三人、テーブルを囲んで会食を果たしていた。


 血も滴るような肉、ステーキを豪快に頬張り、力強く咀嚼して飲み込む。

 その濃厚な味わい、これでもかと言わんばかりの肉の旨味に酔いしれながら一人の男が感嘆の声をあげた。

 

「美味い……! 良い肉だ、太平洋でもこれほどの食材が確保できるようになったか」

「日本が経済圏に参加して、技術的にはさらなる発展を果たしましたからね……特に食や料理に関しては、彼らの技術力はすさまじいですから」

「この肉も最新鋭の冷凍技術の賜物ってわけですね、フローラさん。エマにも食べさせてやりたいくらいです、マジで」


 次いで妙齢の美女と、二人に比べて明らかにまだ若い青年も続けて肉を食べ、同意しながらも舌鼓を打つ。

 見事な肉質だった。太平洋客船都市においては最近起きた食糧事情の劇的な変化、質と量どちらも驚くべきクオリティの高さへと改善されたことに、この場の三人誰もが喜びを口にする。

 

 クラン"太平洋ダンジョン攻略隊"総隊長にして太平洋の雄、S級探査者サウダーデ・風間。

 クラン"ダンジョン聖教太平洋支部"支部長にして四代目聖女、A級探査者フローラ・ヴィルタネン。

 クラン"レッツゴー太平洋"リーダーにして改造兵器人間の完成形、A級探査者アイオーン。

 

 それぞれ太平洋外においても広く知られている有名探査者だ。当然実力も折り紙付きと言える。

 そんな彼らだがこの地においては、太平洋ダンジョン攻略のため結成された三つのクランをそれぞれ率いる頭領という共通点があった。

 畢竟、この会食とは三大クランリーダーのミーティングのためのものなのだ。

 

 しかしてついに陸地で食べるものと大差ないクオリティの食事が流通されるようになったことを受け、三人はクランのことはひとまずおいてとにかく食事を楽しんでいた。

 

「すばらしい……不謹慎だがこうまで美味いとつい、酒が欲しくなってしまうな。ウイスキーか、あるいはワインか」

「分かります。ですがさすがに、これから重要な話し合いをするのに酔っているのはまずいでしょうね」

「普通の飲み会ならいくらでもたらふく、呑めたんですけどねえ……ま、仕方ないですよ。太平洋ダンジョン攻略についての話し合いは、赤ら顔じゃやってられませんし」

「うむ、そうだなロナルドくん」

 

 和気藹々と話し合う三人は、当然ながら敵対的なムードではない。そも三大クランともに目的は同じ、太平洋ダンジョンの踏破なのだ。

 現代では彼らの他に五つの大クランがあり、中には他のクランやパーティ、探査者と険悪な関係にあるクランさえあるが……未だこの時は良好な付き合いをしつつ、こうして会食など開く余地があったのだ。

 

 ひとしきりステーキを腹に収め、すっかり満腹になった三人が丁寧に、マナーに則り口元をナプキンで拭う。

 ウェイターが食器を片付け、広く空いたテーブルに丸太のような太い腕を乗せ。サウダーデはそして、本題に入ることを宣言した。

 

「それでは始めようか。太平洋ダンジョン、地下24階層に存在する特殊な地帯についてだ」

「加えて地下5階層で発見されました隠し通路と、その先にある謎の壁画についても議論したく存じます」

「地下11階層で変なモンスターを見かけたってうちのメンバーが言ってたんで、それについてもちょろっと話しできればと」

 

 三者三様、それぞれに議題を持ち込んで話し合う。月に一度、太平洋ダンジョン攻略の情報をすり合わせるための会議だ。

 このようにして規模不明、詳細不明の謎のダンジョンを攻略すべく、日夜探査者達は活動を続けていくのであった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 太平洋についての話もたまに出てくる「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 他のクランと険悪なクラン……また不穏な情報が……
2024/05/23 06:34 こ◯平でーす
[一言] 文章中に"レッツゴー太平洋"が出てくるたびに笑ってしまう…… これは現代の8つのクランの名前を並べても異彩を放ってそうだな、"レッツゴー太平洋"
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