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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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172/210

84年目-2 新たな時代のシェン

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


シェン・ハオラン(8)

シェン・ランレイ(5)

 独自の武術、星界拳を極めんとするシェン一族が里を興してもうそろそろ80年にもなろうかという頃。

 里長シェン・フェイオウ指導下にて、新たな世代の萌芽が次々に芽生え始めていた。

 

 というのもフェイオウの子供、シェン・ハオランとシェン・ランレイ兄妹がこれまでにないほど、特異な才能を見せ始めていたのだ。

 それぞれまだ8歳と6歳。シェンの子であれば少しずつ星界拳の修行に向けて鍛錬を行っている時期であるものを、その突き抜けた才覚は常人の何倍もの速度での成長を遂げさせていた。

 

 妹ランレイは科学的合理性に基づいた初歩的トレーニングを行う傍ら、見様見真似で星界拳の基本技を習得。

 その鋭い足捌きは足刀主体の斬撃脚を扱う星界拳の一派に適性ありと見られ、ゆくゆくはその方面の技をメインに身につけることになるとすでに教育役のシェン達に噂されている麒麟児ぶりを見せつけていた。

 

 そしてそれにも輪をかけてすさまじい才覚を見せたのが兄ハオランだ。

 彼は齢8歳となる頃にはすでに星界拳の基本技をすべてマスターし、いくつも分かたれた流派を同時並行的に学び始めていたのだ。


 その強さたるや大人顔負けで、紅顔の美少年とも言うべき美貌や礼儀正しく大人しい言動とは裏腹に、いざ試合ともなると容赦無い蹴りの連撃を浴びせ掛ける激烈さを発露する。

 実力的にも完全に隔絶していることから、同年代の子供達とは離れ、独自の修行を行う段階に至っているほどだった。

 

 才溢れる新世代の中でも、あまりに超越的な素質を見せる二人のシェン。

 ハオランとランレイ。この二人の存在をもって今後のシェンも万事安泰だろうと、里の誰もが確信を持って断言するほどであった────

 

 

 

「ちぇぇぇいやあぁぁぁぁっ!! せいかい、ばくれんきゃくー!!」

「う、うおおおおっ!?」

 

 幼く小さい身体から、信じがたいほどの切れ味鋭い蹴りが放たれた。それも一発のみならず二発、三発と立て続けにだ。

 里にて児童向けの星界拳指導者を行っている中年のシェンの男は、そのあまりの猛攻に耐えかねてしまった。最初の二撃を躱したのは良いものの、最後の三発目をもろに腹部に受けたのだ。

 叫びとともに尻餅をつく彼を、そうなさしめた弱冠6歳の天才が油断せず構えをもって見据えた。

 

 黒髪を肩口にて切り揃え、武術用の衣装を翻らせるその少女の名はランレイ。シェン・ランレイ。

 里長シェン・フェイオウの娘であり、持って生まれた星界拳士としての才覚にて爆発的な成長を遂げつつある戦士だ。

 その実力は同年代、未だ肉体的なトレーニングから始めている子達を遥かに凌ぎ……大人の星界拳士にも負けないほどの技を繰り出せるほどだった。

 

「せいかいけん! しぇぇぇぇぇん・らんれぇぇぇいっ!!」

「あたた……参ったな、6歳児にこうもクリーンヒットをもらうなんて。どうなってんだ最近の若い子は……強すぎるだろう」

 

 舌足らずの声で、それでも星界拳士として勝ち名乗りをあげる少女ランレイ。彼女に見事尻餅をつかされた指導役の男は、苦笑いしながらも素直に舌を巻き、彼女の強さを褒め称えた。

 6歳でこれかと、感嘆の念を禁じ得ない。過去のシェンにも天才と呼ばれる者達はみな早熟気味だったが、この子については文字通り桁が違った。

 

 もっと言うならばランレイ以上の天才がもう一人いるのだ。新たな世代の台頭、新たな時代の到来を直感せざるを得ない……

 男は内心でそうつぶやき、そのもう一人の天才を見た。ランレイと男が試合をしているスペースのすぐ隣、一人の少年が五人の大人を地に伏せさせ、ぽつねんと立っている。

 

「…………シェン・ハオラン……」

「ぐ、ぅぁあ……っ!?」

「つ、強すぎる……馬鹿な、これほどのことが、わずか8歳で……」

「ひでえ」

 

 あまりに現実離れした光景。少年一人に対して大の大人が五人、総掛かりで挑んで指一本触れられずに終わったのだ。

 ランレイの兄、シェン・ハオラン。ランレイにも優る、まさしく天才を超える天才。超天才の神童である。


 その腕前たるや眼の前の光景からも分かるが、以前には7歳にして里長でもある実父、フェイオウと互角以上に競り合った過去さえあるのだから筋金入りの才能と言えるだろう。

 やや、というよりはかなりきつめに暗い性格で、同世代の子供達の中でも孤立気味なのが玉に瑕とは言えるものの……ランレイでさえ赤子扱いしてしまえる正真正銘の才能を持つ大天才にはつきものといえばつきものなのだろうと、男には思えるのだった。


「天才兄妹、かあ……世代交代って感じがするな。将来が楽しみで仕方ない」

「にーちゃん! にーちゃ! 勝ったよにーちゃ、次勝負!」

「え。あ、うん……一撃当てられたらランレイの勝ち。良い?」

「うん! ──しぃぃぃぃやぁぁぁぁーっ!!」

 

 慄きと、それ以上の期待を胸につぶやく男を尻目に二人、じゃれ合うように試合を始めるハオランとランレイ。

 幼くして大人達を凌駕し、未来への期待をも抱かせる若き獅子達はかくして今日も、無邪気に遊ぶように鍛錬を重ねていく。


 ──さらに三年後には、二人にも負けないどころか。

 始祖シェン・カーンから始まるシェン一族が待ち望んだ"完成されしシェン"たるシェン・フェイリンが産まれることとなり。

 ここにシェン一族はついに、最盛期とも言うべき時代の到来を迎えるのであった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 シェン三兄妹ももちろん登場する「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

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 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] シェンの強者は早熟気味っぽいけど、中には晩成型もいるんですか?
[良い点] 最初にS級に到達するのは誰か!完成されしシェンたるフェイリンか!?A級トップランカーたるランレイか!?はたまた、偶然S級モンスターを単独討伐してしまったハオランか!? ハオラン「た、探査者…
2024/05/20 01:18 こ◯平でーす
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