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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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16/210

23年目-1 第二次モンスターハザード

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


エリス・モリガナ(18)

ヴァール(???)

 大ダンジョン時代到来から22年。この頃、北ヨーロッパにおいて騒動が起きていた。

 各地でスタンピード──ダンジョンからモンスターが大量に溢れ出す現象──が頻発し、モンスターが町や村を襲い人を死に至らしめる事案が多くなっていたのだ。

 

 これを受けWSO統括理事ソフィア・チェーホワは即座に緊急対策チームを結成。北欧圏に向かい事態の解決を図る。

 だがそこからが真の大騒動の始まりだった……チームの現地到着と時を同じくして主要都市のマスメディアをジャックしたとあるテロ組織によって、一連のスタンピードが人為的に引き起こされたものであると宣言が成されたのだ。

 

 "能力者解放戦線"。予てより大ダンジョン時代および能力者やダンジョンの存在をWSOによる自作自演の陰謀劇だと主張していた市民団体だったのが、何者かによる資金と武装援助を受けて一気に過激化。

 モンスターを利用して能力者を駆逐し、大ダンジョン時代をもたらした悪女チェーホワとその子飼いWSO、そして傀儡と化した国連そのものを解体して真なる人類のための組織を創り上げるという、事実上の宣戦布告をおこなったのである。

 

 第二次モンスターハザード。

 後の世にそうした名称で伝わるこの大事件において、極めて大きな活躍をしたにも関わらずその名を一切記録されなかった一人の探査者がいた。

 

 名をエリス。エリス・モリガナ。

 15歳の時にスキルに目覚めていた若き聖女の、人生そのものを大きく歪めるターニング・ポイントであった。

 

 

 

「《念動力》! 恨みはありませんが、それでもやっつけます!!」

「ぐごぎゃあああっ!?」

 

 スキルを用いてナイフを振るい、エリスは迫りくるモンスターを切り裂き光の粒子へと還していった。これで15体目、雑魚ばかりとは言えさすがに息の上がってくる数だ。

 故郷の村を大挙して襲ってきたモンスターの群れ。3年前に探査者となり、ホームを拠点に近隣のダンジョンを中心に探査を続けてきた彼女にとっては自分にしか対応できない事態が今まさに起きていた。


 村のみんなを避難させ、自分一人で敵のすべてを受け止めて捌き続けているのだ。

 レベル100と少し。あまり争いごとを好かない性格ゆえ、率先してダンジョン探査をしていなかった身にしては高レベルだが……この場にあってはやはり、荷が勝ってしまう程度のものでしかなかった。


「ぐるぉぉぉぉおああああっ!!」

「ぐぎゃぁぁあおおおおおんっ!!」

「ぴけー! ぴけけーっ!!」

「くうっ……! 負けません! 負けられません!! でやあああっ!!」

 

 倒しても倒しても波のように続くモンスター。もういい加減にしてくださいと神にさえ祈りながら、エリスは自身のスキル《念動力》で刀身を伸ばしたナイフをもって敵を切り裂き続ける。

 この戦闘スタイルは完全にエリス独自のものであり、彼女自身は気付いていないが通常のスキルの使用法とは違う。

 極めて特異な、天賦の才としか言えない使い方をしているのである。

 


 名前 エリス・モリガナ レベル116

 称号 聖女

 スキル

 名称 念動力

 名称 気配感知

 名称 環境適応


 称号 聖女

 効果 任意の相手にこの称号を継承させる。継承後、元の保持者の称号が《元聖女》になる

 

 スキル

 名称 念動力

 効果 掌を翳した対象を自在に操る

 

 

 この時点でのエリスのステータスがこの通りであるが、取り分け《念動力》の効果に着目してみると、明らかに今彼女が発動しているやり方が異様なことが分かる。

 本来このスキルは遠くにあるものを自在に動かしたり、手元の武器を操り攻撃したりするためのスキルとして現代では認知されている。

 断じて今、エリスが行っているようなナイフの極端な強化法など想定されてはいないのだ。


「くっ、《念動力》……ッ!! まだです、まだ終われませんっ!!」


 ナイフに手を翳してスキルを発動しているのはたしかなのだが、そこから先の現象が通常のものではない。

 何かを流し込むように……刀身から緑の光が放たれ、ロングソードの形状を象っていく。そうしてできた念動力ソードこそが、彼女がファースト・スキルを得て以来ずっと使い続けてきた戦法なのだった。

 

 強化されたナイフはあらゆるものを切断していく。当然モンスターも例外ではない。

 だがさすがに多勢に無勢だ、もう限界が来る。エリスはこれまでにない恐怖を、死の予感を抱き震えた。

 

「ぁ、ぅ。く、う。し、死ぬの、私──!?」

「《鎖法》──ギルティチェイン・インピーチメントッ!!」

 

 もう駄目だ、と目に涙を浮かべて泣き叫びかけたその時、まさしく天の助けは訪れた。

 どこからともなく放たれた数多の鎖が、横合いからモンスターの群れを薙ぎ倒し一網打尽に倒してみせたのだ。

 

 断末魔の叫びさえ上げることなく光の粒子となり失せていくモンスター達。後に残されるのは死ぬ間際だったエリスのみ。

 何が起きたのか理解できないまま、それでもどうにか命だけは助かったのだと理解してその場にてへたり込む。

 そこに。先程の鎖を放った者が姿を見せ、近づいてきた。

 

「間一髪だったか……無事か? 探査者のようだが、よくここに至るまで持ちこたえてくれた」

「ぁ、あ……あなた、は?」

 

 金のウェーブヘアを靡かせた、白いシャツとスカート、ブーツ姿の美しい少女。しかしその表情は凍りついたような無表情であり、まるで感情らしきものを感じさせることはない。

 だが……声音はどこか優しく、温かい。明らかに気遣うように声をかけてきたその女の名をエリスが尋ねれば、彼女は一つうなずき、答えるのであった。

 

「ソフィア・チェーホワ。国際探査者連携機構の統括理事をしている。お前の名前は?」

「ぁ……エリス。エリス・モリガナ……です。ソフィア、さん」

「そうか、エリス。お前がこの村を守っていてくれたのだな。感謝する……立派な姿だった」

 

 エリスの健闘を讃え、その手を差し伸べる。

 WSO統括理事ソフィア・チェーホワ。その裏人格たるヴァールとエリスの出会いは、こうした修羅場の中での出来事だった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 エリスとヴァールが共闘する「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] まさにヒーローとヒロインの邂逅の一場面…… ヴァールが男性体だったら、ここからラブコメがはじまっていたな
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