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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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79年目-5 シェン・ランレイ

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


シェン・ランレイ(0)

シェン・フェイオウ(46)

シェン・ハオラン(3)

 大ダンジョン時代100年を迎える昨今。星界拳を扱うシェン一族といえば名のある探査者を多く輩出してきた生粋の探査者一族として名が知れ渡っている。

 開祖シェン・カーンを筆頭にシェン・ラウエンやシェン・カウファン、シェン・ムーヤンなど100年続く歴史の中、度々表舞台に現れては大きな功績を遺していったのだ。

 

 そんな中、現代においてはやはり彼女こそが有名なシェンと言えるだろう──シェン・ランレイ。

 その蹴り一つで分厚い鋼鉄をも切り裂く斬鉄脚をメインとした星界拳の流派を使う、弱冠22歳にしてA級探査者の中でもトップランカーに位置する天才拳法家である。

 

 能力者犯罪捜査官としても活躍し、緑に染めた髪が人目を引く美女だ。

 普段は気弱だが、ひとたび戦闘となると極めて好戦的な言動に豹変する落差もあいまってネットでは多くのファンを獲得している、華やかな新世代が多く現れる当代にあって一際異彩を放っている。

 

 そんなランレイが生まれたのは今から遡ること22年前。

 シェン一族の里において、里長シェン・フェイオウの二人目の子として誕生したのだ。

 "完成されしシェン"ことシェン・フェイリンが生まれる、8年前のことであった。

 

 

 

 シェン一族の里長シェン・フェイオウに待望の第二子が産まれた。

 第一子ハオラン出産から3年が経ってからのことだ。この頃フェイオウは46歳。若い頃の牙もすっかり丸くなり、先代里長にも似た穏やかさを獲得するようになっていた。

 

「おめでとうございます! 可愛らしい珠のような女の子ですよ!」

「おお……! 良かった、本当に良かった! なんとめでたい、この歳にして二児の父となれるとは!!」

 

 シェンの里内にある病院にて、助産師から祝福の言葉を告げられてフェイオウは歓喜の声をあげた。

 望外の喜びだった……本当に。40歳近くで里長になるまでひたすら孤高に自らを鍛え続けてきた彼は、それゆえに結婚もましてや息子娘を持つこともなく一人どこぞかで戦い死んでいくのだろうと常々思っていたのだ。

 

 それが里長となり、素晴らしい縁談に恵まれ良妻を得、子宝にすら恵まれた。

 すべては里長となったのが転機と言えよう。そのきっかけとなった先代里長シェン・ロウハンの病と死はフェイオウからしても悔しみ惜しむことではあったが、それはそれとしてやはり、こうした幸福を手にできた喜びというのもどうしても抱いてしまうものだ。

 

 内心にてロウハンに詫びつつも、フェイオウはともに妻の出産を案じて待っていた息子、ハオランの頭を撫でた。

 未だ3歳、物事についての理解も年相応ではあるがただ一点、自分が妹を持つ兄となったことに喜びの笑顔を浮かべている。

 

「女の子! 僕、お兄ちゃん!?」

「ああそうだ、ハオラン。今日からお前は兄だ。守るべき、ともに歩んでいく家族を得たんだ」

「守る……」

「ああ。我らシェン一族の使命とは別に、家族を持った者ならば誰しもが持つべき責任、そして役目だよ」

 

 優しく諭す父に、幼きハオランは目を丸くして噛みしめるように守る、という言葉を繰り返すばかりだ。

 その顔つき幼い子ながら整っており、里内でも将来が楽しみだと主に主婦層から囁かれているほどだ。


 実際に25歳になる現代においてハオランは、里ばかりか中国全土でも評判のいわゆる"イケメン"として名を馳せることになる。

 しかも文武両道であり、探査者ではないものの星界拳の腕前だけならば"完成されしシェン"たるシェン・フェイリンと互角なほどである。


 本人がインドア気質であり、用事がない限りは里どころか自室からも出てこないという点が玉に瑕ではあったが……

 シェン一族の中でも際立った実力を誇る彼の幼少時は、このようにあどけなく無垢な笑みを浮かべる少年だったのだ。

 

「守る! 僕、妹守るよ、父ちゃん!」

「ああ、頼りにしているぞハオラン。大切な人を守れる星界拳士に、どうかお前はなってくれ」

「うん!!」

「……そして。新しく産まれたその子の名を、お前にも教えよう」

 

 微笑みを浮かべて、フェイオウはハオランに大切なことを告げる。産まれてきたその子の名、予め妻と話し合い決めていた、大切な名前だ。

 美しく、優しい子に育つように。賢く、正しく、そして幸せな人生をどうか送ってくれるように。

 想いを込めて考えたその名を、彼はゆっくりと、息子に教えた。


「──ランレイ。シェン・ランレイ。私達の新しい家族、お前の妹の名前だよ」

「ランレイ……! シェン・ランレイ! 僕の妹の名前は、ランレイ!!」


 瞳を輝かせてランレイの名を繰り返すハオラン。その姿に、自然と涙腺が緩むものを覚えてフェイオウは窓から青空を見上げた。

 きっと、健やかに育ってくれるだろう。ハオラン同様にランレイも、喜びに満ち溢れた人生を過ごしてくれることをただ、祈る。

 

 ────かくしてこの日、新たに産まれたシェン・ランレイ。

 フェイオウの祈りに応えるがごとく強く美しく、そして優しい娘に育つ彼女だが、17歳の頃に能力者へと覚醒。探査者の道を歩むことになる。

 

 そして現代ではかのS級探査者マリアベール・フランソワの孫娘、アンジェリーナ・フランソワとタッグを組んで能力者犯罪捜査官として活躍することとなるのだが……

 この時点ではまだ、誰にも分からない未来であった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 若きシェン姉妹も活躍する「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[良い点] ポエミー本編が旧A級トップランカーで、こちらは新A級トップランカーの話ですね。 [気になる点] 陰キャ寄りなハオランさんとランレイさん(失礼)ですが、ゲーム配信してる辺り、ハオランさんにも…
2024/04/29 05:54 こ◯平でーす
[一言] ハオランがインドア気質になったのって、里のマダムたちがイケメンだなんだと追いかけ回したからじゃ……?
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