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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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148/210

79年目-2 ワケアリの弟子

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


サウダーデ・風間(38)

アラン・エルミード(40)

 強力すぎる攻撃スキル《極限極光魔法》を獲得した新人探査者ベナウィ・コーデリア。

 そのあまりの火力と範囲、出力調整の難易度の高さ……そして何より彼自身のヒューマンエラーしがちな性格により、探査に出てはスキルを暴発させ、周囲一帯を焦土にしてしまうことが多々あるのが目下のところ最大の懸念点であった。


 これによって自身はおろか、周囲の探査者までをも盛大に危険に晒すこととなってしまったのだ。

 師匠にしてS級探査者のサウダーデ・風間でさえ、スキルの威力と範囲については末恐ろしいものを感じとっており、いずれS級にまで到るだろうという可能性を弟子に見出しつつも、今のままではそうなるまでのどこかで自身のスキルに殺されてしまうものと強い不安を抱いていた。

 

 探査者としての問題点とは別に、個人としてのベナウィは好青年でサウダーデも好ましく思っているだけに、余計に行く末を心配してしまう。

 それがゆえに、彼は知り合いの探査者を頼ることにした……親友である大探査者、アラン・エルミードへと電話をかけたのだ。

 アランとベナウィには、ともに極限魔法シリーズと呼ばれる同系統のスキルを持っていたためであった──

 

 

 

『はっはっはっはっは! そうかークリストフでも弟子に手を焼くんだねえ。なんか勝手に、無闇に畏怖され恐れられるスパルタ師匠だと思ってたんだけど』

「からかうなよ、アラン。たしかに風貌こそ厳しい自覚はあるが、さりとて無茶な要求はしないさ。先生にそんな指導をされた覚えもないからな」

『分かってる分かってる。君は昔も今も変わらず、探査者の中の探査者だよ』

 

 電話越しに語らう。友人アランのからかいにもサウダーデ・風間こと本名クリストフ・カザマ・シルヴァは苦笑いで返すばかりだ。

 古くからの友人関係である二人は、今もこうして度々電話で連絡を取り合っていた。年に一度はどちらかがどちらかの拠点にやってくることがあるほどに、彼らの友情は堅いものだったのである。


 フランスと太平洋の中心部。あまりに距離を隔ててのやり取りだが、数年前までは太平洋に電波が通らなかったことから電話すらままならなかった。

 それどころかテレビもネットもラジオさえないような環境を、当然ながらWSOも客船都市に投資している各国の大企業と強い懸念をもって対処にあたったのだ。


 もはやインターネット全盛期に突入している昨今にあって、大ダンジョン時代社会の文明における最前線ともなり得る可能性を秘めたこの地がここまでアナログな有り様ではまずい。

 そのため各国共同の下、WSOの所有として客船都市にネット環境の整備が行われた──電波を収束させて拡散させる特質を持つC級モンスター、レディウェーブ・ルートスパイダーのドロップ素材を用いて、周囲数百km以上何も無い海上であっても快適に電話やネットが行える環境を整えたのである。


 これにて太平洋は情報社会的孤立を脱し、IT文明を享受しさらなる発展を遂げる下地を築くこととなったというわけだった。


 余談だがサウダーデはこの手の情報文明には強いほうであり、ネットサーフィンをするような一面もある。

 反面アランのほうはまったく時勢についていけずにパソコンはもちろんスマートフォンの使用さえ苦戦しており、妻エミリアに微笑まれていた。


 ともあれそんな経緯から無事、遠いフランスに住む友人と語らうことができるようになった今、電話越しにサウダーデが語る。

 話題はもちろん、弟子ベナウィが手を焼いているスキルについてだ。

 

「率直なところ、ベナウィの気質だけが問題ではないと俺は考えている。《極限極光魔法》……君の《極限極水魔法》にも匹敵する力を秘めているようだが、出力調整の難易度もまた、それ相応だと見える」

『だろうね。他の極限魔法シリーズ系統のスキルを持つ探査者達もみんな苦労しているよ。なんなら制御できないことに嫌気が差して自分から使用を封印したり、あるいは外勤を引退する人までいる。強すぎる力だから、気持ちはよく分かるよ』

「むう……せっかく俺を師として慕ってくれるベナウィを、同じような憂き目に合わせたくはないな……」


 渋面を浮かべ、弟子の未来を憂うサウダーデ。

 探査者としては無論のこと未熟だが、それでも明るく朗らかで人当たりも良い、陽気なベナウィを彼はまるで年の離れた弟のように思っていた。

 どうにも真面目さだけが前に出る自分には到底できない振る舞いをしてのけるところは、率直に認め敬意すら抱くほどだ。


 そんなベナウィが授かったスキルを活かしきれずに未来の展望を絶たれるようなことはあってはならない。

 もしそのようなことがあれば、それは彼でなく指導者たる自分の責任だろう……とさえ考えるサウダーデに、アランの言葉が続けて投げかけられた。


『それになんだっけ? 封印中とやらのスキルもあるんだろう? マリーさんもなんかそんなファースト・スキルを持ってるって言うし、なかなかワケアリのお弟子さんみたいだね、そのコーデリアくんって子は』

「ああ……《メサイア・アドベント》という。先生の《ディヴァイン・ディサイシヴ》によく似た文言の効果欄のようだから、そのうち機会を見つけて先生の下に連れて行こうかとも思っている。なんにせよ、常ならぬタイプの探査者なのは間違いないな」

 

 ついついため息をこぼす。ベナウィの問題は目下のところ、《極限極光魔法》だけではなかった。

 《メサイア・アドベント》。サウダーデの師マリアベール・フランソワの《ディヴァイン・ディサイシヴ》同様に封印されているらしい謎のスキルを、彼もまた授かっているのだ。

 

 マリアベールをして50年、謎のままだと肩をすくめさせる意味不明なスキル。それと同質だろうモノを手にした男が、なんの因果か自分の弟子となった。

 これにはきっと何かの意味がある。あまり運命論には馴染まないほうのサウダーデだが、此度の奇縁の巡り合わせにはつい、そのようなことを考えないではいられないのであった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 マリアベールやベナウィの持つ、謎のスキルの正体が判明する「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[良い点] 内勤になってもうっかりしそうなベナウィさん。 別の意味で地獄の光景が生まれそうです。
2024/04/26 05:27 こ◯平でーす
[一言] アラン氏、機械オンチなのかー意外ー サウダーデさんも含めて逆のイメージだったわ
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