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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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147/210

79年目-1 サウダーデ、弟子を取る

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


ベナウィ・コーデリア(20)

サウダーデ・風間(38)

 太平洋経済圏構想から生まれたダンジョン客船都市に移住してもう7年が経つサウダーデ・風間であったが、この頃、生まれて初めての弟子を持つようになっていた。

 当然、探査者としてのだ……極めて強力なスキルを持ちつつも、そのあまりの強さから本人も使い余していたところを指導する形になったのだ。

 

 その弟子の名はベナウィ。ベナウィ・コーデリア。探査者になってまだ半年程度の新人で、ステータスに覚醒するまでは客船都市内の倉庫作業に従事していたいわゆる会社員だった。

 20歳のこの若者は陽気で明るく人好きする性格であり、言動が謹厳実直で怖いと評されがちなサウダーデに対しても物怖じせずに接していくコミュニケーション能力があったため、師弟としての関係性は常に良好なものであったのだが……一点、大きすぎる欠点が弟子のほうにあった。

 

 すなわちベナウィのメインウェポンとなるスキル《極限極光魔法》と本人の性格がミスマッチ気味だったのだ。

 極めて高火力、かつ範囲も広いそのスキルは決して大雑把に運用して良いものではないのだが、ベナウィは持ち前のうっかり屋を発揮してしまった。

 火力制御に失敗してはたちまちダンジョン内を意図せず破壊し尽くしてしまう、いわゆる破壊魔となってしまったのである。

 

 これにはさすがのサウダーデも頭を抱えた。ベナウィ本人はとにかく人が良く、まるで悪意なく本気のうっかりミスでやらかすものだから余計に始末が悪い。

 かくして生真面目師匠とうっかり弟子の、二人三脚での修行が幕を開けたのであった────

 

 

 

 響く轟音、そして眩くすべてを飲み込む閃光。ただそれだけの世界が一分近く続き、サウダーデは手で目を覆いつつも嘆き叫んだ。


「またか、ベナウィ! お前というやつは!!」

「あ、あれーっ!?」

 

 激しい音の奔流の中でも響く怒号を耳にしたのか、近くにいる弟子のとぼけた叫びが返ってきた。

 それさえ音の洪水に飲まれ掻き消されるのを、どうにか拾い上げて嘆息する。


 太平洋ダンジョン、地下一階のとあるエリア。新規探査者向けの弱いモンスターが出てくる大部屋に、弟子の修行のため訪れていた時のことだ。

 弟子……ベナウィ・コーデリアが自身の持つスキル《極限極光魔法》の出力調整を失敗し、暴発に近い形で過剰火力が解き放たれたのである。


 彼の面倒を見るようになってから一ヶ月、これでもう8回目にもなる調整ミスだった。

 最初は加減の難しいスキルなのだから仕方ないと、説教もそこそこにしていたサウダーデだったがここまで来るとわざとやっているのではないかと疑りたくもなってくる始末。


 もちろんベナウィ当人にその気がないのは分かりきっているのだが、それはそれとしてもいくらなんでもやらかしが多すぎる。

 むしろそちらのほうが質が悪いなと、サウダーデは苦々しい思いで徐々に収まっていく閃光と轟音を見届けた。スキルの発動が収まり、少しずつ視界が回復していく。

 そして広がる変わり果てた光景に、サウダーデは頭を振ってつぶやいた。


「…………ひどすぎる」


 焼け野原。そう表現するしかなかった。

 元々、太平洋ダンジョンは通常のダンジョンと異なる特質、内部構造をしている。一般的なそれが通路と部屋の連続なのであるが、太平洋ダンジョンの場合は多種多様な種類に満ち溢れているのである。


 場所によっては迷宮めいた通路や広々とした大部屋、はたまたまるで異なる世界に来たかのように青空広がる大草原や雪の降りしきる山岳などさえあり得る。

 太平洋に大きく空いた穴の中だというのにだ……このダンジョンだけの特殊極まる様相に、発見当時のソフィア・チェーホワWSO統括理事も驚きに息を呑んだと記録に伝わるほど、異質な場所なのである。


 さてそんなダンジョン内のこの場所は、先程までは緑豊かな草原に青空が広がる謎の空間だった。それが今では見る影もなく焼け野原と青空に成り果てている。

 言わずもがなベナウィの《極限極光魔法》の威力によるものだ。その火力と破壊力、そして範囲と射程距離はすさまじいものがあると認めつつもサウダーデは、師として弟子を叱りつけた。 


「またか! またなのか、ベナウィ!」

「すみません師匠……つ、ついうっかり……」

「何度目だ、まったく! ここに他の探査者がいたら、どうするつもりだったのだお前はっ!!」

「あいたぁっ!?」

 

 チョップを一つ、額に落とす。威力はもちろん加減しているがそれでもS級探査者の手刀だ、痛くないわけもなくベナウィは涙目で頭を押さえた。

 本当ならば拳骨と行きたいところだったがこの弟子、師たるサウダーデよりもいくらか背が高い。2m近い彼よりもなお身長が高いのだから、完全に2mを超えていることは間違いなかった。

 

 そんな痩身の大男はしかし、気まずげに心底から申しわけなさげに頭を下げた。

 彼とて己のスキルの危険性は当然理解しているのだ。仲間や他者をも危険に晒しかねない行為だと、強く己を戒める。

 

「どうにも調整がしづらく……ある程度抑えることはできるのですが、そこから少しでも火力なり範囲なりを高めたり広めたりしようとすると、途端にこの通りでして」

「むう……難しさは理解するが、この頻度でこうも破壊されては探査どころでもない。修行にさえならんぞ、これでは」

「ですよねえ……」

 

 師弟揃って頭を抱える。

 ピーキーすぎるスキルの調節は、ここからなかなか進まない二人であった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


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― 新着の感想 ―
[良い点] これはある意味、将来的にS級になれる器ですね。 (何という判断基準) [気になる点] S級になってもまるで成長していない……なのか、それとも、この頃に比べれば大分マシにはなっているのでしょ…
2024/04/25 12:56 こ◯平でーす
[一言] これはアラン氏を呼んで威力調整のコツを聞いたほうがいいのでは
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