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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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134/210

75年目-2 改造兵器人間

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


ロナルド・エミール(17)

ソフィア・チェーホワ(???)

エリス・モリガナ(70)

早瀬光太郎(64)

マリアベール・フランソワ(57)

アラン・エルミード(36)

フローラ・ヴィルタネン(34)

 第七次モンスターハザード。その戦いの中でロナルドの実力が飛躍的に向上するのと同時に、彼に秘められたスーパーパワーもまた、開花しつつあった。

 呪われた力だ……ノインノア・ジェネシスの人体実験によって彼の体内に注入されたモンスターのエキスが覚醒。彼の遺伝子そのものを改造変異させながらその威を発揮したのだ。 

 

 まず第一に異常なまでの五感の発達が挙げられるだろう。野生動物さえ超える嗅覚や聴覚、視覚……味覚や触覚までもが大きく進化していった。

 高レベル探査者と同程度以上の水準にまで、わずかレベル100かそこらのモグリの能力者が到達したのである。

 

 続いて第二に、モンスターの一部特質を任意で発現できるようになった。

 爪、牙、あるいは翼。元となったなんらかのモンスターのものだろうそれを、彼は自分の意思で自在に使うことができるようになったのだ。


 こうした覚醒はまさしく組織の目指していたモノ、すなわち改造兵器人間製造実験による成果そのものであり、彼とついに相対した一部の研究者達などは目を血走らせて狂喜さえしたと記録には残されている。

 スタンピードを引き起こした誘導液の開発、製造も件の組織が行っていたこともこの時期発覚し、WSOならびに各地の組織の標的はこの頃、ついにノインノア・ジェネシス包囲網として実現しつつあった────


 

 

「人体をこうまで改造するなんて! なんてことをするの、ノインノア・ジェネシスとかいう連中はっ!」

「は、ははは……」

 

 かつてなく激高するソフィア・チェーホワWSO統括理事に、つい最近モグリの能力者から正規に探査者としての登録を果たしたロナルド・エミールは気まずさに苦笑いして頬をかいた。

 その手は今、ヒトのものでない。モンスターのものに成り果てている──もっといえば今の彼の背中からは翼が生え、額にも第三の目が開かれている。一概に人間であると断言しきれない、そんな姿だ。


 第七次モンスターハザードにおける各地での戦いの中、ロナルドはついに己の体内に埋め込まれたモンスターの因子、すなわちかつて人体実験の折に注入されたエキスの覚醒を果たした。

 突然身体が熱くなり、今のように腕が変異し翼が生え、額にももう一つの瞳が開眼するという有り様になったのだ。有り体に言えば変身したとさえ言える。


 戦場でのことで勘違いした探査者からも攻撃されかけたが、たまたま近くにアランと光太郎がいたことから難を逃れた……その後すぐにソフィアの耳に入り、精密検査を受けることになったが。

 様々な機械に通され、採血されたりレントゲンを取られたりした時間は戦うよりもよほど苦痛だったとロナルドは身震いする。

 

 そうして判明した事実……ノインノア・ジェネシスの人体実験は成功していた。

 埋め込まれたなんらかのモンスターのエキスが遺伝子を冒し、変異させて擬似的な変身能力とでも言うべき力をもたらしていたのだ。

 

 結果を受け、ニューヨークに拵えられたWSO支部の会議室にて集うソフィアやロナルドの先輩達。

 年端もいかない少年が、遺伝子さえ玩具にされた果てに半分モンスターじみた姿に変わってしまったのだ。今も激怒するソフィアはもちろんのこと、S級探査者マリアベールや四代目聖女フローラもすっかり頭に血が上り打倒ノインノア・ジェネシスを改めて強く掲げるようになっていた。

 

「もちろん最初から許すつもりはなかったし、容赦なく壊滅させるつもりだったけどさ。いくらなんでもこれはないね、ファハハ……関係者全員、地獄より酷い目ェ見せてやる」

「あまりに惨い……なんてことを、こんなことは絶対に許されません。先代聖女として以上に一人の人間として、必ずノインノア・ジェネシスは討たなければなりませんっ」

「み、みなさん落ち着いて……一応俺の意思でコントロールできますから。ほら、解除」


 ソフィアの憤激に呼応するかのようにマリアベールとフローラが険しい顔で組織の壊滅を誓う。

 この部屋の中には他にも、歴代モンスターハザード解決の主要立役者が集っているのだが、特に先の三人が特に怒りを顕にしていた。


 それぞれ大ダンジョン時代の牽引者、娘を持つ親でもあるS級探査者、慈愛溢れるダンジョン聖教先代聖女である。

 被害を受けた張本人であるロナルド当人が逆に恐縮するほどの圧を放っている……気まずげに彼が変身を解除するのを見て、周囲の面々が呆れ半分苦笑い半分で激怒する三人を宥めにかかった。


「はいはいソフィアさんにマリー、あとヴィルタネンくんも落ち着いてってばー。今ここで怒っても仕方ないよ、ハッハッハー」

「気持ちは分かるが、その怒りは連中を前にした時に向けるべきだぜ御三方。まぁかくいう儂もノインノアなんたらが出向いてきやがったら、何しでかすかもわかりゃあしないけどな、ワハハハ!!」

「エリスさんや光太郎さんの言う通りですよ三人とも。ほら、ロナルドくんも困ってますし」

「え!? あ、いえその……き、恐縮です」


 初代聖女エリス・モリガナ。早瀬会大親分早瀬光太郎。そしてS級探査者"ハザードカウンター"アラン・エルミード。

 いずれも今、こうしてモンスターの因子が覚醒したロナルドであってもまったく敵わない隔絶的な実力を誇る探査者達が、しきりに彼を気遣いつつもいきり立つ三人を抑える。


 これまでエマを除いて人間関係に乏しい人生を送ってきたロナルドにとって、このメンバーは生まれて初めての先輩であり師匠であり、仲間でもあり……年の離れた友人達でもある。

 そんな彼ら彼女らに大切に想われていることがどうにもこそばゆいながらも、それはそれとしてキレすぎなことに引き気味にもなるのが少年の偽らざる本音であった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


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― 新着の感想 ―
[一言] 遺伝子が変質してしまった彼に子供ができたら、その遺伝子は受け継がれるんですか?
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