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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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132/210

74年目-3 五代目聖女の演説

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


神谷美穂(44)

 アメリカ全土で頻発し始めていたスタンピード。それを受けてモンスターハザードの兆しありとWSOが動き始めていた一方で──

 フィンランドは聖都モリガニアを本拠地とする一大宗教組織・ダンジョン聖教もまた、この事件に対して行動を開始していた。

 

 この頃、ダンジョン聖教においては四代目聖女フローラ・ヴィルタネンが太平洋客船都市へ赴くにあたり聖女の座を引退。

 彼女の後を引き継いだ五代目聖女、神谷美穂が辣腕を振るい勢力拡大と信仰の伝播に努めていた。

 

 そんな中で訪れた第七次モンスターハザードの兆しに、神谷はすぐさま緊急事態を宣言しダンジョン聖騎士団を動員。

 アメリカ全土にいるダンジョン聖教信者の保護と神敵モンスターの殲滅、そして大ダンジョン時代社会への貢献を理由にスタンピードへと対抗していくのである。

 

 ガチガチの武闘派として知られた三代目マルティナ、穏健派と名高かった四代目フローラに続き……国際的には穏健なスタンスを堅持しつつも対モンスターについてはマルティナ以上の過激な姿勢を見せる"殲滅聖女"。

 神谷の代におけるダンジョン聖教とは、"やる時はやる"を明確に貫く武闘派集団としての色を鮮明なものにしていた。

 

 

 

「ダンジョン聖騎士団は、これよりアメリカ全土の信者の保護を目的に作戦を開始します」

 

 今やダンジョン聖教総本山となったフィンランドのとある地方。聖都としてすっかり定着した宗教都市モリガニアの中心部に建てられた、荘厳なる大聖堂にて。

 五代目聖女、神谷美穂は整然と並ぶ屈強な聖騎士団員達に向けて演説を行っていた。アメリカにて現在異常発生しているスタンピードについてである。

 

 数年前に新たな象徴的存在を迎えてさらなる飛躍を向かえんとしたダンジョン聖教の、行く手を阻むかのように起きたそれは、紛れもなく何度となく続いてきたモンスターハザードの兆しである。

 WSO統括理事、ソフィア・チェーホワからの連絡を待たずして神谷はそのように判断し、行動を起こそうとしていた。


「過去紐解けば60年以上前に端を発し、以後6回も繰り返されてきた邪悪による惨劇、モンスターハザード……第二次の折には我らが偉大なる初代聖女様も参戦なされたと文献には伝えられております」

「初代様……! 我らの祖、二代目ラウラ・ホルン様を育て上げられた伝説の人物! 神話そのもの、伝承聖女様!!」

「その通り! そしてそれ以後も第五次、第六次には先々代聖女マルティナ・アーデルハイド司教ならびに先代聖女フローラ・ヴィルタネン司教、そして私も参加いたしました! すなわちダンジョン聖教はモンスターハザードと切っても切れない、深い因縁があるのですっ!!」


 腕を大きく振るい、その場に並ぶダンジョン聖教が誇る探査者集団へと叫ぶ。

 ダンジョン聖教初代聖女。その名は未だ聖女の間でのみ語られるばかりで信者達にまで聞こえてくることはないが、その存在そのものが神話めいた、伝説の聖女であることはダンジョン聖教内において広く知られている。

 

 曰く第二次モンスターハザード解決の立役者。神の奇跡をその身に宿し、あのソフィア・チェーホワとさえ肩を並べたと言う最強の聖女。

 邪悪な画策によって世界に激震が走る時、天から眩いばかりの光を放ち聖都モリガニアに降臨してきた天女。その育ての親がモリガナという家名であったことから現世での名もモリガナ姓であると考えられる、詳細不明の人物。


 第二次モンスターハザード集結の後、役目を果たした彼女は二代目ラウラ・ホルンに称号《聖女》を託し、天へと昇り今も人々を見守ってくれているという。


 ──真実は無論異なり、単なる村娘エリス・モリガナがヴァールに見出されモンスターハザードを戦い抜いた結果、スキル《不老》を得て年を取らない体質となり以降、世界を転々とし続けているだけであるのだが。

 事実がどうあれダンジョン聖教内ではこのような神話が公然と語られ、エリスの神格化が進められているのが現実の話であった。


 そんな初代聖女から続くモンスターハザードの因縁を持ち出せば、信心深いダンジョン聖教聖騎士団達の意気は当然のごとく高揚し、高い士気、宗教的使命感が彼ら彼女らを満たしていくのが神谷の目にも見えた。

 かくいう彼女自身、自分がついに聖女となった代でまたしてもモンスターハザードが起きようとしていることに対し、気合が漲るものを覚えるのが正直なところだ。

 

 マルティナもフローラも立派に聖女の務めを果たした。多くの信者達の想い、祈りをひたすらに背負い何年もの間、ダンジョン聖教の象徴的存在としての責務をまっとうしたのだ。

 で、あるならば自分も……フローラから託された自分もそうでなくてはならない。太平洋へと向かい新たなる信仰の道を歩いている偉大なる先代に、負けないほどの働きをしなくては!

 

「これはWSOだけの戦いではありません、我々ダンジョン聖教の戦いでもあります!! 彼の地の信者達だけでなく、そこに住まうすべての人々、すべての命のために……我々が率先して動く、それこそが使命!!」

「そうだ、その通りだ!!」

「我らの手で、アメリカに平和と平穏を!!」

「第七次モンスターハザードなにするものぞ……! 今こそ各々の誇りを胸に、それぞれの信仰とともに武器を取りなさい騎士達よ!! ────アメリカ遠征を、これより開始しますっ!!」

 

 力強い宣言。それに答えるのは喝采と気炎。騎士達も士気は十分以上だ、たとえスタンピード相手でも何一つ気後れせず、戦いに挑むことができるだろう。

 これをもって五代目聖女率いるダンジョン聖教聖騎士団は、アメリカ大陸への進撃と対スタンピード大規模作戦の展開を開始したのであった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 ダンジョン聖教も裏に表に活躍している「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] エリスさんの真実がばれたらいったいどうなってしまうのか?w ずっと戦い続けているから別方向で信仰されるだけな気がするわ
[一言] ダンジョン聖教の神話をエリスさんが聞いたら、遠い目しそうだなぁ
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