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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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114/210

69年目-3 幻のS級

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


エリス・モリガナ(64)

ヴァール(???)

レベッカ・ウェイン(82)

マリアベール・フランソワ(51)

 自らが仕留めたS級モンスター・ドラゴンの素材をもって作られた刀を手にし、その健在ぶりを世界に知らしめたマリアベール・フランソワ。

 生放送中に超神速の居合を放ったことは、当然ながら世界的にも大きな反響を呼んだ。


 元より人気だったマリアベール自身の人気はもちろんのこと、探査者そのものから果ては日本固有の技術たる居合や日本刀など日本の伝統や文化に至るまで。

 この年よりしばらくの間、国や地域を問わず探査者の間でも日本刀による剣術ブームが到来したのである。

 

 そんな話はさておき、こうした絢爛たるエピソードの裏で密かに進行していた話もある。新たなるS級探査者の認定だ。

 ソフィア・チェーホワ、ヴァール。そして時の人となったマリアベール・フランソワやアラン・エルミード、レベッカ・ウェインなどの名だたる探査者によって推挙された、とある探査者がこの頃WSOからの打診を受けていたのだ。

 

 その名はエリス・モリガナ。

 第二次モンスターハザード解決の主要功績者であり初代聖女。そしてそれ以降も数多の犯罪組織や犯罪能力者を取り締まり続けてきた、異端の能力者犯罪捜査官であり……ソフィア同様不老体質の、永遠なる少女探査者であった。

 

 

 

「ハッハッハー、お断りしまーす!」

「予想はしていたがキッパリ言うな、エリス……」


 WSO本部施設の近くにある、ソフィアとヴァールの私邸のリビングにて。

 マリアベールの存在を改めて世界に示した会見を終え、彼女とごく近しい間柄の者だけがこの場に集められ、ささやかな宴会を開いていた。もう日が落ちる頃、夜通し呑み明かすことを前提とした飲み会である。


 家主のソフィア──今はヴァールだ──に加えて主賓たるマリアベール。さらにはWSO特別理事レベッカ・ウェインにダンジョン聖教初代聖女エリス・モリガナまでもが参加していた。

 四人で食卓を囲み、のんびりと酒とつまみを楽しむ会。立場も年齢も関係ないこの場にて、しかしヴァールは良い機会だとエリスにとある提案をしていた。

 すなわちS級探査者にならないか、という打診である。


 もう50年近くも積み重なった功績の大きさと、不老存在である彼女の社会的立ち位置の確保。

 そして何より、全盛期のマリアベールさえ下すほどの極めて高い実力を適正に評価してのものなのだが……それに対して先述の通り、エリスは即座にからから笑って断ったのである。

 爆笑してマリアベールが叫んだ。


「ファハハ! だから言ったでしょうがヴァールさん、エリス先輩はたぶん即答で断るってさ!」

「むう……」

「本人目の前にして言うのもアレだけど、この人根本的に自由で無責任なんだから! 能力者犯罪捜査官なんてやってるのだって私にゃ信じられないくらいさ、つってもその捜査官としてもめちゃくちゃ自由に動き回ってるみたいだけど!」

「ホントにアレなこと言うね!? さすがに責任感くらいあるし大体ね、自由なのもどっちかって言うと君だよ元狂犬!」


 長い付き合いからくる気兼ねないやり取り。お互い笑顔で罵り合う二人に、ヴァールもレベッカも苦笑いしてグラスを傾けるばかりだ。

 マリアベールの言い分も分からなくもない。彼女から見てエリスとは、出会った頃にはすでにあちこち放浪しては行く先々で騒動を起こしているらしい自由人そのものだ。


 それゆえ忌憚なくそのように評するのだし、実際自由な生き方をしているとはヴァール、レベッカやエリス本人とて思っていたりはするのだが……さりとて無責任とまでいくかと言われるとさすがにそこはそうでもない。

 もはやこの時から46年も遡っての第二次モンスターハザード。そこで活躍していた初代聖女としての彼女は、まさしく使命感と責任感の塊だった。まさしくその果てに、行き場を見失って彷徨う羽目になってしまったほどに。

 

 そのことを思えば、今くらい軽いノリで良いのではないか、と。

 統括理事や特別理事としての立場を考慮しない一個人としては正直なところ、思ってしまうヴァールとレベッカだ。

 特にエリスに対して想い入れの深いレベッカが、ガッチリした体格でエリスの肩をホールドして懇願した。


「エリスちゃん、そんなアッサリ断らないでおくれよ……! あんたのことが心配なんだよ、年も取らずに延々さすらって、その果てに一体何があるのかって……!!」

「れ、レベッカさん……勘弁してくださいよ、そんな事言われましても〜……」

 

 困り果てるエリス。昔からのことだがこの、人情家で義理堅い親分肌のレベッカにだけはどうにも頭が上がらない。

 第二次モンスターハザード後、かれこれ24年も行方をくらまして大いに心配をかけてしまったという意識もあるからなおのことだ。妹分である二代目聖女ラウラ・ホルンと並びレベッカはエリスにとって、急所とも呼べる人物だった。

 

 これは勝機と見てヴァールが懐から一枚カードを取り出した。探査者認定証……S級探査者としてのエリスのそれだ。

 マリアベールさえも超えるレベル。経年劣化なく半世紀もの間戦い続けてきた実力が、そこには記載されている。

 

 

 名前 エリス・モリガナ レベル1295 S級

 称号 元聖女

 スキル

 名称 念動力

 名称 気配感知

 名称 環境適応

 

 

「と言うかな、エリス。もうすでに手続きはほとんど完了しているのだ、首を縦に振ってもらわなくては困る」

「あれ!? いやいやそこにエリスさんの意志とかあります!?」

「エリスちゃん! 後生だよ、受け取っておくれよ! このままじゃあ私ゃ死んでも死にきれねえよお! こんな枯木みてえな身体んなった老いぼれを哀れと思うならどうか、どうかあ!」

「そこらのボディビルダーも真っ青な体格しててよく言うよこの婆様は……82歳ねえ。私はそのくらいの歳だと、さすがにヨボヨボかねえ」

「えぇ……?」

 

 あまりに段取りの良い話に思わずエリスがツッコめば、レベッカがまたしても号泣して説得を行い、その内容に呆れたマリアベールが酒を飲みつつ未来に想いを馳せる。

 数十年来の付き合い。酒も入りつつのそれは、なんだかんだと四人それぞれにとって楽しい時間と空間でもあった。

 

 結局エリスはヴァール達の提案を受け入れ、WSOのデータベースには名前のみが登録された。

 そこから探査者マニアや他のS級は神秘性、謎めいた存在感を放つS級探査者として受け取られ、"幻のS級"と半ば都市伝説扱いを受けることとなる。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 現代でも幻のS級扱いなエリスが登場する「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] 際限なく不老ゆえに強くなり続けるエリスちゃん いつか都市伝説がホンモノとばれるころには誰も手だしできない高みにいそう
[一言] ゴリ押しと泣き落としに弱いぞ、エリスさん!
感想一覧
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