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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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104/210

67年目-1 S級探査者とS級モンスター

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


ヴァール(???)

マリアベール・フランソワ(49)

 大ダンジョン時代も50年を過ぎた頃に制定された、探査者の実力や実績による級区分。

 新人のF級から世界トップクラスのS級に至るまで細かく分類したそれは、モンスターやダンジョン相手にも同じく適用されていた。

 

 モンスターもまた、強さによってF級からA級までに分かたれたのだ。

 そして各級のモンスターが生息しているダンジョンもまた、FからAまでの難易度として区分され、基本的に同じ等級の探査者による探査が推奨されることとなった。


 これによりたとえばF級がA級モンスターに挑んで殺されたりだとか、A級がF級モンスターを相手して他のA級モンスターのいるダンジョンが放置されるといった課題がある程度解消された。

 いわゆるミスマッチングが格段に減り、適材適所的な探査が行われてより効率よくダンジョン踏破が多く成されることとなったのだ。

 加えて下級探査者の生存率も上昇し、実力に見合ったダンジョンに挑むことでより安全な形で強くなっていくことができるようになったのであった。

 

 ──だが。一点だけこの等級区分制度には例外が存在した。

 S級モンスターという存在である。

 

 

 

「……なぜダンジョンにS級がないのか。それはダンジョン内にS級モンスターがいないからだ」

 

 イギリス南西部。フランソワ邸を訪れたWSO統括理事ソフィア・チェーホワの裏人格ヴァールは、リビングにてマリアベールを相手に語っていた。

 今回はプライベートでの訪問ではない。世界屈指の実力者であるS級探査者マリアベール・フランソワへと一つの依頼をするため、統括理事自らが直接出向いたのだ。

 前置きがてら、行うべき説明を行なっていく。

 

「S級モンスターの定義は等級区分制度の中にあって特異だ。"地上に出現し、その地域一帯に一体だけで破滅的大災害を引き起こし得るモンスターであること"……つまりはA級までの枠に収まらない化物が、地上に出現した時に始めて認定されるのだ」

「第五次モンスターハザードの時。最後のほうで出てきたバイオレンスオーガもたしか、後からS級モンスター認定されたんでしたっけねえ」

「うむ。他にも過去を紐解けば、周囲500m圏内の酸素濃度を極端に引き上げたオキシジェンユグドラシル、新幹線並の速度で川を泳ぎ回り船に攻撃していたシンカンセンマグロなどが有名だな」

「オキシジェンユグドラシルはまだ良いとして、シンカンセンマグロねえ……どういうネーミングなんだか」

 

 モンスターのネーミングについて呆れた声を上げるマリアベール。

 時折見かける、新種モンスターにユニークな名前をつけることに拘るタイプの探査者だろうかと、名付けた第一発見者について若干考える。


 余談だがこうしたユニークネームモンスターについてはかつて、ソフィアの仲間の一人であったモンスター学教授の妹尾万三郎が始祖として知られている。

 惜しくも彼自身は現代を遡ること60年前、56歳の若さで亡くなってしまったのだが……彼が開いたユニークネーム学派は脈々と受け継がれ、紆余曲折を経つつ現代においても珍妙な名前のモンスターが時折、生み出されているのが現状だった。

 

 そんな話はさておいて、ここからが本題だとヴァールは告げた。

 持ってきた資料をマリアベールに示し、続けて説明する。

 

「そして今回、新たなS級モンスターの存在が確認された。それも過去に類例を見ないほどの巨大さだ……全長600m。バイオレンスオーガの倍はある、ほとんど山だな」

「そんでもって羽つき牙つき尻尾つき、と。おまけに口から火まで吐くとは、まるきり特撮の怪獣ですねえ……」

 

 資料にはそのモンスターの出現位置と具体的なデータ、情報が記されている。もちろん写真もだ。

 山のような巨体。トカゲの見た目に翼が生えた、あまりにも有名なファンタジー上の生物を思わせる姿をしたその生物には、当然のごとくその名が与えられた。

 

 ────ドラゴン。

 現代にあっては最強のモンスターとも呼ばれがちなS級モンスターであり、その知名度も併せてある種の人気さえ獲得している、極めて危険な存在だった。

 

「ドラゴン退治だ、マリアベール。お前の他にも主立ったS級探査者には軒並み声をかけ、この化け物を早急に仕留めるべくWSOは総力を挙げて準備をしている」

「面白いじゃないですか、ハハハ……! モンスターからしてファンタジーめいた連中だが、そん中でついにドラゴンまで出てくるとは。そんでもってそいつに私の大断刀を、ぶち込める機会に恵まれるなんてねえ!!」

 

 獰猛な笑みを浮かべ、マリアベールは覇気を漲らせた。

 もうじき50歳になる彼女は、肉体的にはとっくにピークを過ぎているが技術や精神面においてはむしろ若い頃よりも成熟し充実しきっている。

 年輪を重ね、娘を産み育て弟子を数多育て上げ、新たな剣の境地も見えつつあるのだ……多少の身体的な衰えなどカバーしきれるほどだと、彼女は不敵に嘯く。

 

「居合スタイルに変えて7年ほど。そろそろ奥義も完成しそうなんだ……これから先、婆さんになっても現役貫くマリアベール様の完成形ってやつを見出すにゃあ、ドラゴンはこれ以上ない相手だ。ヴァールさん、行きますよ私は! トカゲはどこにいやがるんです!?」

「南アメリカ大陸、ギアナ高地。完全に地域一帯を縄張りとしており、我が物顔で雄大な自然の王者を気取っているようだ」

「ハハハ、ますます気に入った! 傲岸不遜なモンスターの王、相手にとって不足なしだ!!」

 

 神話にも登場するドラゴンさながらの、まさしく絶対王者とでも言うべき振る舞いをしているらしい件のモンスターにさらに哄笑をあげる。

 もはや決定だ……やつの首を捕る。マリアベールはS級モンスター退治への参加を、この世の誰よりも喜んで表明した。

 

 これは後の世にて、マリアベール・フランソワが"ドラゴンキラー"という二つ名で呼ばれるようになった戦いだ。

 そして彼女の新たなる戦闘スタイル、居合術が真に完成した戦いとしても知られることとなるのである。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 S級モンスターも登場する「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

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 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] オキシジェンユグドラシル名前はあれだけどこいつほっとくとずっと酸素濃度が上がっていって一番大変なことになりそうなやつですねぇ怖ぁ
[一言] ダンジョンから外に出てきているっぽい描写だけど、全長600mなんてよくダンジョンの出入り口から出られたな…… そんなに横幅はないんだろうか
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