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魔王討伐  作者: 甘党辛好
44/45

楽とライト

ーーー深層心理


「………」


「…ライト、終わったようだぞ」


小さい魔王は少年に、全てを終わったことを伝える。


「………」


しかし、少年は何も反応しない。


「…残念だ」

小さい魔王は、放心状態であった少年に呆れたような声で話しかける。

「帰って来たようだな」


小さい魔王の声とともに、少年にとって憎むべき存在の声がする。


「やぁ…帰ったよ」


放心状態であった少年は、直ぐ様声の方を見る。


その時の少年の顔は、まるで全てを憎み、全てを恨み、殺意に満ち溢れた…そんな表情であった。


「…ッ!」


直ぐ様、憎悪を向けるべき対象に飛び掛かる少年。


「…おっと…どうしたんだ?」


依然として振る舞う対象に、少年の憎悪をますます深くなる。


「…なよ」


消え入りそうな声で話す少年。


「…?」


彼が憎悪を向ける対象は、少年の感情など露知らず…いや、知っていながらなのか…どちらにせよ、彼は鼻で笑っていた。


「ふざけるなよ…!」


少年の荒げた声を聞いて、何を思ったのか…彼は自身の疑問を少年に問いかける。


「…で?」

「どうするんだ?」

彼は純粋そうな声で聞く。

その純粋な声に、少年はますます怒りを顕にして、少年は、彼に…


        飛び掛かった


「…殺してやる」

「お前を殺してやる!」


飛び掛かり、少年は彼を下に敷きながら、彼の胸ぐらを掴み、彼に向けて大声で怒鳴る。


「…へぇ」

少年の言葉を聞き、彼は手にナイフを生成する。

「…君が僕を殺せば、人格破綻が起こる」

「一つの感情が、文字通り”死ぬ“からね」

「それでもやるかい?」


「…知らねぇよ」

「僕がお前を殺すと…今言ったろ?」


少年の言葉を聞き、思わず笑ってしまう彼。


「ふっ…ははっ!そうかい!」


彼は笑いながら話すと、少年にナイフを手渡す。

手渡されたナイフを、少年は、なんの躊躇もなく、すぐに突き刺す。


何度も…何度も…何度も…。


ゴキッという肉を突き刺すような感触と、鈍い音が、”この空間“に刺す度に響き渡る。


何回刺しただろうか?

それすらもわからなくなるぐらい、ライトは楽を刺し続けていた。


刺している最中、ライトの表情は見たこともないように暗く…いや、無表情というべきか。

ただ目を見開き、無表情で刺し続けていた。


「ふふっ…ハハハッ!」

「どうだい?気は済んだかい?」


楽はそう話すと、自身の指を鳴らした。


すると、先程まで、ライトの下にいた楽の姿はなくなり、魔王の横へと移動していた。


「…」


不服そうな顔をするライト。

そんなライトを見て楽は、楽は嬉しそうに話す。


「ふっ…まさか人格破綻が起きると話しているのに…本当に僕を刺してくるやつがいるとは…いやぁ、見直したよ」

「…君には…ライト、という名前があったのを…忘れていたよ」

「やはり君は…素晴らしい素材だよ」

「…まぁ、残念だけど権限的に…」

ー君は僕を殺せない

「…君は主人格ではあるが、このスキルの中の順位は低いんだよ」

「それこそ、副人格…君を元に作られた人格と同じ…」

「ま、簡単に言えば魔王と同じぐらいの権限しか持ち合わせていない…ということだ」


「で…?」


「つまり…この空間では有用であり有能であり、他の人格の代えが効かない…こういったことが、このスキルの権限を制定する中で重要なんだよ」

「そして、この権限的に僕は…この空間でも武器の生成や魔法が撃てる…もちろん他の人格の管理もね」

「君ができるのは、精々…」


そう話す、楽の話に恐ろしい形相をしながら、割って入るライト。


「…”そんな事“どうでもいい」

ライトはゆっくり楽の元へと向かい、楽の胸ぐらを掴む。


「…どういうつもりだ?」


「…お前を絶対に…」

「後悔させてやる」


その気迫に一瞬だけ楽は戸惑う。

が、直ぐに楽は、自身の胸ぐらを掴んできたライトの頬を殴る。


殴られた拍子に、ライトは吹き飛ぶ。


「…権限的にもそうだが…力…実力も僕の方が上だ」

「力の差がどれほどのものか、今殴られてわかっただろ?」


ライトは直ぐ様立ち上がる。


そして。


「だから…知らねぇよ」


「…?」


ライトが恨む楽の事を殺すのが、力的にも権限的にも絶対的に無理だと話したのにも関わらず、威圧的な態度を取るライトに少しだけ戸惑う楽。


「俺は魔王になる男だぞ」


そのあまりの恐ろしい表情に、楽は一瞬だけたじろぐ。

そんな一幕を見ていた魔王は、少しだけ笑い楽に話しかける。

「ふっ…貴様にも怖いものがあったとはな」


「…うるさいぞ」

そう魔王に一言だけ話すと、楽は「素晴らしい」といった感激した様子で話す。

「ふっ…はっはっは!それにしても、ライト…私はお前を勘違いしていたよ…」

「お前は、僕の想像以上の素晴らしい素体だ」


「…」


その言葉を聞いても顔色一つ変えずにいるライト。


そんなライトの様子に、楽は何を思ったのか謝罪をする。


「まぁ、今回の事はすまなかったよ…ライト」

「俺の負けだ、お前を素材呼ばわりしたり、お前への数々の非礼と…あのスライムの娘の……スィちゃん…だっけか?」

「あの娘にした事もすまなかったな」


「謝って許されることでは……」


ライトがそう言うと、今度は楽が割って入る。


「そこでだ、お前にいい情報を2つ…悪い情報を一つ話そう」


「…?」


「まず、いい情報だが…あのスライムの娘、スィちゃんは………」


ー「生きている」


「…!?」


その楽の言葉に驚きを隠せないライト。


「あの時壊したのは、魔結晶…お前がスィちゃんに預けた魔結晶だよ」


「…本当か?」


「あぁ、本当だ」


「…そう…か……」

「…よかった……」


そう涙を浮かべ喜ぶライト。


歓喜するライトをよそに、直ぐに次の話をする楽。

「…そして、もう一つのいい情報は……近々魔族の軍勢が攻めてくるということだ」


その言葉を聞き、すぐに切り替えるライト


「…いつだ?」


「…残念だが、日時と場所は言われなかった」


「…そうか」


「最後に悪い話だ…」


「…」


「メルクは生きている」


「…!?」

「嘘だろ…?」


「いや、本当だ」

「奴は…アンデッドだ」


「…そうか」


楽の情報に、先程まで歓喜していたとは思えない表情で思考を巡らせているライト。

その様子を見て、楽は話す。


「まぁ、いうべきことは言ったから…後は任せるよ」

そう楽が話すと、何処かへと去っていく。

だが、その去る途中で、何かを思い出したのか、ライトたちのいる後ろを振り向き少しだけ話す。

「あぁ…そうだ、ライト君…」

「最後に言い忘れていたが、僕は君を認めるよ」


「…?」


戸惑うライトをよそに、楽は話し続ける。


「そして、魔王」


「なんだ」


「…喜びは死んだ」


「…そうか」


「今は俺があいつの代わりを補っているが…」

「時間がない」


「分かっている」


この短い会話の中で、互いに事の重大さを理解し、楽はこの場を去っていった。


ーーー


楽がこの場を去った後、二人になった魔王はライトに話しかける。


「良かったな…スライムのことも、楽が貴様を認めてくれたことも」


「あぁ…そうだな」


「奴が謝罪をするなんて滅多にない…」


「我個人としては、楽が貴様を認めてくれたことがとても大きい…後は怒りと哀しみだけだ」


「それで、お前らの言っていた“ゴール”に近付けるってわけか?」


「…あぁ」

「…時間だ、ライト」


「まて、魔王…さっきの話だが………」


「…喜びが死んだ話か?」


「あぁ」


「その事について…我からも話があるが……物事には制限時間がある」

「また今度話そうか……」


「…分かった」


「じゃあな、ライト」


ーーーーー


(約一週間遅れました…正確には8日ですね。すみません…。次回は11月3日に投稿予定です。)

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