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魔王討伐  作者: 甘党辛好
40/45

敵と仲間

ーーーー

ライトは、トロール目掛け一直線に立ち向かいに行く。


「ほぉ…1人で来るのか…この俺様に対して!」




真正面から来るライトの攻撃を、真っ向から向かい打とうと防御の体制を取るトロール。


「copy!(コピー!)」


ライトは、自身の分身を作り出し、トロールの目の前にライトが二人現れる。


ライトは、分身と本体である自身の位置を、高速で交互に入れ替える。


「そんな子供騙し!」

「一遍に殴ってしまえば終わりだぁぁぁ!」


トロールは防御の体制を崩し、ライト自身、分身どちらも一遍に右フックで捉えようとする。


ーーーーー数分前



「んで、その…作戦ってのは?」


山月が聞いてくる。



「餓鬼さんの妖術の一つに、“ライコウ”という技がある」

「言ってしまえば、超強力な電撃だ」

「強力な電撃を纏った獣が、餓鬼さんの指定した位置まで来るんだ」


「ほう、そりゃすげぇ」

「…ん?」

「それだったら、今からでも使えば…」


当然の疑問だ。

しかし、ライコウには致命的な欠点がある。


「いや、”ライコウ“は、妖力を限界まで縮小して放出することで、ようやく使える技なんだ」


「って事は…それまでに時間稼ぎが必要ってことだな」


そう、ライコウを発動するには、ある程度の時間が必要なのだ。

だからこそ、僕と山月には時間稼ぎをする必要がある。


「その、“ライコウ”を相手に喰らわせ、怯んでいるときに力を限界まで貯めたウーさんが、一撃をお見舞いする」


「なる程な…じゃあ、余り物の俺等は、時間稼ぎ役って事か」


「そうなる」

「…もう一つ”ライコウ“には、重大な制約もあるんだが…それは餓鬼さんに説明してもらってくれ」


「了解」


山月は納得したように、後ろを向き、餓鬼さんのいる方へと歩く。


「ライト!」


「?」


「死ぬ気でやれよ!」


「あぁ、お前もな、山月」


ーーーーーートロール視点


二人のライトに拳を当てることに成功するトロールだが、拳があたり、攻撃が命中し終えた段階で、二人のライトは消えてしまう。


(どちらも分身…!)

(ということは…後ろ!)


トロール自身も、すぐに切り替え後ろから来る殺気に気付く。


後ろからくるライトの攻撃に気付いたトロールは、攻撃の来る場所に合わせ筋肉集中させ防御する。


その防御した位置に、ライトの攻撃が命中する。


(勝った…!)

(完全なる勝利だ!)


歓喜するトロール、技術や、魔法…それら全てが、“ただの力”に負ける瞬間を想像し、満面の笑みでトロールは後ろを振り向き、ライトを攻撃しようとする。

(お前の負けだ…!ライト…!)


その時、左腕に“何か”の感触がする。


トロールは、何かがおかしいと気付き、咄嗟に左腕を見る。


“無い”のだ


トロール自身の左手首から先が…


完全に消えていた。


ーーーーライト視点


普通にやっても勝てない。

そんな事はとうに理解していた。


だからこそ、相手の油断付くしか無い。

僕はそう考えた。


「copy!(コピー!)」


僕は一体分身を作り出し、高速で位置を入れ替えながらトロールへ向かっていく。


トロールは、僕と分身、二人まとめて攻撃してくる。


(想定の内だ…!)


僕は妖術を使う。


「妖術…身代わりの術」


トロールは、僕が作ったコピーと身代わりを、攻撃し、僕の作ったコピーと身代わりは消える。


その後、僕は奴の左に回り込み、トロールの死角から、トロールの背後に短剣を2つ投げる。


「clone!(クローン!)」



1つ目の短剣は、徐々に僕の形を模していき、トロールの背後に回った時、もう一つ投げた短剣を取り、奴の”うなじ“目掛けて攻撃しようとする。


トロールもそれに気付き、いや気付いてくれて後ろのクローンに拳を当てようと、後ろを向きかける。


(今だ…!)


僕は地面を勢いよく蹴る。


そして…


「魔酔!」


トロールの左手首目掛けて剣を振る。


トロールの左手首は綺麗に切断される。


トロールの血飛沫で、僕の体が全身赤く染まる。


だがそれで良いのだ。


トロールは、左手の惨状を見て、トロールの肌はみるみる赤く染まってゆき、明らかに激昂する。


「キサマァァァ!」


トロールは僕の事を右手で瞬時に掴み、思い切り壁に投げる。


僕は壁にめり込む。


「グッ…!」


「左手の痛みがねぇ…」

「どんな技を使ったかは知らないが…」


「左手の痛みがなくとも!お前らが今までしてきた!攻撃の痛みで十分なんだよ!」


めり込んだ僕にトロールは近づき、右手と切断された左腕で、僕目掛け連打してくる。


「死ね!ゴミ虫が!負け犬の子孫が!魔王の幹部である!この俺にすら勝てない!雑魚の半人前の!分際で!」


「あの世で詫びやがれぇぇぇぇぇぇ!」


トロール自身の完璧な肉体を、綺麗に切断され、元々持っていたコンプレックスからキレているのだろう。


だがそれで良いのだ。


僕に注意が向かえば、それだけ餓鬼さんの準備までの時間が稼げる。


「グッ…」


意識が朦朧としてくる。

それもそのハズだ。

ただでさえ、パワー任せの怪物が、身体強化をし、その力の100%を僕にぶつける。



「…ッ!」



トロールの後ろを見ると、金棒がズラリと宙に並んでいる。


(…餓鬼さん…!)


僕は、力無く笑う。



後ろにある“何か”を察知したトロールは、直ぐに後ろを向く。


トロールは目を見開き、10個ほど並び、道のようになった金棒の一番右端の金棒に右フックをしようとする。



ーーーー数十分前ートロール視点


「…砂漠までクリアされそうだ」


メルクが、トロールに話している。


「早い方か?」


「あぁ、想定の範囲内だ…」

「ただ、一人ぐらい脱落者がいるかと思ったが…」


「まぁ…あいつ等も、そう簡単な奴らじゃないって、ことだな」


準備運動をしながら、ニコやかな雰囲気で話すトロールに、呆れているメルク。


「はぁ…お前からしたら、そっちのほうがいいのか」


「まぁな」

「そっちのほうが楽しみがいがあるってもんよ」


「…そろそろだな」


「了解」

「殺っちまって構わないんだよな?」


「あぁ」


「ほんじゃまぁ、行きますか」


ある程度の準備が出来たトロールは、次のステージに向かうライト達と戦う戦場へと向かう。


「なぁ、ルーロ」


しかし、メルクがトロールに話しかける。


「ちっ…んだよ」


「準備運動を終えたとこ悪いが…忠告があってな」


「忠告?」


「あぁ…」


「この俺にか?」


「お前だからだ」


「なんだよ」


「戦雄餓鬼の、技に気を付けろ」


「技…そんなもん、俺の肉体で…」

そう言いかけたトロールだが、メルクが遮る。


「お前のパワーと肉体は、あいつ等ととことん相性がいい」

「だからこそ今回のゲームの、ラスボスとして連れてきたが…」


「あぁ、分かってるよ」

「俺の肉体の事だからな…誰よりもわかってるさ」


「唯一、お前を倒せる方法があちら側にある」

「…”ライコウ“」


「…ライコウ?」

「確か…どんな奴も気絶させる技だったよな」


「あぁ」


「そんな技、俺の肉体で…」


「いや、お前であろうとあの技は効く」

またも、話を遮るメルク。


「…なんだと?」


「あの技は、魔王であろうと効くのだ」

「つまり、“どんな奴も”というのは文字通りで、肉体や能力等で気絶する秒数に差はあれど…」

「どんな奴も気絶する」


「なる程な…」

「念の為聞いておくが…俺の場合は何秒なんだ?」


「長くて数秒、短くて1秒か…それ以下」


「はん、じゃあ喰らっても大丈夫そうじゃねぇか」


喰らっても数秒というのを聞き、鼻で笑い慢心するトロール。


「いや、奴らが貴様を倒す手段などいくらでもある」


「あ?」

「さっき唯一って言ってたろ」


「あれは”きっかけ“の話だ、お前を倒す“きっかけ”は今のところ奴等は、一つだけだが…」

「…きっかけさえあれば、倒す手段等いくらでもある」


「…そうかい」


「“ライコウ”の防ぎ方は2つある」

「一つは、“ライコウ”を使用するにはある程度の議会が必要でな、詠唱中の術者を攻撃し、詠唱の妨害すること…だがこちらはお前みたいなのには合わんな」


「どういう意味だ」


「すぐ頭に血が上る」


「あぁ、そうかい」


「もう一つのほうが重要だ、たった一つ”金棒を殴れ“」


「金棒?」


「あぁ、金棒は道の役目がある」

「“ライコウ”は、金棒を道になぞらえ、その道を伝って攻撃対象者に攻撃する技だ」


「成る程…じゃ、金棒が一本でもなくなれば…」


「あぁ、金棒という名の道はなくなり、対象者に到達できななくなり…不発に終わる」


「成る程な…」

「…まぁ、肝に銘じておくよ」


トロールはそう言うと、一つ疑問が湧いたのか、メルクに尋ねる。

「…にしてもお前、何でこんな事教えた」


「…まぁ、期待しているんだ貴様に」


「期待?」


「あぁ、お前ほどの人材はこの世を探してもいない、またとない人材だ」

「だからこそ…私の作った王国の家臣にしたい」


「フッ…くっだらねぇ」

鼻で笑うトロール。

「残念だが、俺は魔王様一筋だぜ」


「そうか…まぁいい、貴様が来たいタイミングで来い…貴様ならいつでも歓迎だ」


「そうかい」


「それにな…」


もう一つ何かを言いかけるメルク。


「?」


「それに、利害の一致とはいえ貴様と私は仲間だ…殺されたくはないだろ?」


「フッ…なんだそれ!」

「ハッハッハッ!」

大爆笑するトロール。

「あ〜、笑ったぜ、案外…ピュアなんだな」


「フッ、言っておけ」


「まぁ、任せとけ」


「気を付けろよ」


「あぁ」


そう会話を終え、トロールはライト達の元へと向かった。


ーーーーーーーーーーー現在


トロールの拳が、一番右端の金棒にあたりかける。


しかし、その瞬間、その右端の金棒が煙に覆われる。



煙が晴れると、そこには金棒ではなく…。


山月が居た。


「来いよ!ルーロ!」


なんとかトロールの拳を、その身一つで受け切ろうとする山月。


ーーーーー数分前


「山月、作戦の方は餓鬼さんから説明してもらってくれ」

「これ以上はスィの命も危ない…俺が先に行ってくる」


「了解!…気を付けろよ」


「ふっ…あぁ」


ライトがルーロに立ち向かって行く。

その後ろ姿を確認した後に、餓鬼さんの方を向く。


「…んで餓鬼さん、作戦は?」


俺は餓鬼さんに尋ねる。


「あぁ…作戦はこうだ」

「俺の放つ妖術”ライコウ“を使い、奴を気絶させる」

「気絶した瞬間を狙い、ウーが奴にトドメを刺す」

「と、言う作戦だ」


「成る程…確か、“ライコウ”は餓鬼さんの種族のみ伝えられている技だったよな」


「あぁ、今からやる”ライコウ“という技は、お前の言う通り、俺の種族にのみ伝わる妖術…」

「雷を具現化して対象者を気絶させる…それが、“ライコウ”という技だ」


「雷を?」


「あぁ…雷を猛獣へと変化させ」

「俺の妖力で作った大量の金棒を、道のように伝って対象者に攻撃…その後、対象者は気絶するという技だ」


「ん?」

「じゃあ、この技…金棒破壊されたら終わりじゃね?」


「その通り」

「この妖術には弱点が2つある」

「一つは、お前の言う通り金棒が破壊されてしまえば、“ライコウ”を使用できないという点だ」


「まぁ、”ライコウ“の通る道がなくなる訳だからな」


「あぁ」


「んで、もう一つは?」


「もう一つは、時間だ」


「時間?」


「この術は、自身の妖力を限界まで練り、それを一気に放出する術だ」

「練らずに出す事も出来はするが、電撃の威力が圧倒的に弱くなる」


「なるほど?」

「つまりは、奴に最大威力の技を与える場合、それ相応の時間が必要なわけだ」


「その通り」

「だからこそ、お前とライトには時間稼ぎをしてもらうんだ」


「おっけ、了解」

「…つっても、どうやってだ?」

「魔法も使えない俺じゃあ、時間稼ぎっつっても…たかが知れてるだろ?」


「正直に言えば…その通りだ」

「だからこそお前には、もう一つの弱点も補える方法で時間稼ぎをしてもらう」


「さっき言ってた…金棒の件もか?」


「あぁ、金棒を破壊されず、時間も稼げる…そういう手が、たった一つだけある」


謎の緊張感から、唾を飲み込む。

「ゴクリッ…その手とは?」


「…変化だ」


「変化…?」


「あぁ、お前を金棒に変化させ、金棒達の一番右端に配置する」

「そして、奴がもし金棒に気付いた場合…最初に殴る金棒は、恐らく右…奴は右利きだからか、右から攻撃することが多いからな」



「うん、なるほどね~、間違いなく死ぬじゃん」


「安心しろ、お前はあくまで予防線だ」

「ライトが、“ライコウ”の準備時間を稼げたら、お前の役目はない」


「あっ、じゃあ、まだ…」


「まぁ、その可能性は…ほぼ無いがな」


「だよな〜」


「あのトロール…奴は馬鹿かもしれんが、動きからして、様々な戦場を経験しているのが見て取れる…野生の勘ってやつが発動するだろうからな」

「仮に、金棒を目視できなかったとしても…“何か”を察知して、金棒に気付く可能性のほうが高い」


「ほぼ死ぬってことね」

「いやでもさ、俺…ウーさんとか餓鬼さんみたいに防御力皆無だし…ライトみたいな時間稼ぎの仕方のほうが…」


「大丈夫だ、お前には防具があるだろ」


餓鬼さんは僕の防具を指差して言う。


「いや、あの力の前だと、ほぼ無いに等しいんですけど」

「…はぁ…まぁ、ウダウダ言ってても仕方ないしな」


俺は覚悟を決める。


「こんなことを聞くのはあれだが…山月、死ぬ覚悟は本当にあるか?」


「…でもやっぱし…こわぁぃにゃぁ〜」


「あ〜、はいはい分かった分かった、じゃあ変化始めるぞ」


餓鬼さんは俺の冗談を軽くいなし、俺は金棒に変化した。

「…そのなんだ、すまんなこんなことに巻き込んで」


改まってそう話す餓鬼さん。


「…まぁ、俺の決めたことだ、悔いはねぇ」


「頼んだぞ」


「あぁ」



ーーーーーー現在 スィ視点


「うっ…うぅ…」


気絶していたスィが目覚める。


「あれは…山月さん…?」

目覚めたスィが真っ先に見たのは、山月が今まさに、トロールの拳を真正面から受ける姿だった。


(マズいです…マズいです…!)

(…このままじゃ、山月さんが…死んじゃいます…)


直感的に、山月の死を予測したスィは、自身の片腕を、ナイフの形に変え、もう片方の腕を切断する。


ースライム特有の、スライムにしかできない技である。


「山月さん!」


ーーーーーーー現在


トロールのパンチの威力が、オーラや圧で予測できる。


(ヤベェなぁ…これマジで死んだかも)


ー山月は死を直感する。


(あとは任せたぜ…皆……)


山月が諦めていた時。


「山月さん!」


スィの声が山月の耳に届く。


(スィちゃん!?意識あるの!?)

山月はそう戸惑っていると、自分の横に腕のようなものが投られることに気付く。


「握って!」


そう、山月はスィに言われ、咄嗟に握る。


スライムの腕だからか、水っぽく、上手く掴めていないようだった。


「ー弾けろ」


山月が握ったスィの腕が、握っている部分を除いて、一気に弾け飛ぶ。


「ー纏まれ」


弾け飛んだ水が、集合してゆき、盾のような形になる。


「スキル ールビー!」


盾のような形をした、水から、スィのスキルによってルビーへと変化される。


元々は、スィの腕なので、スィのスキルで操れる範疇であり、スィにしかできない技だ。


(すげぇ!これなら…これなら耐えられるんじゃないか!?)


そう山月が思ったのも束の間だった。


トロールの拳とルビーの盾がぶつかる。


ビキビキビキ…


巨大なルビーの盾は、全体に大きくヒビが入る。



(嘘だろ…ルビーだぜ…?ダイヤより硬い鉱石だぞ?…どんな衝撃だよ…!)


山月が絶句する。

同時に、自分自身の死が近い事に気付く山月。


(このままじゃ…死ぬ…ガキさん!まだかよ!早くしてくれ!)


そう山月が思った直後。

直後に宙に浮いている金棒が光りだす。


それを見てトロールは、汗と焦りの表情を見せる。

(マズい…!間に合わねぇ!)


自身の右腕に更に力を込める。


その瞬間。

トロールの求めていた結果が起きる。


ーーキンッ…

甲高い音とともにルビーの盾が割れたのだ。


(あっ、死んだ…)

覚悟を決め、目を瞑る山月。


そして、力強い拳はそのまま山月に衝突ー



ーーしなかったのだ。



既のところでトロールの拳が止まる。

文字通り目と鼻の先である。


山月がトロールの腕を見る。


トロール拳で視界が遮られてはいたが、理解できた。


トロールの腕に氷柱のようなものが無数に刺さっている。


「ブススライムがぁ…!」


トロールはスィの方を見て怒号を飛ばす。



「あなたに…あなたなんかに!山月さんを殺させるわけには!いきません!」


覚悟を決めたという表情で、堂々と言うスィ。


ーブォン…ブォン…ブォン


金棒が大きく音を発する。


トロールは直ぐに気付き、スィの方を見ていたトロールも再度金棒を狙う。



左手こそ無いが、切断された左腕で無理矢理にでも破壊しようとするトロール。


しかし、そこでも邪魔が入る。


「ー結晶よ!私達の邪魔をする悪しき者の動きを封ぜよ!」

「sinful restraint!(罪深い拘束!)」


宙に残っていた結晶達が集まり、やがて大きく美しい十字架が出来る。

十字架はトロールの腕を貫き、地面に刺さる。


「ミールちゃん!」


「スィさん!寝坊しちゃいました!」


「クソッタレ共がぁ!」


スィの攻撃も、ミールの攻撃も、トロール自身が金棒に注意が行き油断していたから出来たことであった。

不注意からきた偶然を、二人はタイミングよく掴み。

離さなかったのだ。


ーブォンブォンブォン


再度怒りを顕にするトロール。

しかし、金棒の音が早くなり、悠長な時間がないと気付く。

焦ったのか、ミールの拘束を、自身の左腕が引き千切れてでも、無理やり突破する。


「嘘でしょ!?」 「嘘だろ!?」


スィとミール、山月の驚く声が聞こえる。


「俺の勝ちだぁぁぁぁ!」


そう大声で宣言したトロールだが、何か強い力で左腕が後ろへと引っ張られる。


トロールは不意に左腕を見る。


「…!」


驚いた表情をするトロール。


それもそのはずだ。


腕に蜘蛛の糸が、ビッシリと張り付き、蜘蛛の糸が長く繋がって、自身の行動を妨害していたのだ。


蜘蛛の糸で繋がった、糸の先にはモカがいた。


「死に損ないがぁ!」


「死に損ないでも…こんくらいは…出来んだぜ…」


しかし、トロールにとっては“たかが”蜘蛛の糸。

一瞬の拘束に過ぎない。


トロールは、それでも拘束を力尽くで無理やり破り、再度金棒に攻撃しようとする。


(ようやくだ…!ようやく勝てる!あと少しで!力の勝利が…!)


勝ちを目の前にし、歓喜するトロール。


(俺もここまでか…短いような…長い人生だったな…)


山月は、そう諦める。


が、


(皆…ナイスだ……そろそろだ…そろそろ…これが僕の…僕なりの…最後の抗い方だ…!)


ライトがニヤリッと笑う。



「…うっ!」

「あぁぁぁ!」


トロールが一瞬、無くなった片腕を抑え怯む。


(魔酔の切れる時間だ……!)


それと同時に、光が更に強く輝く金棒。


ーブォン………


金棒からの音が止む。


「時間だ…!」

       「ーライコウ!」


(終わった………)


絶望の表情をして膝から崩れ落ちるトロール。


「グォォォォォォォ!」


大声で叫ぶ四足歩行の猛獣が、金棒を伝い、崩れ落ちているトロールに直撃する。


攻撃は以外にも無音で、何も起こっていないようだった。


しかし、その無音なる攻撃とは裏腹に、トロールはその場で倒れ込み気絶する。


だが、1秒もしないうちにトロールは目覚める。


「はっ…ハハッ!」

「何だぁ?こんなもんなのかよ!ライコウって技はよ!拍子抜けだぜ!」


大笑いするトロール。


「早すぎる…!」


餓鬼さんが驚いたような表情をする。

それを見て、全員が負けを確信する。


「貴様ら…よくも散々この俺様をいたぶってくれたな…」

「貴様らの血肉全てを…!」

「晩飯にしてや…」


「うるせぇ…」


「グッ…!」


ウーさんの、大きくも冷静な声と共にトロールの言葉は遮られ、同時に苦悶の表情を浮かべるトロール。


「闘牛!」


気付けば、ウーさんの姿はなくトロールの腹に大きな穴が空いていた。


ーミチミチミチ…


トロールの筋肉が破れる音。


「一閃!」


      ーーーー闘牛一閃ーーーー


ウーさんがそう叫ぶと、トロールの体から勢いよくウーさんが出てくる。



「勝負あり…だな」



ーーーーーライト視点


「やったぁぁぁ!」

トロールが倒れた姿を見て、一斉に皆が喜ぶ。


そして、互いに、互いを褒め称えたり、この勝利を喜んだり、互いに憎まれ口を叩いたりする。




「ウー…遅すぎだ」

「負けたかと思ったぞ」


「うるせぇな…時間がかかるんだな」


「昔は貯めなんか、ほぼいらなかっただろ…老けたな…」


「お前もな!ライコウの起動時間…長くなり過ぎだ!」


ウーさんと餓鬼さんが喧嘩始めかけるとミールがそれ止める。


「まぁまぁお二人共…」

止めつつも、ミールはモカに方を貸しながら労う。

「モカ、お疲れ様」


「ありがと姉ちゃん」


スィは、倒れている山月に手を貸す。


「大丈夫ですか?」

「山月さん」


「あぁ、スィちゃん!マジありがとう!」

「死んだかと思ったわ!」


「山月さんに死んでもらっては困りますからね」


ドヤ顔しながらいうミール。


「えっ…やべぇどうしよ、俺、ミールちゃんのこと好きになっちまった…」


「あっ、それだけは本当に勘弁してください」


「えっ!」

「フラれたんだけど!ショック!」


「フッ…」


こんな光景を見て僕は微笑む。


「よし!皆!」


僕は皆に話かけようとする。

皆僕の方を見る。


「次はメルクだ、こんな状態だが…こんな状態だからこそ気を引き締めて…」


そう言いかけた途端。


皆の顔が強張り、殺気立つ。


僕の後ろに、“強い気配”がする。


僕は、不意に後ろを向く。

そして、僕自身も殺気立つ。


「やぁ、ライト御一行」


「メルク…!」


「ルーロは…死んだか…残念だ」

「それにしてもどうした?まるで…鳩が豆鉄砲食らったような顔をして」

「まぁいい…さて、殺し合いを始めようか」


そう言うメルクを前に、山月が話す。


「おいおいおい、ゲームクリアしたばっかだぜ?」

「今までのパターン的によ?休憩を…」


そう言いかけた途端、メルクは大笑いをする。


「ハッハハッ!貴様ら!なにか一つ大きな勘違いをしているな」

「あれは、あくまで貴様らを選別するためのテストに過ぎん」


「テスト?」


「あぁ…まぁ、私からすれば余興だな」

「貴様らが、私に殺される程強い者たちかどうか…貴様らが、私に殺される程でもない弱さなのであれば…ゲームの途中で死ぬからな」


「じゃあ、選別できたってわけだ…だったらよこんな今弱っている俺等倒すよりも、万全の俺等倒したほうが…お前も良いんじゃないか?」

「それでこそ、王と名乗れるんじゃないか?」


「うーん…それも勘違いだな…」

「弱っている者をいたぶっている時こそ、真に…何よりも!楽しいものなのだ!」

「それに、私の障壁となる、私と同等か、それ以上の強さを持つ者達が、弱っている内に倒すのは…当然ではないか?」

「いつも思っていたのだ…」

「物語などで、弱っている勇者を何故魔王は倒さずに、休憩する時間を与えるのは何故なのか…とな」

「つまり、あのゲームは…」

「私からすれば余興であり、貴様らからすれば試練なのだ」


「…」


一同が絶句する。

この体力で無理もない。

トロールの強さからして、現魔王の幹部の力からは本物だ。


「あぁ、それとも…称えてほしかったのかな?」

「おめでとう!ブラボー!congratulations!」

「さて、褒め称えてやったところで…そろそろ始めようか」


そう言うと、メルクは指パッチンをする。

そして、この空間にあった全ての壁が外側に倒れ、まるで宮殿の庭のような場所へと作り変わる。


「…皆、戦う準備を…!」


僕が意を決し、剣を抜く。


「はい!」


「あぁ」


「任せといてください!」


「準備万端です」


「え…死ぬじゃん…嫌なんですけど」


「まぁまぁ兄貴、一緒に死のうぜ」


「えー…まぁ、じゃあ良いか」

「やってやろうぜ!」


「俺も準備できてるぞ!」


全員が覚悟を決めた表情をする。

「よし…皆行くぞ!」


「…さぁ、本当の《殺し合いの》始まりだ…!」




(トロールは結構好きです…いや、はい…現実逃避してもしょうがないてすね…はい、期限過ぎてます…すみません…本当に…ちょっとしばらく月1の投稿になりそうです。申し訳ありません。月末付近の日曜日投稿になります。本当に申し訳ありません。)

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