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魔王討伐  作者: 甘党辛好
38/45

父と息子

「あぢぃ…」


「モカ、水飲むか?」



「うん…」


いつもの元気のないモカ、それもそのハズだ。

僕とミール、モカが銃兄弟達と戦った後、スィ達と合流し、治療を受けた。

次のステージに進む扉が2つあったので、メンバーを4対3に分けて、次のステージへと向かった。


四人の方は、じゃんけんで決めた結果、僕、スィ、ミール、モカチームと、山月、ウーさん、餓鬼さんチームになった。

次のステージへの扉を開けると、とてつもない熱気が僕らを襲う。


次のステージは、砂漠だった。


ーーー1時間前


「…すげぇ!全部砂だ!」


「砂漠…と、言われる土地でしょうか?」


「そうだな…」


「ライト様!」


「どうした?スィ」


「本が落ちてます!」


「本?」


僕は、スィの言う“本”に駆け寄り拾い上げ中身を見てみる。


「…書いてあることは…扉を見つけろって事と、後は…扉までのルートが書かれてるな」


「え!じゃあだいぶ簡単じゃないか!?」


「…ライト様…書いてあるルートが嘘の可能性は?」


「あり得るが…少なからず今はこの情報以外無いからな…信用せざるおえないよ」


「立ち往生もできませんしね…」


「あぁ…さて、不安感はあるが行くしか無い」


「そうですね…水も貴重なのでちょっとずつ飲みながら進みましょう」


ーーーー現在


「姉ちゃん、水飲むか?」


「えぇ…そうするわ」


「スィも飲んだほうが良いぞ」


「……ありがとうございます…」


かれこれ2時間近くは歩いている。

魔法で、方角を出し、本に書いてあるルート通りに今のところ進んでいる。

ちなみに…考えたくはないが…


「ライト様…やっぱりその本に書いてあるルート嘘じゃ…」


「あぁ…だが、メルクはわざわざゲームをしようと僕らに持ちかけたんだ…そんな奴がこんな所で下らない嘘を付くとは思えん」

「それに、これは僕の勘だが…あいつのようなやつは自分で敵のトドメを刺したいハズだ…だから…多分…恐らくこのルートが間違ってるとは思えない」


「そうですね…でも、これだけ何も無いと…ミールちゃんの言うことも理解できます」


「あぁ…だが信じて進むしか無い」


魔法を使い方角を見る。


「次は…北に1時間…」


ーーーー


「そういえば、スィ様は種族的にこの気温は大丈夫なのですか?」


「まだしばらくは大丈夫です」

「スライムは体の殆どが水分ですけど…体の表面の膜のような物があるので体内の水分は保たれるんです」

「まぁ、と言っても…体内の90%以上が水分でできている事実は変わらないので…倒れるのは皆さんより早いですけどね」


どこか誇らしげに、そして、冗談交じりに話すスィ。


(…スィが倒れない内にゴールま着ければいいが…)


ーーーーウーさんチーム


「ただでさえ暑いのに、こんなむさ苦しい奴らと歩くとか…溜まったもんじゃねぇよ」


それを聞いたウーさんとガキさんはニヤリと笑い、互いにアイコンタクトを取る。


「…そう言うなよ山月」


「そうだぞ山月」


「寄るな寄るな…おい、待て本当に…暑い!暑いって!汗クセェ!」



ーー


「…なぁペース早くないか?」


「あぁ、砂漠地帯だからな…早く抜け出したい」


「俺等の場合、このぐらいのペースであれば休憩をする回数も最小に抑え、この場所から脱出できる」


「…パワー系すぎるだろ」


「ん?また悪口か?」


「あぁ…ごめんなさいもう近寄らないで下さい…僕が悪かっです…」


「…冗談はさておき、さっき置いてた本のルートも魔術で調べたが…嘘ではないようだ」


「太陽があそこだから、あっちに真っ直ぐ進めばルート通りだろう」


「…ウーさん魔術使えんの?」


「あぁ、意外か?」


「うん、正直な」


「そうか、ちなみにライト様も使えるぞ」


「じゃあ、ルートの事もあっちは心配いらなそうか」


「いや、ライト様は戦闘向きの魔術ばかり覚えているから、こういう器用な魔術は覚えないことが多い」


「あいつ、そういうところ抜けてんなぁ」


「あぁ、帰ったら、こんなことが起きても大丈夫なように絶対教えるさ」


「おぉ、ウーさんやる気じゃんか」

「…ん?てことは…あいつらこの本のルートが嘘かもしれない不安にかられながら、歩いてんのか?」


「そうなるな…」


「マズくないか?」


「あぁ」


「あっちは、ライトやモカみたいに早めのペースで歩ける奴らもいるが、残り2人は体鍛えてない組だぞ」

「それに…スィちゃんは、膜だが皮だかに守られてるとはいえ、体の90%以上が水分だ…これ…ヤバくないか?」


「…その通りだ、だが俺等は進むしか無い」


「あいつ等を信じて進むしか、今はできないからな」


「…それもそうだな、すまんな」


「いや、大丈夫だ」


「よし、少し休憩にしよう」


「あぁ」


ーーーーーーーライト達チーム


「よく頑張ったな…スィ」


「エヘヘッ…」


僕達は現在、休憩をしていた。

本のルート的には相当数歩いて、本のルートが本当であるならば、そろそろゴールまで半分といった所であった。


「あ!スィ姉ズルい!俺もライト様に膝枕されたいぞ!」


「もう、モカ!そんなにテンション上げて、後で歩いてる途中に倒れても知らないよ」


「あ、姉ちゃん!またそういう事言う!だからが…」


「だから…なに?」


「…ごめん」


お姉ちゃんって怖いな


ーーー


「さて、そろそろ休憩やめて歩くのを再開しよう」


「はい」


立ち上がり、荷物を持ち歩き始めようとする。


「スィ…大丈夫か?」


「はい…大丈夫です!すぐ行きます!」

「先に行っててください」


「そうか…また休憩したかったらいつでも言ってくれ」


「はい!ありがとうございます!」


ーーースィ視点


「次のルートは、西に…」


皆さんが、私より少し前で次のルートで話し合ってますね。

早くいかなくては……


あ…れ……?


なんか…目眩が…


皆さんの…声が…頭に…響きます…

何故…でしょう…か……?


ーーーー


ドサッ


何かが倒れる音がする。


「………!」

「スィ!」


後ろを振り向くと、スィが倒れており、すぐにスィのもとまで向かう。


「ライト様!スィ様は…大丈夫なのでしょうか?」


「…あぁ、今は命に別状はないが…熱中症だ……水を飲ませてやってくれ」


「はい!」


「モカ!僕の代わりにスィの荷物を頼む」

先程まで持っていた、スィの荷物をモカに預ける。


「うん…分かった!」


「anima locus…」


大きめの丸く緑がかった空間が出来る。


「ミール、水は飲ませたか?」


「はい!」


「ありがとう…スィ、すまないが少し揺れるぞ」


スィの体を持ち上げ、出来あったが空間にいれる。


そうすると、スィの顔色は段々ともとに戻っていき、最終的にはスヤスヤと寝始めた。


それを確認すると、空間から繋がっている、管のようなものを、僕の腰付近にくっつける。


「ありがとう二人共、スィはしばらくは大丈夫だと思う」


「あの…ライト様、それは?」


「あぁ、魂の部屋という魔法で…僕の体力魔力を大幅に消費し続ける代わりに、その入った生物に適した環境をこの空間内で作り出すんだ」


「すごい…そんな魔法もあるんですね」


「あぁ、これは…自分で作ったんだ…もしかしたら必要になるかもって」


「すげぇなライト様」


「ありがとうモカ…さ、まだ折り返し地点が早めにゴールまで向かおう」


ーーーー数時間後


「あ…っちぃ…」


「大丈夫か?モカ…」


「水…ほしい」


「モカ…飲め」


「それ…ライト様の分じゃ…」


「いや、僕はまだ大丈夫だ」

「それと、僕の独断で決めるのも何だが、スィは今こんな状態だ、スィの分の水もミールかモカが代わりに飲んでくれ」


「…分かりました」


「スィ様がいる空間の中は…」


「あぁ、保湿されて水分も自動的に補給される」


ーーーモカ視点


「成る程…ではありがたく頂戴します…」


「うん、そうして……」



あれ?ライト様の声が遠くなってく。なんでだ?


……何も聞こえない…………。


視界もボヤけてきた…。


………


ーーー


「モカ!」


「モカッ!」


モカは今はまでの疲労から倒れてしまった。


スィにした同様の手順で、新たな空間を作り出し、モカも空間にいれ、モカの入っている空間と繋がっている管を腰辺りに貼り付ける。


ーーーー更に、1時間後


「…マズいな」


「どうしましたか?」


「嵐が…来てる…」


「本当ですか!?」


「あぁ………ミール、魔法で壁を作り出せるか?」


「はい!」


「僕も…魔力はもうほぼ無いが、妖力があるから土の壁を作り出すよ」



「はい……」


壁を作った途端にミールも倒れてしまう。


「ミール!」


ミールに関して言えば、魔力の底がつき、限界が来てしまったようだ。


これ以上、この魔法を使うと……。


しかし、使わざる終えない。


「anima locus」


ーーー


ライトは、砂漠の中に居て、やってはいけないことをしてしまったのだ。

それは、砂漠にて砂嵐が起こっている最中に、歩いてしまうという事。


通常、砂嵐が起こった場合、テントなどを使い自身の周りを多い砂嵐を耐えることが先決だが、ライトは妖力で壁を作り、少し休憩した後に歩き始めたのだ。


しかし、ライト自身も、この砂嵐の中、歩いてしまうのは自殺行為も一緒だ、と”先程までは“考えていた。


だが、考えが変わったのだ。


何故変わったのか?


簡単な話だ。


不安感だ。


ライトは、自身の感情の内からくる不安感に駆られ、臆してしまい、歩き始めたのだ。


砂嵐が起きた場合、何日まで続き、いつ終わるか、それは当事者達には分からない。

ましてや、こんな経験をしたことないような人間達、生物達では予測するなど、不可能に近いだろう。


この砂漠が自然の物なのか、はたまたメルク達によって作られた物なのか定かではないが、メルク達によって作られた土地なのであれば、もしかしたら砂嵐は永遠に続き、終わらない可能性がある。

自然の物の場合でも、何日で終わるかわからない。

このまま、砂嵐が終わるのを待っていてはこの世界の崩壊が始まる。

いつ崩壊が始まるのかすら分からない。

また、仲間たちのこともある。

スィやミール、モカが倒れていて、まともな治療魔法が掛けれず、最悪の場合死ぬ可能性がある。


そういった様々な可能性を加味していった結果、ライトの、この先に起こる不安感は増してゆき、ライトの判断能力はどんどんダメになっていった。


結果、ライトは砂嵐の中を歩くという愚行に走ったのだ。


ーーーー


一体何時間歩いただろうか?


もう時間もわからない。


いつまでこの砂嵐は続くのだろうか?


喉が渇いた。


ーーーー


眠くなってきた。


あぁ…瞼が重い。


ーーーー


ドサッ…



ライトは倒れた。



ーーーー山月、ウーさん、餓鬼さん視点


「おい…嘘だろ!砂嵐だぞ!」


「マズいな…」


「そうだな…」


ウーさんとガキさんは、その場で考え込む。


不照りは至って冷静であったが、経験の無い山月だけは、とてつもなく焦っていた。


「…歩くか」


「え!?」

「正気かよ!」


「あぁ、正気だ」


「砂嵐だぞ?」

「真っ直ぐ歩こうとしても、方位喪失して真っ直ぐに歩くことすらままならねぇのに…まじで言ってんのか?」


「あぁ、“マジ”だ」


「…嘘だろ」


「ここから真っ直ぐ行けば…ちょうどゴール付近に着く」


「だから!真っ直ぐにすら歩ける訳ねぇって!」


「いや、歩けるさ」


「……埒が明かねぇ…ウーさん!あんたからも餓鬼さんに言ってやってくれ!」


山月がウーさんに頼み込もうとすると、ウーさんは目を瞑り、片手を前にかざし、なにかの呪文を詠唱する。


「…一族に伝わりし精霊よ…我は、一族の生き残りである…我が力を持って、我らに正しき道を示せ」




「…久しいな」


ウーさんが詠唱を終えると、綺麗で高い声が聞こえ、ウーさんは、かざしていた片手を地につける。


次の瞬間、地面から牛の幻影のような物が現れ、真っ直ぐに進んでいく。

あまりにきれいな幻影だったためか、山月は見惚れてしまう。


その青白く、綺麗で、綺羅びやかな…正しく精霊は、真っすぐ歩いた後に消えてしまう。


だが、消えたと同時に砂漠には真っ直ぐな線ができており、砂嵐の砂もそこを避けているように線を避けて落ちていた。


「…これで真っ直ぐ行けるだろう?」


ウーさんは、山月に、どうだ!といいたそうな表情を浮かべる。


「…マジかよ…すっげ…」


呆気にとられる山付きをよそに、ウーさんが餓鬼さんに話しかける。


「餓鬼…任せたぞ」


「あぁ」



ウーさんは、自身の武器に魔法をまとわせ、力任せに投げる。


ドサッ…


地面に武器が突き刺さったと思うと、周囲の砂が大音量の爆音と共に立ち上り、まるで壁のようになりながら地へと落ちていく。


「防壁砂岩」


餓鬼が、その瞬間に妖術をかけたのか、落ちてきていた砂が壁のように固くなり、止まる。

そして、真っ直ぐな線を庇うように2つの壁出来る。


「よし、いくぞ」

そう言うと、餓鬼さんとウーさんはその壁の中を、線に沿って歩き始める。


その様子を見ていた山月は呆気にとられながらも、餓鬼達に着いていく。


「…あぁ、すんげぇなぁ…」


口をあんぐり開けながら。


ーーー

しばらく歩いた後に、線が少し曲がっており、その曲がった線の先に、洞穴があった。


「すぐそこだが…山月、なにか目を隠せるものはあるか?」


「…え、無いけど」


その言葉を聞いた途端、ウーさんは少しニヤリッとし、餓鬼さんを見つめ言う。


「…しょうがないな」


餓鬼さんは、それを聞き、ハァ〜とため息をしながら、目を一周させ、嫌々な態度を取りながら山月に言う。


「山月…ん」


山月に手を差し出す餓鬼さん。


「…なに?これ」


「早くしろ」


「…?」


「手を繋いで歩くと言っているんだ!」


「…マジ?」


「あぁ…目を瞑って歩くからな…逸れんように手を繋ぐしかない」


「分かった…」


餓鬼さんと、山月は手を繋ぎ歩くのを再開する。


「なんか…好きになっちゃったかも…」


いつもの軽口を山月が発すると、ウーさんが大笑いする。


「ハッハッハ!確かに!お似合いだぞ!」


そうウーさんに冷やかされ、よほど頭にきたのか山月を睨み、餓鬼さんは言う。


「…山月、次何か話たら…ただじゃおかんぞ…」


すると山付きは怯えた声で言う。


「…はい」



ーーーーーライトチーム 視点


「…ト……イト………ライト」


(誰かが…僕を呼んでいる?)


誰かの僕を呼ぶ声で目が少しずつ開く。


「………?」


「起きるんだ…ライト」


この声…父さん……?

でも、そんな訳……


「さぁ行こう、ライト…」


父さんに似た声の主の方を見る。


「………ッ!」


僕は目を疑った。

だって…声の方には…


     父さんが立っていたのだから。



「父……さん………?」



父さんは、僕が気付いたのを確認して、後を向き歩き始めた。


その時、途中で振り向き僕に微笑き、「ついてこい」と、言わんばかりの雰囲気があるような気がした。


「待ってよ!父さん!」


僕も急いで追いつこうとするが…。


立ち上がる瞬間、“何か”が足に当たる。


「スィ…ミール、モカ…」


僕は、倒れている仲間達と、父さんが向かっていった方角を、何度も顔を動かし見比べ、迷ってしまう。


(もう、魔力もない…あの魔法も使えないし………)


ーーー


ザッ…ザザッ………


僕は、スィをおんぶし、ミールとモカの後襟を片手でそれぞれ持ち、引きずりながら父さんの後を追う。



「ごめんな…ミール……モカ………靴を汚してしまって……後で精一杯謝るから…………だから………もう少しの辛抱だから…………三人共…………耐えてくれ…………こんな不甲斐ないリーダーでごめんって………謝らせてくれ………」


僕は、こんな言葉を何度も発しながら歩き続ける。


ーーーー


数時間歩いただろうか?

はたまた数分か…もう時間の感覚もない。

唇はカサカサになり、口の中もパサパサだ。

目は虚ろで、父さんの後を追ってはいるが、こちらの道が本当に正しいのかすら分からない。


ただ、不思議と不安感は無かった。


ーーーー


父さんの気配が、横へとずれたように感じる。


ずれた箇所まで行き、横を見る。


「着いた………」


そこは恐らく、本の中のゴールと思われる、洞穴。


その洞穴に父さんが向かっていくのが見える。



僕は、「もう少し…もう少しだ……!」と、自身を鼓舞しながら歩き、洞穴の中で移動する。





ーーー


洞穴の中に、スィ、ミール、モカを寝かせ、洞穴の奥へと向けった父さんを追う。


奥に行くと左側に曲がり角がある。

父さんは、そこを通ったように感じる。


ーーー


角を曲がると、行き止まりで、父さんがこちらを見て微笑み、話しかけてきた。


「おめでとう、ライト」

「よく…頑張ったな」


その言葉を聞き、僕は涙を流す。


「うん……」


振り絞って出した、その返事はとても情けない声へと変化していた。


「……ライト、お前の目的はまだまだ先にある…このゲームも、この先ある戦闘も、沢山の出来事も…全てお前を成長させてくれる出来事になる」

「だから…お前が決めた信念のために…目的の為に…前を向いて真っ直ぐ歩き成長していくんだ……」


「うん………」



「……ライト、お前は思い出さなくちゃいけない事がある」


(思い出さなくちゃいけない事?)

「…父さん…それって………」


僕は、その父さんの言う「思い出さなくちゃいけない事」を聞こうとした瞬間、父さんは消え始める。


それに父さんは気付き、僕を見て、また微笑む。


そして、後ろの壁を向き、何かを大声で言う。


すると、後ろの壁が開き始め、光が漏れる。



「じゃあな…ライト……また会おう」


父さんは、そう言い残すと、光の中へと消えていった。



「………父さん!!!!」



僕は、父さんの後をまた追おうとするが……。



ーーーーー



目が覚める。


「…っ!」



「大丈夫ですか?ライト様……」


真っ先に見えたスィの顔を見て、安心感が湧いてくる。


どうやら、スィは僕より早く目を覚まし、僕に膝枕をしてくれていたようだ。


そして、同時に、先程までのことが夢だったと気付く。


「……あ、あぁ、少し…夢を見ててな」


「いっや〜、驚いたぜ〜」


山月の声が聞こえる。


「山月!?」


驚いて、起き上がり、山付きの声がした方を見る。


「よっ!ライト!いい夢見れたか?」

「いや〜、驚いたよ、まさか同じ場所だったとは」


「あぁ」


呆気にとられながらも、山月の事を確認し、後にウーさんと餓鬼さんも居ることがわかる。

ウーさんと、餓鬼さん、どちらともミールとモカの治療をしていた。


「ウーさんも…餓鬼さんも…?」


「おぉ、起きたかライト」


「良かった〜ライト様!」


ミールとモカも、僕が起きたことに気付く。


「あぁ!ライト様!起きたんですね!良かったです!」


「うん!心配したぞ!」


ーーー


みんなで積もる話をしていると、山月が気になることを話す。


「にしても、ライト…ここの洞穴に着いたとき、お前凄かったぜ?」


「?」


「父さん…父さん…って小声で話しながら、この洞穴に着いて、すぐ3人置いて奥の方に行ったんだよ」


「…それで?」


「すぐに俺等も追いかけたんだけどよ?そん時にゃ、お前は奥の曲がり角で倒れてやがったんだよ」


「…やはり夢だったのか……」



父さんのことが夢だとわかると、少しがっかりする。


しかし、ウーさんが僕の「夢」という発言が気になったのか聞き返してくる。


「夢…?」

「…ライト様、どんな夢を見てらっしゃったんですか?」


「あぁ、実は…」


僕はウーさん、そして皆に話始める。


ーーー


「恐らくそれは…亡霊…もしくは幻覚では無いでしょうか?」


「んー、あの状況下だと幻覚のほうがありそうだけどな」


「…あぁ、僕もそう思うよ」


「まぁ、亡霊にしろ、幻覚にしろ、いずれにしてもライト様達が、ライト様の父上に助けられてのは事実ですから…あの人に感謝しときましょう」


「うん…そうするよ」


みんなで話していると、餓鬼さんが咳払いをし、皆の注目を集めた所で、今後の事を話始める。


「んで?この後どうするよ」


「…ここも行き止まりだしなぁ、なんか他にゴールがあるとか?」


「いや、でもそうでしょうか?本を見た感じここがゴールなのでは?」


皆が、「うーん」と考えている中、一つ事を思い出す。


「皆…支度をしてついてきてくれ」


ーーーーー


先程、父さんが消えてしまった曲がり角まで来る。



「おい、ここは行き止まりだぞ?」


「あぁ…だが、父さんは最後…ここの行き止まりなにか話しかけていたんだ」


「…もしかして、隠し扉的なことか!?」


そう目を光らせたいる山月。


「確か……開けゴマ」


「おいおい、シンドバッドじゃねぇんだから…」


そう山月が呆れたような声を出す。

しかし、扉は開かれる。



「嘘だろ…今どきシンドバッドでもマシな合言葉作るぞ」


山月が呆気にとられていることをよそに、今度はウーさんとモカが目を輝かせている。


「すげぇ!!」


「おぉ!かっこいいな!ロマンがある!」


それを見て、僕は笑う。


「…よし!みんな行こうか」





(えぇ、遅い遅い、すみません。次回は3月31日です)

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