人と魔王
「ハァ…ハァ……いった…ん………ここでぇ…休憩しよ…う」
モカを降ろし、直ぐ様モカの応急処置を行う。
「ライト様…大丈夫ですか?」
「いやぁ…流石にモカ持ちながらだと……鍛錬が足りないな…ははっ」
「すみません…弟が…」
「いや、しょうがない…二人はよくやってくれた、僕がもう少しやれてれば…」
「成る程…では…ライト様、その…」
「ん?」
「なぜ、扉の前近くの路地裏で止まったんですか?」
ミールの疑問はもっともだ、だがここで止まらなくてはいけない理由がある。
「…奴らはスナイパーだ、それにまだ僕らと違って体力もあるだろう…少なからず兄の方は、まだ余裕がある」
「脱出への扉は大きな通を真っすぐ行った先だ…流石にそんな真っ直ぐなら、後ろから追いつかれて…スナイパーで撃たれるのが関の山だ」
「…成る程、だからこそここで決着をつけてしまおう、という訳ですね」
「あぁ、だが別に作戦なく止まったわけじゃない」
「と、いうと…なにか作戦が?」
「あぁ、僕の魔力、体力…ミールの状況からして…申し訳ない事だがモカにも動いてもらう」
「よしっ!」
モカの応急処置が終わる。
「もう少しモカを寝かせてから、モカを起こして作戦会議をする…それまではミールも休んどいてくれ」
「分かりました」
ーーーーーー
「ライト様の方は、どうでした?」
ミールの話に、僕は首を横に振る。
「…全然駄目だった」
「なんなら………死にかけた」
僕は切断され、体力の関係上再生できなかった左腕を見せながら言う。
「だからこそ…力の差を理解できたんだ」
「そう…ですか」
「あぁ…だが死にかけたところにみんなの顔を思い出したんだ…出血多量で死ぬ間際に…皆の顔がな…」
「…そこで思い出したんだ…僕の目的を、僕の目的は最初から最後まで、祖父の仇と祖父の遺志を継ぐこと」
「流石です」
「ありがとう、だからこそここで負ける訳にはいかない」
「しかし…どうやって勝つのでしょうか?」
「あぁ、そのことで話がある」
「…?」
「力で駄目なら…”ここ“を使わないとな」
僕は頭を指差す。
ーーーーー
「弟よ、あの獣人二人組はどうだった?」
「…強かったよ…特にあの男の子の方がね」
「ほう…そうか」
「兄貴の方は?」
「…まぁまぁだな、まだ魔王には勝てんだろ」
「その前に”あいつ“に勝てるかわからんしなぁ」
「まぁ、そうだな」
「メルクには…どうだろうか、奴は性格と態度こそ駄目だが…実力だけは確かだからな」
銃兄弟、弟は鼻で笑う。
「確かに」
「…問題は、ライトとあの獣人の…」
「男の方?」
「いや、女の方だ」
「え!?」
「潜在能力だけで言えば間違いなく女の方…ミールとかいう獣人の方が強い」
「後は…会ってないから知らん」
「兄貴にそこまで言わせるとは…いやはや僕もまだまだな様で」
「…お前は元々まだまだ半人前だ」
「え!さっきは褒めてくれてたのに!」
「……フッ…着いたぞ」
「その、急に空気変えんのやめてくんない?」
「…作戦通り、頼んだぞ」
「あぁ〜はいはい…任せといてよ兄貴、頑張ることだけは一人前だからさ」
「フッ…そうか」
ーーーー
そろそろだな
「…モカ、起きろぉ〜」
手で、モカの頬を優しく叩く
「ん…?んん…」
モカには悪いが、ここで一旦起きてもらう。
「それじゃぁ、作戦を話す」
「さ…くせ…ん?」
「あぁ、作戦」
「さ…くへん…さくせん?作戦!」
ようやく意識が覚醒したらしい。
「じゃあ、モカも目を覚ましたから…改めて作戦会議をしよう」
「はい!」
「姉ちゃん…水無い?」
ーーーーーーーーー30分後ー銃兄弟視点
「…弟よ…そっちはどうだ?」
「順調だよ」
「了解…ではこちらも作戦通りに行くぞ」
「うん、頼んだよ兄貴」
(何処から来る…?)
(…後ろから殺気!)
ローブを被った二人が後ろの路地裏から出てくる。
(なぜ、ローブ…いや、そうか)
銃兄弟、兄はすぐに理解できた。
(俺に、どちらがライトがわからなくさせているのか)
たった1秒考えている間にも、ローブを被った1人が、銃兄弟、兄の懐に来る。
(はやい…!)
直ぐ様、足を使い懐に入ってきた奴の顔面を蹴り、カウンターを入れる。
カウンターを入れれたやつは受け身を取りながらも、後ろに退く。
この間2秒。
どちらも瞬発力、判断力が抜群と言える。
だが、その時見えたのだ。
(今懐に来たやつ…あれは…女獣人の服装をしていた)
(だが…)
前を向き、ローブを着た二人を見ようとする。
(1人…いない…!?)
(後ろか…っ!)
直ぐに腰元のナイフを抜き取り、後ろに回転する。
(やはり…)
刀を上から振り下ろされそうになるが、それをナイフで受け止める。
(安直すぎるな…連続して後ろをとるのは…あまりにも)
またも一種程、ローブから服装が見える。
服装はライトの物だった。
だが、銃兄弟、兄は動きですぐにわかっていた。
(やはりそうか…刀の力も弱い、安直さ…服装を変えても動きまでとっさに変えることは出来ん…このライトの服装をした人物は…恐らく…)
もう一人のローブの奴が、こちらに斬り掛かってくる。
それに気付き、銃兄弟、兄は先程まで鍔迫り合いをしていたやつの刀を力尽くで振り払い、向かってくる人物の刀にナイフを合わせる。
(やはり…!)
(これは…ライトだ!服装こそ違えど間違いなくライトの力と動き方だ)
銃兄弟、兄は弟に連絡するために後ろに引く。
だが、そんな隙も与えず、ローブの二人は同時にこちらに斬り掛かってくる。
しかし、そこは流石と言えるであろう銃兄弟、兄は二人の剣術を上手くナイフで捌き、対処していく。
その上、その上だ、敵二人の攻撃を華麗に捌きながら、耳に装着してある、小型無線機を使い弟に連絡する。
数々の戦場を潜り抜けた銃兄弟、兄だからこそ出来る芸当であろう。
「弟よ…ローブで隠してはいるが二人はそれぞれ、女獣人とライトだ」
「…成る程、了解」
「…左が女獣人、右がライトだと思うが…確証が欲しいな」
ライトと思われる人物の刀を勢いよく弾き返し、真後ろへと退く。
そして、懐からマグナムを出す。
破裂音と共に右にいた人物のローブ、頭上付近を掠る。
そして、右の人物の目元がローブから見える。
間違いない。
やはり服装を変えてはいるが、右の奴が…
ライトだ
「…弟よ、やはり右の奴がライトだ」
「了解!」
「では、後は…」 「うん、任せといて」
「作戦通りに!」 「作戦通りに!」
ーーーー一時間前、銃兄弟視点
「痛っ…!」
「我慢しろ…無茶しすぎだ」
「…あぁ、はいはい…そんなことより追わなくていいの?」
「いや、大丈夫だ」
「奴らも、俺等がスナイパーである以上、あんな一直線の大通りにある扉を真っ直ぐ行かんだろう」
「そうまぁ、兄貴がいいなら良いけど」
「…んで、作戦がある」
「作戦?」
「あぁ、お前は右側にある山から援護射撃してほしい」
「了解」
「俺は奴らと真っ向から勝負する」
「…了解」
「そして、何とか全員倒したら、ライト以外を殺す」
「弟よ、お前は…ライトを狙ってくれ」
「心臓に魔結晶がある…そこを狙うんだ」
「ライトを?」
「あぁ、だが…殺さなくて良い」
「何でだ?」
「…理由は2つだ」
「1つは、ライトのスキルの件だ。」
「ライトのスキルの発動条件は、恐らく気持ちが昂った時だろう…だが、まだわからん事も多い」
「もし、何かの理由でスキルが発動した場合、恐らく俺等は死ぬ」
「成る程?」
「それを抑制するために、詰め将棋をするんだ」
「ライトの魔結晶を狙っていれば、スキルが発動した瞬間に、心臓を打てば良い」
「それまでは、ライトの反逆精神を削ぎ落とす」
「ライトにお前の魔結晶を狙っていると伝え、獣人二人を殺せば、いくら奴でもどうする事もできないだろう」
「…ふ〜ん、でも最初っからライトを殺しとけば良くない?」
「そこで、もう一つの理由だ」
「なに?」
「もう一つの理由は…これは俺の考えだが、ライトと魔王を一対一で会わせたい」
「…マジで言ってんの?」
「あぁ、二人の意見を聞いたときに、俺は魔王の意見もライトの意見も理解できる」
「だからこそ、一対一で会わせて対談させる」
「俺は、血が流れず終わるならそれでいいんだ、なんなら、どんな戦いも血が流れず終わりたいんだ」
「だからこそ、その為にも、いっその事二人を会わせて話し合いをさせたいんだ」
「間違いなく殺し合いになるけど?」
「…だろうな、まぁそうなったらそうなったで面白いから良いだろう」
「…はぁ、やれやれ」
「まぁ、兄貴がしたいならそれに合わせるよ」
「ありがとうな」
「でも…フッ、笑えるよな、今まで何百人も殺してきたスナイパーが平和主義って」
「俺は元より平和主義だ」
「ふーん、そう」
「信じてないようだな…」
ニヤニヤしながら銃兄弟、弟は兄を見つめて言う。
「いやぁ?信じてますとも」
銃兄弟、兄はその言葉を聞き、弟の怪我をしたところを思いっきり叩く。
「痛っ!」
「…よし、治療も終わったし行こうか」
「うぅ…うん…」
「…そういえば兄貴、隠し事は良くないよ」
「何がだ?」
「自分が真っ向勝負したい理由ってさ…本当は…兄貴、滾ってるでしょ?」
「…お前本当に言ってんのか?」
「うん」
兄はニヤリと笑う。
「…あぁ!最高の気分だよ!」
ーーーーーーー現在、銃兄弟視点
S&W m500、銃兄弟、兄が拳銃の中で最も好いている銃。
世界一のマグナムである。
威力が余りに大きく、また銃自体も拳銃の中では一際大きい。
その為、欠点として衝撃があまりに大きく、両手で構えても慣れてない人間の場合、照準が定まらず、狙った物に当たらない等の射撃面での使いにくさ、また、肩が外れたりするなどの怪我面での危険性から、実践ではあまり使われない。
しかし、その銃を銃兄弟、兄は片手で使える。
何十、何百、何千、何万回と練習を重ね、そしてついには実践で他の銃と見劣りすることなく使えるまでに練度を重ねた。
そんな、最強の銃と凄腕の銃使いがいたらどうなるか…。
(また斬り掛かってくるか…)
銃兄弟、兄は攻撃を避け、ついには斬り掛かってきた女獣人の方の腹に風穴を当てる。
「ぐふっ………」
それを見たライトが、猛スピードでこちらに戦闘を仕掛ける。
銃兄弟、兄はその間に三発銃弾を撃つ
ライトが近づき、首元に刀が差し掛かった途端。
ライトの右肩が撃ち抜かれる。
あまりの痛さに、ライトは撃たれた腕を抑え、その場で膝から崩れ落ちる。
「普段は跳弾しても当たんないこともあるんだが…今日は、こいつも機嫌がいいらしい」
ーそんな最強の銃と凄腕の銃使いがいたらどうなるか?
最強である
(…はい、まぁね本当に、なんかね、もうね、これ投稿するとき涙流してます、不甲斐ねぇなって、しかも銃兄弟編終わるとか言いながら終わらないし、こりゃメスガキもざっこ〜言うとりますわ…流石にね、新年の抱負を一発目から破るやつが居るってびっくりですよね。僕です。本当に本当にすみません。一様、次回は書き終えてるので絶対大丈夫です。次回は一様2月23日です。これを過ぎたらもう僕の事は、ゴミ野郎と思って下さい。次でマジのガチで銃兄弟編は終わりです。)




