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魔王討伐  作者: 甘党辛好
34/45

銃兄弟 兄戦 下編

「まずは…左腕」


引き金を引く音ともに高い…しかし重い音が部屋に響き渡る。


「あぁ…ッ!」


痛い…苦しい。


「次に右腕」


…なんだ?


「次に…んー右足かな」


様々な疑問をもったが、すぐに理解できた。

先程まで苦しさや痛みは、あまりなかったが…恐らく体が…もう…認めてしまっているのだ。


ー僕の負けだと


「お次は、左足」


「頭」


「腹」


「…そして····」


奴の銃口が、僕の魔結晶のある胸元に向けられる。


「じゃあな…ライト」


引き金を引ききろうとする。


が…


ーーーーーーー銃兄弟 兄視点



「じゃあな…ライト」


俺は引き金を引ききろうとする。


だが、引き切る瞬間。

その瞬間に目の前に、なにか得体のしれない者がいることが分かった。

感じたのだ。

人間ではない、魔物でも無い。

それはまるで、光そのもの。

だが、その光は殺気で包まれている。


その得体のしれない物体から逃れようと、思わず身を後ろへと投げ出し避ける。


何が起きてる?


そう思った瞬間だった。


奴はライトの刀を持ち、こちらに斬り掛かってくる。


ナイフでいなそうとするが…。


「···間に合わない…!」


ナイフを取り出すまでの時間に、恐らく斬られてしまうと、察する。

ナイフを出して相手の攻撃をいなすまでの時間。

それらが到底間に合わない速度。

近接戦において、これ程までに速いく熟練した奴は…俺の人生の中でもトップレベルだ。

それこそ、あいつ…。


咄嗟に持っていた拳銃で、相手の刀に対応する。


…なんだ…これ…。


その力強さと技術。

奴と刀を交えた途端に分かる。

力量差が圧倒的だと理解できる。


俺の戦場での経験値なんて遥かに上回る強さ。


何が起きてるんだ?


こいつと、俺とでは天と地の差があることが丸わかりであった。


俺の戦場での経験値なんて無意味になるくらいの力量差。


(これは…間違いなく勝てない…ッ!)


拳銃が真っ二つに切れそうになる。

マズイ…このままだとッ!



直ぐに姿勢を低めにし、重心を下げる。

そして直ぐ様、やつの左頬向けて勢いよく殴る。


勢いよく奴は吹き飛んだ。

だが、間違いなくこんなので倒れるようなやつじゃない。

直ぐに次の銃を用意する。


何なんだあいつは、勝てる敵じ



宙を舞う視界。

気付けば、視界は天井を向いており、間違いなく僕の体は地面に寝転んでいる。

理解できたと同時に、尋常じゃない痛みが右頬を襲う。


だが、俺の頭はそんな痛みよりも一つの事しか考えていなかった。


ー逃げろ


直ぐに立ち上がる。

奴の方を向く。


奴は魔法の準備をしている。

なんだ、この魔法。

見たこともない魔法。

光りに包まれる。

その光は、神々しく綺麗でとてつもなく暖かそうな。

これじゃあ、まるで…天…。


その光に包まれそうになった瞬間。

意識が元に戻る。


ーーーーーーーライト視点


何が起こった、奴はいきなり僕から離れた。

そして、呆然としている。


…チャンスだ。


何が起きたかはわからないが、今ので勝機が出た。

まだ勝てる。


勝機を見出した僕は、すぐに体に開いた穴を再生しもとに戻す。


だが、恐らく…次の再生で僕は再生ができなくる。

体力的にも魔力的にも、そう感じる。


直ぐ様立ち上がり、地面に刺さった刀を抜く。



ーーーーー銃兄弟 兄視点


気が付けば、奴はいなかった。

だが、目の前にライトが居た。

そこで、俺はさっきのが幻覚だったと理解した。

俺が考え事をしていると、ライトがさっきのやつとまるっきり同じ動きをして、俺に斬り掛かる。

だが、俺は直ぐにナイフを取り出し、その攻撃に対抗する。


その時思ったのだ。


ライトの動きが遅く見える。


ははっ…そうか!

俺はまた一つ経験できたのか、成長できたのか!


右手でナイフを持ち奴の刀に対抗しながら、左手で拳銃を構える。


ライトが拳銃に気を取られ、明らかに刀を力を緩くする。

その確認した瞬間、俺はナイフを落とした。


そして、右手で奴の顔めがけて全力で殴った。


言ったろ?ライト。


…成長度ではお前の方が上かもしれないが、経験値では俺のが上だ!


ーーーーーライト視点


何が起きてる?


僕は…奴が違ったように見えた。

さっき、奴が呆然とした辺から”何か“が違うと分かった。

戦闘スタイルも、スピードも対応力も全てが違った。

まるでさっきまでの行動が、予測されてるかのように動いていた。


どうする?


考えている暇もなく。

奴は容赦することなく、僕に向けて銃を放った。


追撃だ。

間違いなく胸”付近“を狙っている。


何とか左に体を倒し、間一髪避ける。


(来いとでも言ってるのか?)


…であるならば。

であるならばだ、僕はあれをやるしか無い。


僕は床に転がった刀を再び握る。


刀を構え、奴に焦点を合わせる。


狙いはーー



ーーーーー銃兄弟 兄視点


奴が構えているのが見える。


(来いっ!来いよ!ライト!)


俺は嬉しくて仕方がなかった。


自身が経験できた喜びもそうだが、ライトと戦うことで間違いなく自分が成長できていると確信できたからだ。


………動いた!


ライトが刀を上に構え、一直線に向かってくる。


(…二度目だぞ?お前はさっきも同じことをしていた…いや、なにか狙いがあるのか?)


直ぐにナイフをやつの刀に合わせるように上に構える。


だが、奴は。

ライトは、直ぐに刀を下に下ろす。

ナイフが当たるか当たらないかギリギリの所で。


直ぐにフェイントだと、理解できた。



ーーーーライト視点


燕返し!



…ッ!?



このフェイントに奴の取った行動は、あまりに異常だった。


握ったのだ、刀を、刃を。


ーーーーー銃兄弟 兄視点


ライト、そうだよな。

お前みたいなやつが2回も、同じ行動と戦略を取ってくるはずがない。


だが、お前には実戦経験が足りてない。


刀や剣を振る時、力の強い部分と弱い部分がある。


丁度、力とスピードが出始める瞬間。

その瞬間であれば、手を傷つけることにはなるが、握れる。


勿論だが、これをすれば握っている左手は使えなくなる。

だが、死ぬことより、負けることよりも遥かにマシだ。



(この至近距離ならお前を…撃てる!)


ーーーーーライト視点


あぁ…だが、それでいい。


お前なら僕の攻撃を防ぐだろうと信じた。


お前と僕とでは、経験値も戦闘能力も天と地程の差がある。


だから、だから!


色んな詰み方を考えるしか無い。

色々なスタイルをお前に当てるしか無いんだ。


(この距離なら…!この距離なら、あの技が決められる…!)


ーーー絶対的王ノ威圧


魔王の血筋の者のみが使える。幻術の一種。



相手の本当に訴えかけ、一瞬だけだが恐怖させ、畏怖の対象にさせることで、相手を動かせなくする事の出来る技。



ーーーーー銃兄弟 兄視点


俺の本能が訴えかけてきてる。

危ういと。

瞬間、身がゾッとする。

動けない。

動けば死ぬ、と本能が言ってくる。


刹那、俺の顔面に奴の拳がクリーンヒットする。


だが、耐える。

この痛みに耐えれば絶対に…



ーーーライト視点


奴が倒れたのを確認し、距離を取る。


これを待っていた。


奴が倒れたことを狙って、僕は魔法の準備をする。


互いの出血量、僕の魔力量からして、ここしか無い。



僕は目を瞑る。

集中し、印を結びながら、魔力の流れを感じる。


ーーー銃兄弟 兄視点



気が付けば、奴と俺との距離に差があった。


どういうことだ?

なぜ引いたんだ?


答えはすぐに分かった。


部屋中の物質が粒子化して、奴の下まで行く。


そして、奴は鍵言葉(keySpell)を放った。


「木星!(jupiter!)」


奴の周りにあった、全ての粒子がとてつもないスピードで俺の所まで来て、俺を縛る。


拘束されたのだ。

粒子は瞬く間に硬くなり、まるで拘束具のような物になった。


ーーーーライト視点


この空間内の僕が認識している、全ての物質を粒子化させる魔法。


「…初めて見る魔法だな?」


「あぁ、オリジナルでね」


「これで…どうするんだ?首でも切るかい?」


「出来るなら…とっくとう…にやって…るさ」


「印も…限界そうだな」


「何から…何まで…分かってて…腹が立つ、よ」


この魔法は使用中、魔力を消費し続ける。

その為、今の魔力量では今後のことも考えると…ここまでになる。


正直…印を結び続けるので精一杯だ。




「四ノ奇…血…霧!」


血霧は、血液をミスト化し自由自在に操る技。

使い方は人それぞれだが…僕の使い方は一つだ。


奴の周りに、血霧を移動させる。


ーーーーー銃兄弟 兄視点


霧状化した血液が、俺の元までやってくる。

そして、その血液達は………信じられないかもしれないが…


鼻の中に入ってきたのだ


マズい…!何かが起こる…!


そう直感した。


すぐに息を止めるが、関係なく霧状の血液は俺の体内へと侵入してくる。


勿論、息を吐いても無駄だった。


全ての霧状の血液が、体内へ侵入し終え拘束が解ける。


途端に苦しくなり、倦怠感を催す。


だが、息はできる…動ける。


ーーーーライト視点


奴は銃を向けてくる。


「妖術…」


久々に使う。

…君だからこそ使うんだ。

やってやるよ。


お前に勝つために


地面に手を勢いよく叩きつけ、術印を敷く。


「妖術!死火!」


ーーーーー銃兄弟 兄視点


…妖術?

どういうことだ、何故魔神のお前が…妖術を…。


ボッ…


火が付く音がする。


だが、耳から聞こえたわけではない。


ーこれは…肺?


途端に熱く燃える。

両方の肺が、熱く燃え盛る。




痛い…熱い…苦しい…死ぬ…殺される…。







…生きているのか?

死んでるのか?



もうよく分からなかった。

だが、意識が朦朧とした中で、あいつの顔を思い出した。弟の顔だ。


「…あいつの最後の肉親として…兄として、お前が一人前になるまで俺が助けてやる」


そう誓ったのを思い出した。



同時に…奴の顔が俺の目に入った。


そうだったな、ライト。

お前に勝つと俺は決めてたんだ。

お前も俺に勝つために…ここまでやってんだろ?


じゃあ、俺も最後まで付き合ってやる。


兄としてあいつを護るためにも。

殺し屋として…お前を成長の踏み台にするのも…!


ーーーーーーーーーーライト視点


勝たなくてはいけない…コイツに。

皆を守るためにも、成長するためにも。


さっきの死火は、自身の操った物を燃やす妖術。

血霧を奴の肺に侵入させ、燃やした。


だが、この妖術の欠点は…殺しきれないということだ。

肺の隅々まで血霧を侵入させることは出来ない。

だからこそ、敵を半壊させることはできても…殺しきる事はできないのだ。


…じゃあ…後はトドメだ。


倒れた奴に刀を持って近付く。

もう、痛みは消えた。



ーーーライト視点ーーーーーーー銃兄弟 兄視点ーーー


             「近づいてこいライト!」 

「近づいてやる」


「お前を殺す」


              「全て計算の内だ!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



     ーお前の「負け」だぁぁぁぁぁぁ!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ハッ!」


(閃光弾…!)


視界が一切見えなくなる。



落ち着け…何かあるはずだ…殺気を感じ取れ。


カチャ。

銃の音…!


直ぐ様、銃を構える音がした方向を切る。





「お前の負けだ…ライト」


後ろを取られた。


「最後の最後で…お前は読み負けたんだよ」

「勝ちを焦ったな」



「あぁ…そう…みたいだな」


「銃の音はフェイクだよ」


頭に銃を突きつけられる。


「…勝ったつもりか?」


「…どういう意味だ?」


ー絶対的王ノ威圧


「…その技は、油断してるやつや実力差のあるやつにしか効かない」

「俺に、二度目が通用すると思うか?」


「いや、しないさ」

「最初っから…そんなのを狙ってた訳じゃない」


「3ノ不…執行官」

「その位置に居てくれて助かったよ」


生憎…僕の技はまだ未熟だ。

さっきの鳥籠にやつを封じ込めた際に、この技を使っていた。

未熟であればあるほど…動かすのに時間がかかる。

だが同時に…この時で良かった。


「…ッ!」


「死刑を…執行する…」


だが…未熟だからこそ動くまでも遅い…そして、動作自体も同様に遅い。


だからこそ…奴はこれを避けた。


が、奴は体制を崩し、うまく着地した後に崩れ落ちる。

その一連の動きを見て、奴自身の体力も…そして、僕自身の体力も、互いに限界だということがよく分かる。


だが、これで終わりだ。

奴が姿勢を崩した直後に僕は上級魔法の準備をする。


「…上級魔法…」


僕は、僕に残されている魔力で最後に出せる唯一の魔法を放とうとする。


「案外…あっけない終わり方だったな」


「…そうだな」

「これで…お前ら“兄弟”は終わりだ」


「………お前…何か勘違いしてないか?」


「何がだ?」


「俺の弟が、あの二人に勝てないとでも思ってるのか?」


「…あの二人は強い、まだ僕からしても未熟だとは思うが…強さは間違いない、だからこそお前の弟がどれだけ強くても、二人で協力すれば勝てるさ」


「ハッ…やはり勘違いしているな」

「ライト…お前は俺なんかより遥かに強い…でもな、あいつは…俺の弟はお前を超えてもっと!遥かに強いんだよ…それこそ!魔王と同等の程に!」


「…ハッタリはやめとけ」


「だが…それは奴が一人前になった時の話だ」


ズン。


鈍い痛みが、僕の魔法を構えている左手首を貫く。


何が起きたか分からなかった。


僕は左手首を押さえ、倒れ込む。


「ライト…お前が倒れたときの弾…あれは魔法がかけられてんだよ」

「撃った後…三分間ほど止まるんだ」


「…魔法も不発か…」

完全に負けた

「どうすんだ?僕を殺すのか?」


「いや…あー、弟が心配でな…」


奴の跳弾した無数の弾が、奴の後ろにある壁を貫く。


「あいつが一人前になるまでは、兄として俺が見守っとかなくちゃだからな…」


同時に壁も崩壊する。

奴は壁が崩壊して、できた穴から身を後ろから投げ出す。



「ライト…これで生きてたらこの試合はドローだ」


やつの腹から、先程奴が出していた、ガトリングガンが見える。


「じゃーな」


そのガトリングガンは…僕の体の隅々を撃ち抜いた。







(一週間も遅くなってしまいすみません!次回は24日に投稿です!)


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