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魔王討伐  作者: 甘党辛好
22/45

冒険と始まり

「....というわけなんだけど」

「聞いてる?」


山月の説明そっちのけで皆が皆話している。


「小学校の教室かよ、ここ」

山月は、はぁ~とため息をつき「やれやれ」といったジェスチャーをする。


「ライト様!この鎧凄いっすね!」


「だろ!?ウーさんもそう思うよな!」

僕とウーさんは、ギルド入会の申請中に山月が買ってきてくれた鎧を、目を輝かせながら二人で褒め合う。


「いやぁ、ライト....俺はダサいと思うぞ?」

「....なんかぁ、そのぉ....ライトには似合わんな」


餓鬼さんは、僕にこの鎧が似合わないと否定しつつも鎧自体には興味津々のようだ。


「俺は....」

モカは餓鬼さんへの憧れ、僕への忠誠心もありどちらに付くか迷っている様子だ。


「見てくださいよ!セリナさん!」

スィとミールに関しては、セリナさんにギルドカードを見せ、自慢している。


「ほぅ、これがギルドカードか」

「魔力が....B+、と書かれているが、これは相当いいのでは?」


「そうなんですよ!ライト様がAなので相当いいはずです!」


「おい、お前ら....」

山月が、皆を静止させようと試みる。


「流石スィさん!」


止まる様子は無さそうだ。


「....はぁ」

山月は、再度ため息を付く。


新しく、興奮することや嬉しい事を体験した時には、家族同然の人や、仲間に話したくなるのは当然のことで、僕自身も、山月には悪いがその一人だった。


――――1時間経過


山月は、まだ話し続ける僕らをじっと見つめる。


―――――2時間経過


山月は、机をトントンし始める。


――――――3時間けい....


「お前ら!」

山月が大声をだし、皆が山月の方を向く。

「いつまで、話してんだ、もうここ来てから3時間たってんですけど!?」


「....あぁ....その山月....ごめんな?」


「あぁ、いや気にするな....じゃねぇからな?」

「お前らの気持ちも十分わかるぜ?」

「正直、人間として....人間界を楽しかったって言ってるような訳だし」

「....?」

「あぁ、なんだ人間界の事褒めてくれてんのか、じゃあもっと話していいぞ」


「あぁ、いいんだ」


「うん、全然」


山月は、安定のボケをかまし、表情は怒りというよりも、子犬のような表情をしていた。

山月がこの表情をしているときは大抵ボケている時で、出合って日が浅い僕ですら、なんとなく分かった。


「あぁ、そう....まぁ、その山月の言いたいこともわかる、だからこそ....そろそろ真面目に話そう」


「確かに、そうですね」

僕の発言にウーさんが同意すると、皆静かにしだし、山月の方に視線を向ける。


「....おけー」

「まぁじゃあ、さっき言おうとしてた事話すぜ?」


「頼んだ」


「まず、この依頼は....」


―――――――


依頼主 国


依頼 周辺地域の異常な魔力の調査、原因究明、原因の問題解決


内容 最近、依頼場所の地域にて魔力が不安定になる現象が多発しており、この地域の周辺の魔物も凶暴化している。このままでは近隣にある村と一般市民に危害が及ぶ可能性があり、この現象がなぜ起こるのか調査をしてほしい。

また、この調査をする際、何かしらの原因が分かった場合、この依頼を受けた冒険者達のみで原因の問題解決を行ってほしい。


条件 グループであれば、ランクは問わない


成功報酬 50000ゴールドもしくは、F~Dまでは2個上のランクに昇格。

それ以上は一段階昇格。


             依頼期間 無期限


―――――――――――――


「....てなわけだ」

山月は、円盤状の木製の机の上に依頼書を起きながら説明している。


「....妙だな」

セリナさんは、とてつもなく怪しんでいる。


「おっ、やっぱり?」

「まぁ、よぉ?セリナさんが疑うのも理解できんすよね」

「アモネネ....あぁ、知ってるかもだけど俺の同居人の奴な....あいつも、罠じゃないか?って疑ってたんすよね」

「因みに、どこが怪しいとかありますか?」


「まず、成功報酬だろ?50000ゴールドといえば....人間界だと向こう10年は安泰に暮らせる額だ」

「国とはいえ、こんな依頼に掛ける額か?」


「確かに、その通り」

「ただ、それ程までに重要なんじゃないか?」


「いや、そんな重要ならギルドのクエスト版に貼らず、SランクやらAランクの冒険者達に任せればいい」


「確かに」


「それに、もう一つの成功報酬もそうだ、どちらも貰えるならまだしも、どちらかしか貰えない....」

「人間界での安泰した10年とたかだか2ランク上げるの、人間がどちらを選ぶかなんて明確だろ?」


「....ま、セリナお姉たまの言う通り、この依頼には穴抜けが多い」

「それに、この魔力不安定の件だって、たまに起きるんだけど....」

「こんな大金は積まないし、何より、魔力異常が生じたって、たかが知れてるんだよな」


「こんな問題視されるような魔力異常は無いってことか?」


「そう!正解!」

「セリナお姉たまもさっき言ってたが」

「そもそも、そんな国が問題視するような魔力異常なら、上級冒険者の頼むとか、国自体で動けばいい。」

「わざわざ俺ら低ランクの奴らにチャンスを与えるような依頼にするか?ってことだ」



「ところで山月?」

セリナさんが笑顔で、それでいて闇を感じるような表情をする。

顔は笑っているけど

心は笑ってないタイプの奴。


「ん?なんですかい?セリナお姉たま」


「その、セリナお姉たまってのはなんだ?」


「いやぁ、喜ばれるかなと思いやして」


「次言ったらどうなるか分かっているよな?」


思わず、山月の方をみて首を振る。

山月も空に気付く。


「ふっ、分かってますよセリナさん」


「まぁ、それなら....」


「ところでセリナお姉たまは....」

「あっ」


セリナさんと山月が見つめ合う。


「すぅっーーーーー」

「その....セリナさん?すみませんでした」


―――――――――――


「大丈夫か?山月?」

ミールがモカに看病されている山月を心配する。


「ふっ、ミールよ、男の傷は勲章よ....」


「言ってることは立派でも、他人の気持ちは分からないんですね」


「いやいや、ミールちゃん?」

「彼女は、人じゃなくてまじ....じゃなくて魔人なんだぜ?」

「だから、彼女の気持ちが分からなくても....」

相変わらずの冗談を言う山月だが、冗談を言い終える前にミールの表情を確認する。


「ごめんなさい....」


「年下に怒られないでください」


「はい、肝に銘じておきます....」


「まぁ、元々あなたへの好感度はマイナスの数値なので別に今更なんですけど」


「....え、じゃあなにしてもいいってこと!?」


「....そういうところが嫌いです」


「うっうぅ....」


山月は、ミールに軽くあしらわれた後、山月は「はっ!」とした表情をしながら机を叩く。


「そんなことより!」


「なんだ?」

山月の渾身の真面目そうな顔をみて、察する。



「さっきの話しに戻るんだけどよ....」

「つまりは、こんな穴抜けかつ、罠でしかないような依頼を受けるためには、その罠に対抗できるような実力者達が必要だ」


「思ったのだが....受けないってことは出来ないのか?」


「セリナの姐さんの言う通り、受けないってことも出来たんだが」


あっ、セリナの姐さんはいいんだ。


「正直な話、これは俺が悪いんが....もう受けちまったんだよな」

「ギルドは、一度受けると、クエストに一回でも行かないと辞退が出来ないんだよな」

「”とりあえず受けよう“って奴の防止のためだ」


「ただ、これに関しては、山月が悪いんじゃなくて、僕と決めた結果だから責めないでやってほしい」


「....ありがとう、ライト」

「まぁ、ライトの行っていた魔力異常による魔王城に行くための狭間?みたいなのも妨害されてるし、報酬も良い、罠だとしても丁度良いと思ってな」


「成る程」


「....てなわけで」

先程まで神妙な面持ちだった山月がニヤリと笑う。


「ん?」


「何か思い付いたのか?」


「あぁ、こんな99%罠みてぇな依頼だ、さっきも言ったが俺とライト、ミールちゃん、モカ君、スィさん以外の実力者が必要だ」


「つまり?」


「ウーさんと餓鬼さんにも来てもらいたい」

そう言うと、山月はウーさんと餓鬼さんの方をみる。


「....俺らは構いやしないないが....」

僕の方をみるウーさん。

「あぁ、僕としてもそちらの方が嬉しい、ウーさんが心配してんのは、ここの事か?」


「....まぁ、はい」


「ほぅ?ウー、貴様、この私が拠点の一つや二つ守れないとでも?」

といいながら不適な笑みを浮かべるセリナさん、その表情は正しく魔王の幹部と言っても過言ではない。


「ち、ぢげぇぞ?」

「ほら、最近は人間のレベルも上がってるし、もし冒険者が大量に押し掛けてきたら大変だろ?」

「セリナはつえぇけど、やっぱり心配をだな....」


「....はぁ、一様貴様より長く生きているし、魔法だけでみれば私の方が上だ」

「心配しなくても....」

セリナさんは僕の方をみる。

「ライト様にはお前が必要だ、お前にしか頼めない、分かったな?」

ウーさんの両肩を掴み、真っ直ぐした目をしながら見つめて言うセリナさん。


「餓鬼、お前もだぞ?」


「あぁ、分かってるよ、こん中でお前の強さをよく知っているのはウーと俺だ」


「ふっ、そうか」


「任せたぞ」


「あぁ、当たり前だ」


――――――


「てなわけで、ウーさんと餓鬼さんも来ていただけるということで....」


「行くのは3日後くらいで良いかい?」


「あぁ、構わないが....」


「なんだ?ライト」


「そっちは大丈夫なのか?冒険者じゃない方を連れていくのは?」


「あぁ、ランク指定があったら冒険者じゃなくちゃ駄目なんだが....今回のはグループのみって書かれてるからな」

「グループであれば魔人だろうがなんだろうが良いんだよ」


「....ありなのか?」


「安心しろ、グレーゾーンだ」


「じゃあ、OUTじゃないか?」


「いや、ブラックゾーンに突入して黒保留来てないからセーフ」


「どういう意味だ?」


「あぁ、こっちの世界の話だから流しておいてくれ、といっても俺も年齢的に行ったことは無いんだけどな」


「....まぁ、大丈夫なら良いんだが」


「要は、大丈夫ってことだ」

「それに、罠だろうが、難しいクエストだろうが、グレーゾーンだろうが、クリアしちまえばこっちの門だし」

「冒険者でもないのに、グループのみの時に参加する奴も平気でいるからな、まぁ、大丈夫だろ」


「....分かった....」


「分かってくれたなら良かった」

「まぁ、俺は一旦アモネネのところに帰るよ」

そう言うと帰りの支度を始める山月。


「じゃあ3日後また会おう!」


「あぁ、じゃあな」


――――――――――――


「てなわけで、行くか!」

「ハァ....ハァ....」


「待て待て待て!アモネネさんが来ることは聞いてないんだが」


山月は僕のツッコミを聞いた後、純粋無垢な子供のような顔をして首を傾げている。

「まむゅ?」


アモネネさんの方は以前として息を切らしており、深呼吸をしようとする。



「はにゃ?の....ハァ....派生版を作る....ハァ....な!....ハァ....」

「ハァ....ハァ....」


「なぁ、アモネネ、何分待てば良い?」


アモネネさんは、山月にそう聞かれると、人差し指を出し、「1分待ってほしい」とジェスチャーする。


―――

1分経過した辺りで、背負ってきたであろう大きめのリュックサックから、水の入っているであろう入れ物の蓋を開け飲む。


飲み終わり、その後は深呼吸を開始する。


「ハァ....フゥ....」

「お初にお目にかかります、私はアモネネと言います」

自己紹介を簡単に終わらすと、すぐに本題入るアモネネさん。

「早速で悪いのですが、どうしてもそちらの方に会いたくて....」

アモネネさんは、セリナさんを指差し言う。


「....私か?」


「はい」

「この辺は、科学者なんて者はなかなか居なくて」

「そんな中、このアホからライト君のお仲間に、凄い科学者が居ると聞いて、是非あってみたいと....思ったのですが」

「このアホが、どうやら伝え忘れたみたいで」

アモネネさんは山月の頬を指でグリグリしながら言う。


「ひょうゆうこほなんえす」(そういうことなんです)


「悪いと思ってるか?」


「ひゃい」


セリナさんは僕の方をチラッとみてくる。


「僕は構はないです」


「じゃあ、私もokだ」

「ライト達を見送ったら、着いてこい」


「はい!」


「じゃあ、皆準備は終ったな?」


「はい!準備万端です!お守りも持ちました!」


「よし、向かうか!」



――――――


セリナさんと、アモネネさんに見送られた後、僕らは暫く歩いた。

各々が、色々な話をしている。

例えば山月とスィは雑談をしている。


「そういえばスィちゃんの、首にかけてるのは?」


「お守りです!この前の人間界に行ったときに買いました!」


「へぇ、中には何が胚ってんの?」


「内緒です!あ....でも、ヒントはセリナさんから頂いたものです」


「なる程ね、わからん」


ミールとモカは餓鬼さんと話している。

「師匠と森を歩いていると、あの頃の事を思い出します!」


「はっはっ!そうだな!」


「といっても、モカ?それは2ヶ月ぐらいしか立ってないんですよ?」


「え、そうなのか?師匠!」


「まぁ、それぐらいだろうな」


「時の流れはあっという間だな~」

呆けた顔をしながらミールは言う。


「なに、お爺ちゃんみたいなこといってるの」

「私よりも年下なんだからしっかりしないと」


ミールは冗談をモカに言う。

ただ、純粋なモカは真に受ける。

「姉ちゃんみたいに、しっかりは出来ないよ~!」

それを聞いて餓鬼さんは、また笑う。


一方では、僕とウーさんが地図をにらめっこしていた。


「ここの道かな?」


「ん~?前来た時は、この道を通ったんですか?」


「いえ、丁度切り株がさっきあった場所からは、予測した地図しか書けてなかったんですよ....山月に聞きますか」


「それがベストだと思います」


「山月ー!」


「おっ、なんだ?」


「ここの地図なんだが....こっちであってたか?」


「....あぁ、合ってる」

「この点は....ライトの言っていた狭間ってことか?」


「あぁ、だいたい一回の遠征で3ヵ所ぐらいの地点予測できるんだが....」

僕は、ある地点を指差し山月に話す。


「予測地点が大量にあるな」


「あぁ、だからおかしいんだ」


「?」

「狭間の予測地点が大量にあるってことは....この辺りってことじゃないのか?」



「いや、それは無いんだ」

「こんな近かったら、魔王の手下にもう見つかってるはずだ」

「何十年も見つからずに、放置されるはずがない」


「確かに」


「つまりは、この地点に何かあるんだ」

「しかもだ、今回の以来と丁度、地点が合致する。」


「うーん、まぁ、どう考えてもトラップだよな」


「まぁ、その話に関しては?この前もしたからいいんだが....」

僕は、何となく地図を上に掲げる。

「?」


「どうした」


「....いやまぁ、道順があってるなら良かった」

「このまま進もう」

「と、いうことでここまで来ましたが....」

「ライト師匠!これは罠でしょうか?」


目的地には木でできた丸いテーブルと木の椅子。

手前には看板。

テーブルの上には皿あり、皿の中に豆が入ってある。

見るからにトラップだ。

この森の中に到底作り出されたと思えないほどの異質な空間。


「山月さんに言うけど、俺は罠だと思うぞ?」

純粋なモカですら理解できるほどの異質さだ。


「俺も同意見だ、モカ隊員!」

「しかも看板には、ご丁寧に「豆を埋めろ!」って書いてあるぜ?」


「僕が埋めるよ」

山月の肩に手を置き、そう言う。

ここはリーダーとして、身を挺すべきだと考えた。

それに、僕の見解が正しいとしたら....


真っ直ぐ、皿に向かって行く。


テーブの前までは安全にこれて、皿に手をかざす。


やっぱり....


「どうしたライト?」


「....山月ごめんな」

「テレポート!」

ジャンプをしながら、テレポートを放つ。


テレポートは、直前に触った物(者)と自身の場所を入れ換える。

入れ換わるものは、触った物であれば、人でも物でも何でもいい。

距離は最大で2メートル。

魔力の消費量は、距離とテレポートした物(者)の質量によって決まる。

下級魔法の部類で、転移魔法の基本のキのような魔法。


「嘘だろ!ライト!おい!」

「え、ちょっと待って!ねぇ!前が光だした!」


山月は光に包まれる。


「あっ!光に包まれた!光に...あっ!ヤバい!くる!きちゃう!」


山月は完全に光に包まれ...そして....


「....え?」


山月は防御体勢を念のため取っていたが、誰もテレポート等して居なかった。


「やっぱりか....」


「え?え?」


僕は、困惑している山月を尻目に皿の豆を空に上げ太陽に照らす。


「....やっぱり....」


「何か分かったんですか!?ライト様!」


「いや、分かっててもアウトやて」


「あぁ、ウーさん」


「いや、ライト君?あぁ、ウーさんじゃないよ?」

山月が僕の肩を掴む。


「ごめんなさい」

「山月の肩にあったゴミをテレポートさせたんだ」

「さっき肩に手を乗せたときに」

「....ドッキリだったんだけど驚いてくれた?」


「いや、え?」

「あー....うんうん、驚いたよ?そりゃもう」

「いや、でもさやって良いことと悪いことが....」


山月が言い終える前に、僕は山月に袋を渡す。


ジャリンっと金属音のする袋だ。


山月はそれを受け取ると....


「....まぁ、でもさ」

「ドッキリしたいときもあるよな、仲間だし友達だし、親友だし、分かるよ分かる」

「これからも、お互い仲良く行こうぜ!助けてあいさ」


「あぁ、山月」


僕と山月は、互いに手を握り、熱き友情の握手を交わす。


「おぉ!感動しました!俺は今泣いています!」


ウーさんが、握手をしている僕らに、その巨体で抱きつく。


―――――――


「良いですか?モカ、あれは男同士の悪ふざけですので、絶対あぁいうことはやっちゃいけませんよ?」


「ねぇーちゃん、でもさ楽しそうだぜ?」


「ダメです!」

「まったく....悪ふざけも大概にしてください...スィさんからも何か言ってください」


「感動じまじだ....」


「いや、何で、お前涙流して感動しているんだ?」


「だってぇ....」


――――――――


「....で?悪ふざけは一旦置いといて、分かったことは?」


「あぁ、この豆なんだが....」

「これは....スキルで作られたものだ」


「スキルで?」


「あぁ、自然生成でもなく、魔法でもなく....スキルで作られたものだ」


「まぁ、仮にスキルで生成されたものだとして....それがどうしたってんだ?」


「...それは....」


僕は空を指差す。


「空に答えがある」


「空に?」


「空に」


「マジ?」


「マジ」


「....ウーさん、ライトを一回家に帰そう」


「そうだな、俺も心配だ」


「いや、本当だって」

「....さっき、地図を上に掲げて太陽に何となく照らしたとき....気付いたんだ」

「山月」


「ん?」


「今回の依頼の調査内容は?」


「魔力の異常現象の調査及び、解決」

僕はそれを聞くと頷き、話を進める。


「確かに、魔力の異常現象はこの辺りで感じていたが、前もいったが少し落ち着かなくなるぐらいだ」


「そわそわする感じって言ってたもんな」


「あぁ」

「その、そわそわは確かにあった」

「でもな、腕を空に向けたとき、そのそわそわが強くなった」


「どんな感じ....」


山月が言い終える前にミールが腕を上げる。


「なにもありま...」


ミールは直ぐに腕を下ろす。


「...どうした?ミール」

隣にいた餓鬼さんが心配そうに、ミールに声をかける。


「ライト様...やっぱり凄いです」


「...てことは?」


「ライト様の言う通りでした」

「腕を上に挙げた途端...胸がざわめいて、多少ですが、吐き気のようなものがしました...」



「...そして、この豆」

「この豆を...」

僕は、豆を一つまみし、上から下に落とす。


豆は空中でほんの一瞬だけ、落ちる瞬間だけ止まったのだ。


「気のせいか?」

「今止まったよな?」


「山月」


「ん?」


「さっきのスキルの話だが」

「関係あるんだよ」


僕は山月に魔法で作り出した物とスキルで作り出したものの違いを話す。


「魔法で作り出した物は、純度100%の魔力で作られたものだ」

「しかし、スキルはそうじゃない」

「スキルは謂わば、2、30%の魔力に自身の邪魔な魔力...何といえば言いかは分からないが、強いて言うなら、自身の個性を使い、残りを補って作ったものだ」


「うーん?…つまりは手作り料理と冷凍食品ってことか?」


でた、山月の分かりにくい例え。

しかし、僕らが分からないだけで恐らく、あちらの世界の人は伝わるのだろう。


「まぁ、山月がその例えに納得しているなら文句無いんじゃないか?」



「オッケー!」



「…まぁ」

「そうやって作ったものは」

「繋がるんだ、スキルで作ったものは、その人間の個性が入っている」


「その個性のせいで、製作者と反対側に持っていこうとすると一瞬だけ止まるんだ」


「…成る程?つまり止まったってことは…?」


「魔力異常の理由と、この豆を作ったやつが空…雲の上にいる」


「マジで?」


「マジで」


「それが本当だとしたら、無理じゃないか?」

餓鬼さんが、冷静に言う。


「…なぁ、山月」

「僕はこんな話を思い出したんだ」


「どんな話だよ?」


「...ジャックと豆の木ってのがそっちの世界の話にあるだろ?」


「あっ!私もそれ知って....」


ドン!


何かを貫くような音と共に地響きがする。


さっき、僕が落とした豆の様子がおかしい。



「...まさか?」



豆から芽が生え、それはみるみる大きく育っていく。


そして、育った芽は机を裏返す。


机の上の皿の中にあった豆も土に埋まる。


それらの豆もだんだん成長していく。


―――――――――

「おい嘘だろ?」


「…」


「正直...驚きすぎて声もでないな」


それらの芽は成長していき絡み合い、それは大きな空に繋がる1本の木になっていた。


「…ライト様…あそこ」


「…登れそうだな」


「皆...登るぞ」


「はい!」


僕らは、木に生えていた葉を登ろうとする。


「…本気で行く気か?」


ただ一人を除いて

「こんな罠満載に、引っ掛かって死ぬ気か!?」

「…また日を改めればいい、少なからず今じゃねぇ」


僕は山月に手を差しのべる


「でも、行くって決めたろ?」


山月はそれを聞いて、目と首を回し呆れたような顔をした後


「…ついてくよ」


といって僕の手を取ってくれた。


―――――――


途中色々なことがあった。


「おい!ライトどうしよ」

「ぼくちんさ、高所恐怖症なんだ」


葉っぱの上で固まる山月。

その時、風が吹く。

きかも、大きめだ。


「あぁ~、ライト風が吹いてきちゃった」

「ばいばい、ライト」


「待って早まるな、山月!」


―――――――



色々なことがあったが、何とか到着した。


頂上だ。


「なぁ、これ着いたけど」

「どこに降りれ良いんだ?」


「よっと」

「そりゃ雲しかないだろ」


ウーさんは、軽々と木から雲へと飛び移る。


「…えー、良くできるな」


「まぁ、乗れるって確証は無かったがな」


「え、多分いつか死ぬで?」


「我が生涯に一片の悔い無し」


「本当は?」


「いや、物語とかだと…よくあるだろ?」


「え、それ俺ら言っても大丈夫なやつ?」



ウーさんが先陣を切ってくれたお掛けで、皆が雲に乗り移る。


乗り移った段階で、各々が話し始める。


「なぁ、ライト様」


ミール僕の袖を引いて話しかけてくる。


「どうした?」


「木が無くなっていってんですけど」


「え!?」

山月が僕以上に反応し、雲の端から下を見るわ


「ガチじゃん…」


「ミールとモカと山月には丁度教えられて良い機会だ」


「スキルで作ったものについてさっき話したと思うが、それ以外にもスキルで作ったものは大抵、一回で壊れてしまうという特徴がある」

「魔法にも耐久度があるが、スキルよりは遥かに高い」


「…つまり?」


「さっきの木は、使用してしまったため、無くなったって事だ」


「え、ごめん、何でそんな平然と自分達の退路が絶たれたことを自慢気に話してんの?この人」


「ライト様…天然…」


「ライト様…天然なとこも…ん゛~!ギャンワイイイイィィィィィィィ、とか思ってないですよね?スィさん」


「え?い、いや別に、おっ、思ってないですけど」


「ライト!」


餓鬼さんに呼ばれる。

僕は餓鬼さんの方に直ぐ駆け寄る。



「どうしました!餓鬼さん」


「俺は…夢でも見ているのか?」


「え、何を…」


餓鬼さんが指差した方向に目を向ける。


「こ…れは…」


「今まで色んなものを見てきたが…なんだこれは?」


「まるで、黄金の……………


           城だ」


(大変長らくお待たせいたしました!22話です!前回から約2ヶ月経っているらしく…正直書くのが億劫になってた訳では無いんですけどね!本当ですよ!本当!まぁ、こんな冗談を言ってしまうほどお待たせいたしました!本当にすみません!次回からは自身のペースに合わせ、予め告知していくようにしていきます!早速ですが!一週間程おやすみします!次は7月16日の1時に投稿させていただきます!お待たせいたしました皆様大変申し訳ございませんでした!本当に!いや、本当にすみません!また、魔王討伐を1から応援して頂ければ幸いです。)

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