ギルドとランク
「それでは、獣人2名、人1名、隷魔1名で宜しかったでしょうか?」
「はい」
「では、保証人様はこちらに記入を」
「了解しました」
僕らは、現在ギルドに来ている。
ギルドといっても、町の外れにある小さなギルドではあるが....
ここ以外に、ギルド登録できるギルドがないらしい。
―――数時間前
「後....2、3時間位で着くな」
山月にそう告げられる。
「分かった」
「なぁ、ライト?」
「ん?どうした」
「ギルドに行くのはいいんだけどよ....」
「あぁ」
「その....見た目、どうするんだ?」
確かに、それを考えていなかった。
ミールとモカは良いにしても、スィと僕は言い訳が出来ない。
「....どうする?」
「え....どうするんだよ」
正直、僕に関しては魔法で誤魔化せる。
しかし、問題はスィだ。
「....なんか魔法とかねぇのか?」
「僕に関しては、変換魔法で魔力を鎧に変えられるが....」
「スィちゃんか....」
「安心してください!」
「お!スィちゃん何か策が?」
「私も変換魔法が使えます!」
「....oh....TENNEN」
山月が頭を片手で抱えながら言う。
「?どういう意味ですか?」
「スィも変換魔法が使えるのか?」
「はい!使えますよ!」
「じゃあ、解くに問題なしだ....」
「え、お前ら本当に気付いてないの?」
「....何の事だ?」
「山月さん、俺は分かってるぞ」
「よし!いけ犬コロ、モカ!」
「スィ姉ちゃんは....足がない!」
「正解!通ってよし!」
「わーい!」
あ、確かに
「その顔は、分かってなかったのか?」
「....」
「え、待ってミールちゃんもか?」
どうやらミールも理解できてなかったらしい。
「え、怖いんだけどお前ら、本当に」
「山月さん、俺も寒気がしてきたよ」
モカは山月のノリに乗る。
「モカ君もそう思う?」
「え、怖いしさ....ライトじゃなくて俺の元に来ね?」
「あ、それは遠慮しておく」
ノリにこそ乗っていたが、冷静ではあったらしい。
「あぁ、流石にそこの分別はあるのか」
「....じゃあ、どうしましょうか?」
「うーん....」
「なぁ、あくまでも提案なんだが....」
「魔法で従隸魔法ってあったよな?」
「あれって、魔法をかけられたやつは印を付けられるよな?」
「....つまり?」
――――――――――――
「浮かねぇ顔してんじゃねぇか」
山月は僕をイジリに来る。
「そりゃ、そうだろ」
「偽とはいえ、仲間に....スィに隸魔の紋章を付けたんだから」
僕らは、山月の作戦を実行していた。
隸魔魔法で出来る印を模造した物をスィに付けたのだ。
隸魔魔法とは、言わば相手を奴隷にする魔法だ。
魔力差があったり、相手が魔法を放つ術者に精神的に負けを認めている場合に発動できる。
ただ、隸魔魔法は魔物限定の奴隷化する魔法で、人間を奴隷化する場合は従隸魔法を使う。
どちらの魔法でも、結果的に奴隷と化した場合は身体の胸の部分に印が刻まれる。
その印は一定であるため、今回はその印だけを利用させてもらった。
つまり、模造したのだ。
模造品で、偽物だからといって、正直仲間に付けるというのは良い気持ちはしない。
「....はい、ではご確認がとれましたので、軽い検査を致します」
「こちらについてきてください」
受付の女性に僕ら四人はついていく。
「俺はここで待ってるわー」
山月が後ろ側で大声を出しながら言ってくる。
もう一つ、問題がある。
僕の着ている鎧の問題だ。
これは変換魔法といい、魔力を変換し、魔力を防具や武器に変える魔法だ。
魔力が高ければ高いほど防具では固さが増し、武器では切れ味などが違う。
だが、この魔法は魔力の消費がとてつもなく激しい。
魔力を変換するという性質上、常に自身の魔力の一部を装備に変え外に放出していることになる。
僕の魔力では、持って一時間程だ。
だからこそ、このギルド登録をしている間に、山月が僕に合う装備を探しに行くと話し合った。
「わかったー!」
山月は、僕の装備を買いにギルドの外に出ていく。
――――
「では、こちらにて三つ程の検査をして頂きます」
「三つですか?」
「はい!1つは水晶に手を当てて魔力がどれくらいかを検査します」
「二つ目は、特別な部屋で自身の好きな魔法を打って頂きます」
「三つ目は....」
受付の女性はポケットに手をいれる。
「こちらですね」
ポケットから細長い、棒状の....例えるなら注射器に似た物を取り出す。
「....これは....なんですか?」
「....ご存知ないのですか?」
(マズい....人間なら誰でも、これを知らないとマズイ感じか?)
だとしたら....バレたか?
血の気が引く感覚になる。
バレてしまえば、偽物とはいえ、隷従の魔法の印を書かれているスィの努力が無駄になる。
きっと、とてつもなく嫌な思いをしているのに....
ただでさえ、強かったスィへの罪悪感が尚更高くなる。
「....すみません、なにぶん、とても辺鄙な地の出身なもので....」
「成る程....でしたらご説明致しますね」
(胸を撫で下ろす)
「これは、スキルチェッカーという物です」
「スキルチェッカー!?」
「成る程....」
見たことはなかった為に、何なのか分からなかったが....
目の前の代物がスキルチェッカーだということを知り、話には聞いているため少し驚いた。
「....あ、やっぱり聞いたことあります?」
「あぁ、はい!話には....」
「でも、話には聞いてるだけなので使用方法を念のため説明してほしいです。」
「分かりました」
「このスキルチェッカーの先端にある尖っている部分を胸の中央付近に当て、後ろのボタンを押します」
「そして、中央にある魔結晶で、その人のスキルがどういうものかを見るという仕組みです」
「スキルがない場合は、魔結晶の部分は白いままになります」
「昔は、違う使い方もされていたらしいですが....今となっては、その昔の使い方も忘れ去られ、スキルを判定する機械になりました」
「成る程....分かりました」
「では、スキルチェッカーの説明も終えたので、一つ目の魔力検査に移ります」
――――――――
「全ての検査が終了しました」
「こちらギルドカードになります!再発行はできませんので大事にお使いください」
「了解しました」
「皆様の冒険者ランクはFから始まります」
「こちらのランクは、どの冒険者の人に関わらず、Fランクから始まります、その為気にしないでください」
「沢山、依頼をこなしたり、ギルドクエストをこなすと、それに見合った給料とランク昇格がありますので、どんどん依頼に挑んでください!」
「ただ最初はFランクからですので、Fランクのクエストのみの受注が可能となります」
「分かりました」
「例外として、チーム、クランの場合はその際に最もランクの高い人のクエストに合わせることもできます」
「ご説明は以上になります!お疲れさまでした!」
――――――――――
「終わったーー!」
モカが元気な声をあげ外に出る。
「この鎧、少しキツくないか?」
「いやぁ、採寸道理ではあったんだが....まぁ、すまん」
「あぁいや、こちらこそありがとう」
「いやぁ、検査って言うので緊張しちゃいました!」
「私もです、スィさん!」
各々の検査が終わり、ギルド登録が全員済み、各々が先程の事を話し合う。
僕はスィに隸魔魔法の件で謝る。
「スィ、ごめんな」
「いえいえ....」
スィは気にしてませんよ、という風に手を横に仰ぎ僕に気をつかってくれる。
本当に優しくて良い子だと改めて思う。
「その....別に私はこのままでも....良いかなって....思ってたり....」
「ライトー!同居人には話付けてるから行こうぜー!」
山月に呼ばれ返答する。
「あぁ、分かったー!直ぐ行く!」
直ぐに振り向き、再度謝る。
「本当にすまん、スィ」
その後、直ぐに山月の所に行く。
「スィさん、恋する女は辛いですね」
「....そうだね....」
「んで、ここからどうする?」
「あぁ、予定通りその....アモネネ?さんに会いに行こう」
「了解!じゃあ行くか」
「あぁ」
「そうだ!ギルドカード見せてくれよ!」
「あぁ」
僕はポケットからギルドカードを出す。
「高いステータスは何だ?」
「....魔力がAランクって書かれてるな」
「へぇ、すげぇな」
「珍しいのか?」
褒められ、少し嬉しがる。
「あぁ、Aはたまにしか出ねぇぜ?」
「そ、そうか....」
ニヤけるのを我慢する。
勿論、魔人だからこそ魔力が高いのは当然だが....素直に褒められるのは、やはり嬉しい。
「なぁ、スィちゃん」
「何ですか?山月さん」
「スィちゃんがライトの事好きなの分かったわ、ああいう顔可愛いな」
「山月さん!」
山月とスィは握手をする。
「これからは山月さんの事をいじるのを、もう少し抑えます!」
「あぁ、自覚はあったのか」
「なぁなぁ、山月さん」
「ん?」
スィと話していた山月は、モカに話しかけられる。
「冒険者の最高ランクには何人いるんだ?」
「....それがな1チームだけなんだよ」
「え?」
「しかも、戦力的にほぼ一人の人間のワンマンチームと言って良い」
「....そんな強いやつがいるの?」
「まず、1人だけだと高ランクのクエストを受けれないんだ」
「Bランク以上になると基本的に、チームでの活動が強いられる」
「ソロでは限りがあってな、最高でCランクまでって言われてる」
「ちなみに俺はCランクだ」
ドヤ顔をして言う山月。
「そいつは....やっぱり強いの?」
「あぁ、魔力はSランクだ、魔力Sランクは確認されてる奴らで三人しかいねぇ」
「内2人は消息不明だが、1人は冒険者の頂点にいる」
「基本ステータスも強い、戦闘でのセンスも良い」
「そいつは、自分の冒険者ランクをあげるためにチームを組んだんだ」
「何でそんな詳しいの?」
「まぁ、凄く有名人だからな」
「ふーん」
「まぁ、すげぇ、つえぇんだ」
「イケスカない野郎だけどな」
「山月!ここか?」
僕は山月に先程貰った地図を頼りに目的地の周辺まで着く。
「おぉ、着いたな」
「ちょっと待ってろよ?」
「ただいまー!居るかー?」
(いやぁ、見通しがあまかったです。あの....次の話でいよいよ序盤の良い場面に入ろうかと思ったんですけど、後一話かかりそうです。2話後にやります。次回は5月12日2時に投稿します)




