山月とナモカ
「よかった~、起きたのか!」
山月の声に反応して、山月の方をみる。
山月を確認すると、すぐに山月の方に向かう。
「あ、あの....ありがとうございました!」
牛人族の子の第一声がそれだった。
「ふっ、気にすんなって」
「困った時はお互い様....だろ?」
牛人族の子の頭を、ポンポンと優しく叩きながら山月は言う。
「あ、ありがとうございます!」
牛人族の子は目を輝かせながら山月を見て言う。
「それによ?俺が治した訳じゃねぇし、そこの奴らにも言っときな」
「そ、その皆さんもありがとうございました!」
牛人族の子の元気な声で皆、胸が温かくなる。
ただ、聞かなくてはならないことが幾つかある。
「君には聞かなくてはいかないことが幾つかある、聞いてもいいかな?」
「あっ、はい!」
「まず、君の名前は?」
「ナモカと言います」
「ナモカ君....よろしく」
「はい、こちらこそ....」
「君はどこから来たんだ?」
「はいっ、実は....」
―――――――
僕は、遊んでいたら道に迷ってしまって....
お腹が空いていたら、偶然、木の実をそれを取ろうとしたら....
奴らが襲ってきたんです。
どちらも、人間でした。
何とか逃げてたんですが、とうとう攻撃が当たってしまって、それで気絶した瞬間に、この人に助けられました。
――――――
「これが、経緯です」
「成る程....その人間達には、いきなり襲われた感じか?」
「はい、いきなり襲われました」
一連の流れを聞いて山月は不思議そうな顔をする。
「んん、やっぱしわかんねぇな」
「人間が魔王の手先の理由、人間がこんな子供を狙った理由」
「確かにな....ただ、一つ分かったことがある」
ウーさんが山月に話返す。
「なんだ?」
「その子が危ないってことだ」
「危ない?」
山月は謎が増えたというように眉間にシワを寄せる。
「順を追って説明するぞ?」
「山月、ゴブリンを討伐したことは?」
「あぁ、あるぜ」
「ゴブリンを討伐した際に、首元に小さな魔方陣がなかったか?」
「魔方陣....」
「あぁ!あったあった!」
山月は思い出した様子で言う。
「なんか、首元にあるしジョ〇ョみてぇだなって感じたんだよ」
「ジョ〇ョ?」
「知らないのか!?お~い、頼むぜ?最低でもジョ〇ョとワン〇ースは読んどかないと、日本国民として」
山月が安定のボケをかますも、多方面からのツッコミを直に受ける。
「いや、ここ日本じゃねぇし」
「そもそも世界違うし」
「お前、元居た世界でも空気読めなかった感じか?」
あまりの攻撃的なツッコミに山月は苦しそうに俯く。
「ぐ、ぐるじい....それは....オーバーキルだぜ?」
モカが苦しがってる山月の横に行く。
「なぁ、山月さん....そのジョ〇ョってなんだ?」
モカの純粋なる言葉かけで、山月は顔を上げ目を輝かせながら言う。
「おぉ!聞いてくれるか!モカ君、君だけだよ~!でも、ごめんな....」
「こっちは個人だからよ、これ以上触れたら、英雄が集まる会社に潰されちまうから、また今度な」
と手を合わせ、モカに謝罪する。
「話....戻っていいか?」
ウーさんが山月を見て確認をとる。
「あぁ、いいぜ」
「まぁ、その首元にある魔方陣なんだが服従の証だ」
「へぇ、服従魔法か」
魔法を放つ際、魔方陣を展開する魔法でどのような魔法の種類なのか、大方分かる。
「服従魔法はな、先代魔王様の時はつけられてなかったんだ」
「そもそも、魔族は二つに分かれてた」
「一つは魔王勢、魔王様直属の配下になることだ、魔界での暮らしの許可をしたり、最低限の生活保障とか、魔王軍が自身の条件として、魔王様の定めた法律は守らなくてはならない」
「二つ目が、非魔王勢、魔王様の作った法律を守らなくてもいい代わりに、魔界での生活や魔王軍が自身を守ることは無い」
「魔王勢力になれば、魔王様をトップに置かなくてはならない」
「だからこそ、同じ種族を大切にしたり、種族での文化等から非魔王勢力の人間もいる」
「お互いの理由も分かるから、どちらもお互いに干渉することは無い」
「入るのは、その集落の長が申請することで入ることになるが自由だからな」
「つまり....人間で言うと」
「入るかどうかは地域の代表者が決めること」
「A地域が入ってて、隣のB地域が入ってなかった場合、同じ区内に住んでてもAとBでは勢力が違うってことがらあるって事?」
「よく分からんが、お前がそれで納得できるならそれでいい」
「まぁ、牛人族なんかは文化を大事にする遊牧民だから、非魔王勢が多い種族だな」
「ゴブリン族なんかは、魔王勢力に入ってるやつは一人もいない」
「....あ~、何となく分かってきた」
山月は何かを察した様に話をまとめる。
「本来、ゴブリン族は魔王勢に入らない種族にも関わらず、服従の魔法が付いてるってことは....」
「現魔王は魔族を統一しようとしてるってことか?」
この短期間で分かってはいたが、やはり察しがいい山月。
「つまり、その子には服従の魔法が付いてねぇから、服従の魔法を付けようとして追っていた....それで合ってるか?」
「あぁ、大正解だ」
僕も話に入る。
「しかも、子供に服従の魔法が付いていないって事は、その子の後をつけて、他の牛人族を探す算段かもしれん」
「だからこそ危ないと、成る程成る程....じゃあこの子どうするんだ?」
「君は....どうしたいんだい?」
僕は、ナモカに聞く。
「僕は....お母さんとお父さんに会いたいです」
「となると?誰かがこの子を、お母さんとお父さんの元に安全に連れてくことになるってことかい?」
「あぁ、そうなるな」
「ごめんなさい....迷惑かけっぱなしで」
「いやぁ、18の俺が言うのもなんだけど、子供は沢山の人に迷惑かけて成長して強くなればいいと思ってっから気にすんな」
「....ただ、誰が連れてく?」
山月は、その問いをした瞬間に自身に視線が集中していることに気づく。
「成る程?」
「仲間になってそうそう悪いんだが....山月」
「あ~、はいはい分かりました」
「それは良いんだが、ライト?俺からも仲間になってそうそう悪いんだが....」
素早い動きで僕の胸ぐらを掴み、顔を寄せる山月
「俺はお前を許さない、なんの脈略もないが!俺は!お前を!許さない!」
「本当に脈略がないな」
「いいか?よく聞けよ?」
「俺は、元勇者になる前!つまり、勇者だったころ仲間を集めたのに誰一人なってくれなかった!」
「お前のように!美人で頼りがいのあるお姉さんも!可愛い幼なじみも!妹系の女の子も!居なかった!」
「なのに!お前は!お前はー!」
「男もいるぞ」
そう告げると、山月は胸ぐらを掴むのをやめ切り替えながら言う。
「あ、じゃあいいや、ごめんね乱暴して、ナモカ君行こっか」
凄い切り替えの早さだ。
「こいつ切り返し本当に早いな」
「いや、本当にそこだけ見習います」
「かっけぇ!」
「かっけぇ!」
ナモカ君とモカだけはカッコよがってた、子供の格好よさとはよく分からなくなる。
――――――――――――――
防具を渡し、身支度をし始める山月
「じゃあ、行ってくる」
「あぁ」
言うのを忘れていた。
「お前の家に帰ったら、また来てくれないか?」
「何で?」
「俺も人里に行く」
「あぁ、いいぜ....じゃあ?」
「ん?」
山月は思考を止める。
皆も目を丸くして言う。
「え、え!?」
(どうも山月編一旦終わりました、次回からはライト御一行、ぶらり途中人里の旅が始まります。冗談です来週からは人里編です、ここは短めにする予定です。分からんけど、次回は4月25日2時に投稿予定です。遅くなってしまいますが、すみません)




