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魔王討伐  作者: 甘党辛好
16/45

魔物と人間

―――――――――――


「これはこれで....千葉にある某遊園地の愛くるしい素晴らしいキャラクターにシルエットが似てるな」

セリナさんから手鏡を借り、鏡を見ながら、そう話す山月。


「おい、早く話せ」


「あっ、やーごめんごめん、自分の可愛さにうっとりしちまってな?」


・・・・・

皆が白い目で山月の事を見る。


「引くなよ」

山月は悲しそうに話す。


「いや、お前らの疑問ってのは分かるぜ?」

「あれだろ?いけすかない、とか言ってた奴らを殺した奴を調査....仇を討つみたいなことしてるのか、だろ?」

頭の大きな、たんこぶ二つを両手で押さえながら話す山月。

「勘違いしないでほしいのは、別に仇じゃねぇってことだ」


「じゃあなぜだ?」


「まぁ、焦るなよ」

――――――――――――


「俺は過去、この世界に転生してから勇者としてもてはやされたが、勇者を辞めさせられ絶望していた」


「行く宛もなかったし、何よりこんな世界に急に連れてこられたのにな....」


「でもよ?絶望させてくる奴らもいたが....その分、俺に手を貸して救ってくれる奴も居た」


「だから決めたんだよ」


「俺を救ってくれた奴らのためにも、“俺が”そいつらを守ってやるってな」


「まぁ、ついでに?俺を絶望の縁に叩き落とした奴らも“守ってやろう”ってな」


「それに元々、勇者として召喚されたんだ、ならよ?」


「勇者としての役割である、人類の敵となる奴から、この世界を....人類を守ろうって決めたんだ」


「“元”ではあるがな」


―――――――――――――


「てな訳で探してたんだよ」

「あいつらを殺した奴らが、俺らの....人類の敵となる奴らかどうかをよ?」


「うんうん、偉いな....俺泣きかけましたライト様!」

ウーさんの涙腺が崩壊寸前だ。


「だがな、調査中に変な奴らに出会ったんだ」

「どちらも殺す気マンマンって顔してたな」


「変な奴ら?」

スィの疑問は皆思っていたであろう。



「あぁ、そこの部屋で治療受けてる....」

山月は、牛人族の子が治療を受け、寝ている部屋を指差す。

「てか、おい!あの餓鬼は無事なのか」

山月は席を立ち、セリナさんを見て言う。


「今更だな、無事だぞ」

セリナさんが無事を伝えると山月は胸を撫で下ろし、席に座り、安心したような顔をする。


「そりゃよかった」

「いやぁ、すっかりお前らのペースになってたな」

「もしかして....狙ったのか?」

「うまいな」


いや、あの子を忘れていたのはお前だろ

とここにいる全員が思った事であろう。



「まぁ、話に戻るぜ?」

山月は咳払いをし、話に戻る。

「単刀直入に言うとな、そこの部屋にいる子供をな起きかけてたんだよ」

「調査と依頼のついでではあったが、叫び声が聞こえてな」

「向かってみると、その“変な奴ら”が追いかけてたんだ」


「それを助けたと?」


「そう」

山月は「当然だ」と言うような顔をする。

威張っているというよりも「普通の事では?」という顔だ。


「....特徴は?」

餓鬼さんが腕を組みながら言う。

少々不穏だ。


「特徴....?」


「あぁ、その“奴ら”の特徴だ」


「えぇっと?....確か....」

「二人いてな、一人は人間で、もう一人も人間に見えたどちらも男だ」


「では、単に人間が魔物狩りをしているときに出くわして、山月さんは魔物の子を助けたって感じですかね」

スィがまとめをする。


「まぁ、そうなるな」

山月もその意見に同調する。


だが、餓鬼さんはどうにも腑に落ちない気持ちだ。


「....どう思う?」

餓鬼さんは、ウーさんとセリナさんに意見を求める。


「....俺も同じだな」

ウーさんも腑に落ちていない様子だった。


「....あぁ、私もだ」

セリナさんは険しい顔をして同意する。


「おい、お前ら....俺が嘘をついたとでも?」

少しだけ、山月はムスっとした表情をする。


「いや、腑に落ちないのはそこじゃない」

餓鬼さんは凄く悩んでいる様子だった。


「お前らの事を襲っていた奴らの事だ」

「元とはいえ、一時は勇者として活動しようとしていた奴だ」

「そんな奴が怪我をしてボロボロになって逃げてくるなんて....おかしな話だとは思わないか?」

ウーさんが分かりやすく説明をする。


「子供を守るためとはいえな」

セリナさんが補足する。


山月を含め、僕らも「確かに」といった表情だ。


「他に特徴はないのか?」


「....確か、それぞれ斬撃みたいなのを放ってくる奴と、凄いパワー持ってる奴ってとこかな」


「ウー、何か思い当たる節はあるか?」


「いや、セリナさんは?」


「私もないな」


山月は分かってきたような顔をするが、あり得ないといった表情だ。


「....まてよ?まさかお前ら」


僕自身も、セリナさん達が考えていることに察しがつく。

「そうか!」


「お、ライト君も分かった感じ?」

山月が僕に聞いてくる。


「ライトだ」


「君付け嫌いな感じか」

「てかさ、そんな馬鹿げた推理よりも自己紹介しとかん?皆の」


「後でいい」


「えー、そんな冷たくするなよ」

「俺がアウェイみたいじゃん」


「いや、アウェイですよ?」

スィがツッコむ


「あぁ、そうかアウェイか」

山月がふざけ始めたので、話に強制的に戻ろうとする。


「そんなことよりもだ」

「山月達を襲ってきた奴らは、魔王の手先ってことか?」


「あぁ、しかも....」


「幹部ってか?馬鹿らしすぎだろ?」


「いや、馬鹿らしくは無いさ」


「仮にも勇者になりかけてた奴が逃げてくるレベルの奴らだ」

「となると、それぐらいの実力はある」


「それに、山月」


「なんだよ」


「お前以上に強い奴らなんだ、それぐらい強い奴らって事は....」

「人間の中でも、そこそこの有名人であっても不思議じゃない」


「にも関わらず、お前は“変な奴ら”と言っていた」


「まてまて、仮に魔王の手先だったとしてもよ?じゃあ、あいつらは人間じゃないってことか?」


「いや、それも違う」


「は?」


「人間だったんだよな?」


「あぁ」


「ということは、魔人に分類するが」

「魔人族は基本的に魔物の中でも、貴族の位置として扱われる」

「俺とウーは、仕事の都合上、貴族達を全員暗記している」


「へぇ、そりゃ凄い」


「にも関わらず、俺とウーの知らない魔人ときた」

「となれば、お前らを襲ってきた奴らは人間ってことになる」


「てことは何か?人間が魔王に加担してると?」


「そうなる」


「いやいや、冗談でしょ?」


「だから不思議なのだ、人間が魔王側につくメリットが分からない」


「・・・・・・・」


皆が沈黙をする。

それぞれ、その不思議に対する疑問を解消すべく悩み始めているのだ。


「....ま」

沈黙を破ったのは山月だった。


「そんなこと今考えてても仕方ねぇ」

「あのさ、一つ質問があるんだが聞いてくれないか?」


山月は僕の方を見て問いかける。


「なんだ?」


「いやぁ、お前らは魔王の手先じゃねぇのか?話聞いてる限りそうじゃねぇようなきがしてよ?」


率直な疑問ではあるが、この人間に教えていいものか悩む。

悩んで悩んで、悩んだ末に

「僕は....先代魔王の孫なんだ」


僕は打ち上げることにした。

理由は明白。

この人間を


山月を仲間にしようと思ったからだ。


「僕の祖父に当たる人物....先代魔王が焼き討ちされた話は?」


鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする山月は戸惑いながらも答える。


「あ、あぁ、噂で何となく....」

だが、戸惑っている表情から一転、直ぐに察する山月。

「なる程、つまり」

「お前らは先代魔王の仇を討るつもりってことかい?」


「あぁ、その通りだ」

「分かってるなら話が早い」

「お前に頼みがある」


「あぁ、分かってるよ」

「俺を仲間にしたい....だろ?」


「....!?」

「正気ですか!ライト様!?」

ミールが反応する。


「あぁ、正気だ」


「よかったぁ、あんなに格好良く決めておいて、別の頼みだったらどうしようかとか思ってたから」


「いや、もう少し自身を持て」


「うんうん、これからは自身を持って過ごしてみるね!ライトきゅん!」


「うっ....」


「え、そんな引く!?」


「・・・・まぁ、獣人の女の子」

「君の気持ちも分からんでもないが」

「ライトが、なぜ俺にこの話をしたのか考えろ」

「正直、利益しかないし、十中八九仲間に出来ると踏んだからだろ?」


「....どういうことですか?」

ミールが不服そうに聞く。


「お前らが敵としてるのは、謂わば軍だ」

「いくらお前らの腕が立つにしても数で押されちゃ意味がねぇ」

「だからこそ、仲間が必要だ」

「俺であれば元とはいえ、勇者になりかけてた訳だし、戦力になる」

「それに、現魔王を倒せば」

「俺の“人間を守る”って役目を果たせる....外敵が居なくなる、根本的な解決になるって訳だ」

「利害の一致って訳だ」


「成る程....」

ミールは納得こそしていたが、やはり不服そうではあった。

恐らく、こんな変人に納得させられたのが悔しいのだろう。


「まぁ、魔王を倒した後どうするかは聞かないでおいてやるが....」


「いや、話す」


「へぇ、話してくれるんだ」


「僕は、魔王を倒し、次の魔王になる」


「それで?」


「人間と魔物に交遊関係を築き、同盟を行いたい」


「....正気か?」

山月はニヤッと笑う。


「あぁ」


それを聞いた途端、山月は笑いが堪えられなくなったのか、大声で笑う。

しばらく笑い続け、笑い終えた後開口一番で言う。


「いいね!」


「面白いよ、分かった」


「仲間になるよ」


山月は、僕の頼みを了承した。


「ただ、仲間になる前に....」

「いや、なるからこそ腹を割って話したい」


「単刀直入に聞こう」


「なんだ?」


「なぜあいつらを殺した?」



(次回は4月8日の予定です。次回でこの山月君の所は終わりです。長くなってしまい、すみません)

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