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音の色 言の葉  作者: site
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49日

 49日、両親の遺骨を墓に納骨する。


 私は松葉杖をつきながら、お線香の煙が立ち上がって行くのを見て合掌する。

 セミの声が耳に障る頃だったが、そんな音さえも気になら無かった。


沢山の感情が押し寄せ、まだ涙は枯れてないようで静かに頬を伝う。

叫びたいのを堪え制服の裾で涙を拭う。


 親族達の声が聞こえ、帰り支度を始める。泣くのは我慢した。心配も同情もされたく無かったからだ。

 そうでなくても帰り際、励ましの言葉や、同情の言葉を浴びる。今の私にはそれがとても辛かった。


 私のことなんて理解できないくせにわかったような口を聞くなよと、心でそう呟いた。


 翌日の朝、お腹が空いたので朝食を食べに居間へと向かう。

「瑠笑ちゃん、おはよう!朝ごはんしっかり食べるんよ。」

祖母がいつもの明るい声で私に促す。

「おう、瑠笑起きたんか。たまには外にだるんも良いことぞ。今日は晴れちょるけん、お天道様もおいでおいで言いよるっちゃなかろうか。はっははははっ」

祖父もまた、こうやって私に声をかけてくれる。

 でも私は、それに「うん。」とだけ返して、無言で朝食を取る。。

気にかけてくれてるのが心苦しい。その気持ちに応えられないからだ。食器を下げて部屋に戻る。

 

 私は両親の死後、祖父母の家に住んでいる。

とは言っても、骨折したりして2週間ほど入院していたのでまだひと月程度だけれど。

用意してもらった部屋に一人篭っている。退院してからも体の痛みと、動きづらさがあるのでまだ横になっていることが多いからだ。とは言っても、外に出たいなんて気持ちもさらさらない。


 ベッドの上で仰向けになってスピーカーから流れる音楽を聴く。私はその音にだけ意識を集中する。

両親の死とできるだけ向き合わないために。そして、私の大好きな曲だけを選んだリストを永遠とリピートしながらいつの間にか私も歌っている。

 そうしていると、いつの間にか日が沈んでいる。

 

 夜は嫌いだ。孤独が私をいつも襲う。

 大好きだった両親が、この先永遠にいないよって現実を突きつけてくる。居ない両親を恨んだりもする。


 でもそれでも何より、独りにしないで。声が聞きたい。こんなに辛いんだから、優しく抱きしめて欲しい。そんな感情に押し潰されそうになる。そして、そうやっていつの間にか眠りにつく。そんな日々を繰り返していた。


 体も自然と動くようになった頃、朝食を取っていると祖母からお願いされる。


「瑠笑ちゃん、ばぁは腰がちょっと痛いから蔵の片付け手伝ってくれんかねぇ?」

 私は少しびっくりした後に応えた。

「・・・いいよ。」

 今まで最低限の会話しかしていなかったから不意を喰らった。

 

 食器を片付けた後、祖母と離れの蔵に行く。蔵を開けると湿っぽくて少し埃っぽい。

でも蔵の外見とは裏腹に、綺麗だった。中に入ると、小学生の時に買ってもらったが静かに佇んでいた。

 

 祖母によるとなんでも母は生前、蔵の2階を自分のスペースにして友達を呼んだりして遊んでいたらしい。何度言っても蔵に篭るため、住んでも害が出ないようにとかなり改修したらしい。よく見れば端の方にベッドらしき木枠や箱型の机がある。数人が座れたり、寝転んだりできるようなスペースになっている。


 蔵の雰囲気に惹かれた私は祖母に聞いていた。

「ここに遊びにきたりしてもいい?」

 祖母は少し考えて応えてくれた。

「瑠笑ちゃんの好きにやって良いよ。じゃあお昼から大掃除しよっか。」

 うん。とだけ頷き蔵からお米を取り台所に運ぶ。




7/23  両親を亡くす

9/11 四十九日

10/18 蔵のに入る


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