夜の報告会2
「それで、衛兵隊の方はどうなんだい?」
エリガンは冒険者組合がしている準備を説明すると、腕を組みながらヴァルクに訊いた。
「こちらは、各倉庫にある備蓄を出し徹底抗戦できるよう準備をしている。襲われる可能性が高いのはここ南エリアだ。そのため東エリアの、衛兵達に住民の避難をすることが出来るよう準備するよう通達している。北エリアと西エリアには住民が他の街に逃げれるよう誘導の準備を命令した」
「ふむ・・・・ダラにはどう伝えてるんだ?」
「今確認しているすべてを報告してある。ダラが所有している商会から、物資の提供を受け食料などは十分だが薬の数が心もとないな」
ダラとはイエリ―の街の領主の名前である。公式的な場であればこのような呼び方は許されないが、2人とも領主とは昔からの付き合いであるため呼び捨てにしている。それを聞いていたリリナは溜息をつきながら
「隊長、ギルドマスターその呼び方は公式の場では止めて下さいね」
「分かってる」
「勿論だとも」
「それでダラは、領民になんて伝えるんだ?」
「魔物の蹂躙が確定するまでは何も知らせず、確定した時はダラ自ら領民に伝えるとさ」
「分かった」
魔物の蹂躙が起るかもしれないという状況を知らされているのは、冒険者組合・衛兵・領主という一部の人間にしか伝えられていない。街に危険があるという事を知らせるのは、領主の義務であるがまだ情報確定しておらず領民の不安を煽るのは得策ではないと判断し領民には秘密にすることにした。もし、領民に伝えればあっという間にパニックとなるだろう。街は荒れ物資の奪い合いや街逃げようと、民がどんどん流出してしまう事態になる。街を運営するには民が必要で、領民同士の争いによって衛兵隊の戦力が分散してしまった場合、止めることが出来た魔物の蹂躙も止められなくなってしまう。
「魔物の蹂躙がすぐ起きる場合は、衛兵隊の戦力を南門に集中させ防衛線に移り少し余裕がある場合は住民の避難を最優先させるよう通達してある・・・・準備は万端だ」
「そちらも準備が出来ているようで結構」
「杞憂で済めばよいのですが・・・・」
リリナはいつになく沈んだ声で呟き、エリガンとヴァルクも同感だが2人の感が伝えていた。魔物の蹂躙が起きかけていると
「まだ魔物の蹂躙が起きかけているのであれば止めることは出来る。こちらも相当損害を受けるだろうが、まだ街を守ることは出来るだろうさ」
「あぁ街は守る絶対だ」
「勿論です」
魔物の蹂躙が始まってしまったらもう誰にも止めることは出来ない。小規模ならば立ち向かうことは出来るだろうが、広大な森で起きていることだとしたらその規模は計り知れない。何とか間に合ってくれと、探索している冒険者に祈る3人であった。
「共有すべき、情報はこれで全部かな」
「うむ」
「一通り終わりましたね」
「後は、待つだけだ」
リリナ・キリガン・ヴァルクの3人による会議は長い間続き、会議が終わるころには既に夜明けになっていた。今日来るであろう冒険者たちの知らせによって街の運命は決まる。ただその知らせをひたすらに待ち続ける。
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