急ぎ街へ
グレスからシオンに向けて発した一言たった一言だが、オーガと戦い気を張っていたからだと表情を和らげた。おかえりなんて、いつぶりだろうか。宿の店主や接客係から言われることもあるが、それは仕事としての挨拶だまだ出会ってから少ししか経っていないがグレスから言われた「おかえり」はとても暖かく感じた。「ただいま」と「おかえり」を言える関係性それはとても懐かしく、寂しい。
「驚いたわ。ラドが教えたの?」
「シオンは帰ってくるって信じてたからな。疲れたシオンを出迎えようってことで教えたんだ」
「ありがとう、とても嬉しいわ。グレス大丈夫だった?」
「うん」
「良かったわ。私が居ない間何かあったかしら?」
「特に何もなかったな。静かなもんだった」
「そう・・・とりあえず、早く街に向かいましょう」
「戦ったばかりだろ?少し休んだ方が良いんじゃないか?」
「いいえ、とにかく街に急ぐ理由が出来たの。休んでいる暇はないわ。朝食を食べたらすぐに移動しましょう、理由は移動しながら話すわ」
ラドは戦闘を行ったばかりのシオンを気遣い急消した方が良いのではと提案するが、シオンは断りすぐに移動すべきだと2人を急かす。リュックから朝食を取り出すと、いつもより早く食べ街に向かい走り出した。
「ラドはこのスピードで着いてこれる?無理そうだったらもう少しスピードを遅めるわ」
シオンは、ラドを抱えていた時より少し早く走りながらラドに聞くが、足を引っ張りたくないという気持ちでラドは元気に言葉を返す。
「大丈夫だ!グレスも走ってるのに負けるわけにはいかないからな」
「辛くなったら言ってね。その時はまた私が運んであげるから」
「ははは、大丈夫だ!」
シオンはラドの様子を見るが、少しきつそうだったため走るスピードを落としながら街へ急ぐ必要がある理由を2人に説明し始める。
「さっき遭遇した変異種のオーガやラドが遭遇した上位種のゴブリンみたいに普段はあまり見ない魔物が街道沿いまで出てきてるわ。街道沿いにこんないつ良い魔物が現れるなんて、明らかにおかしいわ。それに、今日までラド達以外と出会ってないってことは冒険者が魔物を狩ってないってことよ」
「確かにそうだが・・・それで何故街へ急ぐ必要があるんだ?」
「理由は2つあるわ。1つは、私たちの安全確保の為よ。あんなに強い魔物が次々と現れたら捌ききれないし、物資も持たないわ。複数で襲われたらひとたまりもないわ」
「なるほど・・・確かにあんな奴らがいっぱい出てきたら一巻の終わりだな」
ラドは魔物ことを思い出し、顔をしかめ吐き捨てるようにように言うと2つ目の理由を聞く
「もう1つの理由は何なんだ?」
「これはまだ推測でしかないのだけど・・・魔物の蹂躙が起こる可能性があるわ」
シオンが表情を険しくしながら、重々しくラドの質問に答える。ラドは返事を聞き馬鹿なと否定したかったがシオンの表情を見て一気に顔が青ざめ言葉が震える。
「それは・・・本当なのか?」
「推測でしかないわ。冒険者が森に入らなくあって魔物が大量発生した可能性があるわ。そして、大量発生したことによって上位種が生まれて、街道まで出てきてる可能性があるわ」
「そんな・・・」
「最初はゴブリンの巣が発生しているのかと思ってたけど変異種まで出てきちゃうと話が変わってくるわ」
「どうすればいいんだ!?」
「取りあえず、街に行って冒険者組合に報告して森の調査をしてもらう必要があるわ。早目に対処すれば何とかなると思うのだから、街へ急ぐ必要があるのよ」
「急がないと不味いってことか」
「えぇ」
ラドはシオンの推測を聞き魔物蹂躙が起きるかもしれないという事を理解しどんどん表情が暗くなり気持ちに焦りが生まれた。急いで街に行かなければ、魔物の蹂躙なんて起こったらシオンもラドもグレスも死んでしまう。生きるためにラドは走る足を速めた。どんな場所に住んでいる人でも魔物の蹂躙は恐ろしい戦う力が無い人間はより一層魔物に対する恐怖は強い。不安と恐怖に押し潰されそうになりながらもラドは懸命に走った。ラドはグレスが怖がっていないか見たが、グレスはシオンの説明を聞きながら何も変わらず無表情で走っていたがシオンに質問をした。
「魔物の蹂躙?」
「えぇグレスは知らないのね」
「うん」
「魔物の蹂躙っていうのは、魔物が何かしらの原因で大量発生して大勢で人間が住んでいるところを襲うことを言うの。襲われた場所は壊滅するか大打撃を受けるかの2択ね」
簡潔に説明するがグレスは怖がる様子もなくただ走り続けた。
グレスは相変わらずね・・・でも、その方が良いわね恐怖に囚われたら動けなくなってしまうもの。ラドは恐怖と戦っているけど辛そうね・・・
ラドから恐怖を感じるが、今は街へ急ぐことが最優先であるためシオンは何も言わず走り続けた。
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