空っぽの少年
「ちょっと!! 大丈夫!?」
急に倒れた少年に驚きながら、シオンは少年を仰向けにさせ息をしているかどうか耳を胸に当て確認をする。
「よかった~息はしているわね 村の様子を見ると襲われてから数日は経ってるようだけど、色々と限界だったのかしら」
息をしている様子に安堵したシオンは怪我がないか少年を調べた。
んー 大きな怪我は無いわね 擦り傷と切り傷、火傷が少しあるくらいか これなら手持ちの薬で何とかなるわねポーションも十分あるし使っても大丈夫ね あとは体力の問題だけど休ませるしかないわね
触診をし、少年の状態を把握したシオンはリュックを下ろしリュックの中から複数の薬を出し、少年の手当てを始め
た。
村が壊滅してるのにこの程度の怪我で済んだのは奇跡ね 生き残っただけで素晴らしく素敵なことだわでも助かったのは幸運なのかしら一緒に逝けたら辛い思いをしなくてもよかったんじゃないのかしら この子の家族はきっとこの子が助かることを願っていたでしょうけどこの状態を考えると複雑ね 私が決める事じゃないけれどね・・・
焼き焦げた村と村人だったものを見ながら、傷つき憔悴しきった少年のことを複雑な思いで治療していく
怪我はこれで大丈夫ね さて・・少年を寝かせる場所を見つけなきゃね。さすがに野ざらしで寝かすわけにもいかないわ。
身体強化の魔法を使い、少年を抱え休める場所を探したが家はどこも倒壊しているか燃え尽きているかで休める場所が無いわね。仕方ないあまり魔力を使いたくないのだけど・・
シオンは土魔法を使い簡易的な壁と屋根を作り、来ていたローブを地面に敷き少年を寝かせた。
これで雨風は大丈夫でしょ・・あとはこの子が目を覚ますかどうかね。
魔物に襲われて村が壊滅することはこの世界ではよくあることだ
こんな端にある村や辺境の村じゃ冒険者も来ないし、国も領主も面倒を見てくれはしない
こんな思いをした子は他にもいるだろう 全員を助けることは出来ない
だけど、今ここでこの子を見捨てる理由にはならないしほっとけない
きっとあの子だって、こうするに違いないしね。
そういえばこの子私を見て青って言ったけど青?私、髪はオレンジ色だし目は薄紫だから青要素ないんだけど・・空のことを言ってたのかしら・・でも私を見て青って言ったよなー
シオンは焚火を炊き、優しい表情で少年を見つめ少年の言葉を考えながら暗くなり現れた星を眺め眠りについた。
少年は
魔物に強い憎しみを
故郷、家族、村民が死んだことに嘆き悲しみ泣け叫んだ
世界の理不尽さに自分の無力さに怒り叫んだ
今までの楽しかったことを思い出し、現状に苦しんだ
また魔物が襲ってくるのではないか 自分一人しかいない村に恐怖を抱いた
様々な感情が少年の中で暴れまわり、少年の心を壊していった
少年は悲惨な現実を受け止めることが出来ず耐えられなかった。
あまりにも強い感情に心は少年を守るために、記憶が封印されていく
憎しみから守るために、家族の記憶を
悲しみから守るために、人生の思い出を
怒りから守るために、起こった出来事をそして自分自身を
苦しみから抜け出すために、楽しかった思い出を
恐怖から守るために、村で起こった出来事を
記憶は封印され、世界の色を失い残ったのは言葉と生き物としての活動だけ
少年は空っぽになった
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#空っぽと色