街へ9
森を再び歩き始め、数刻が経ち日が沈み辺りが暗くなってきた。
「もう少しで街道に出れると思うわ。でも暗い森を歩くのは自殺行為だから今日はここで終わりしましょう」
シオンは土小屋を作り、焚火を焚いた。
「今日もお疲れ様グレス 雨の中を歩くのは大変だったでしょ？地面は滑るしいくらローブが水を弾くといっても服は濡れちゃうものね」
シオンはグレスを焚火の近くに連れていき焚火に当たると、暖と服を乾かしていく
「焚火って見てると落ち着かない？火の子が散る様子や木が燃えてパチパチという音を見てると、不思議と落ち着くのよね。森の中だから周りの警戒はしなきゃいけないけどね」
ゆったりとした様子でシオンが焚火を眺め、グレスは無表情で焚火を眺める。
「さて、少し休憩したことだし夕飯にしましょうか。今日はオーレの実とメーロの実よ。昨日と昼は脂っこいものだったからさっぱりとした物を食べましょう」
2人は果物を果物を黙々と食べ終わると、
「今日は疲れたから早めに寝ましょう」
寒さをしのぐために、焚火を付けたまま魔除けの香を焚き土小屋の入り口を塞がずに眠りについた。
街に向かい歩き始めた5日目の朝
暖かな風が2人を目覚めと誘う
「ん～おはようグレス 今日はグレスの方が起きるのが早かったわね」
目をこすりながらシオンが起きるとすでにグレスは起きていた。起き上がり外を見ると晴れやかな空が広がっており雲一つない様子に、清々しい気持ちになり体を伸ばすと
「よし！朝食にしましょうか」
いつも通りグレスに果物を渡すと、
「あと少しで街に着くわ。頑張りましょう」
食べ終わり、森を数刻歩き続けると前方に開けた道が見えてきた。
「あれが街道よ！あの道をたどればイエリ―の街に着くわ。」
2人は森を抜け街道に出ると道をたどり歩きは始める。シオンはグレスに雑談を話しながら歩いていると、前方から何か音が聞こえてくる。耳を澄ますとそれは、
「助けてくれぇえええ」
助けを求める男の声だった。
どうしよう・・・助けを求めることは聞こえるけど視認できないわ。人間の声を真似する魔物かもしれないし盗賊かもしれないわ。グレスの安全を第一に考えなきゃいけないけど、本当に助けを求める人だったら？でも、私1人しか居ない行って私が対処できる範囲を超えていたら？私が死んだらグレスはどうする？
声が聞こえた方向と、グレスを見比べ数秒迷った様子を見せたが目を強く瞑るとカッと目を見張らき声を助けるための行動に移した。
「グレス 私声の主の様子を見てくるわ！危険だから、グレスはここで待っていて土壁で囲っておくから大体のことは大丈夫よ。もしも私が死んだらこの土壁は崩れるからその時はこの道に沿って歩いていくのよ。わかった？それとこれ」
シオンは腰からダガー取り出しグレスに持たせると
「もしも襲われたりしたらこれで相手を刺しなさい」
シオンは今までにないほど、真剣な表情でグレスの目を見て言い聞かせるように言う。
「行ってくるわね。大丈夫絶対戻るから！」
シオンはグレスを土壁で囲うと、身体強化をかけ声に向かって走り出す。
「どこにいるの！？もう一度叫んで！！」
声の場所を突き止めるために、叫ぶが返事が返ってこない。
もしかして間に合わなかった！？
走り続けているとまた声が聞こえた。
「ここだ！！！」
そっちね！
左斜めから聞こえた声に向かって街道から森の中に入り走る
血の匂いがする
声の方向に走っていくと風に乗って血の匂いがシオンに届く
近い
走りながら、最大限警戒をして匂いの元に近づくとまた叫んだ
「攻撃されたくなければ声を上げなさい！襲われているのであれば相手を言いなさい！！」
どのような状況か分からないため少しでも情報を得ようと叫ぶと声が返ってくる。
「ゴブリンだ！」
声が近い！声がした方向に走るとそこにはゴブリン5体が人を囲んでいる様子が見えた。すかさずシオンは魔法を使いゴブリンに狙いを定める。
「炎よ！！！」
声と共に杖から赤き魔力が溢れ出し、炎のコートがシオンを包み赤き魔女が生まれる。それと同時にシオンの目の前に5つの火球が生まれゴブリン目掛け勢いよく放たれた。火球に当たりゴブリンは吹き飛ぶがあまりダメージが無いように立ち上がり新たに現れた獲物を睨みつける。シオンは襲われていた人の前に立つと、ゴブリンをしっかりと捕らえた。
見た所ゴブリンレンジャー1匹とゴブリンソルジャー3匹、ゴブリンメイジが一匹か・・・上位ゴブリンが勢ぞろいね。まずは安全確保ね！
「土よ彼の者を守れ」
襲われていた人達を土壁で囲い安全を確保すると、遠距離攻撃手段を持つゴブリンレンジャーと魔法攻撃が出来るゴブリンメイジに狙いを定める。
「炎よ 彼の者を射抜け」
炎の矢が6本シオンの目の前に現れ3本ずつレンジャーとメイジに向かって放つ。レンジャーとメイジは正面から来る炎の矢を横に転がって避けると、ソルジャーは自分が狙われていないと分かりと勢いよくシオンに向かって走る。
シオンはゴブリンたちと距離を空けるために森の中を走る。視界が遮られ木々を躱しながらレンジャーとメイジの横に回ると
「炎の息吹を」
扇形にシオンの前から炎が放射された。レンジャーとメイジは焼かれながら、反撃しようと弓を引き、魔法を発動しようと魔力を集中するが
「光よ」
激しい光がシオンの杖から発光され、狙いを定めていたレンジャーとメイジ、迫り来るソルジャーの目を潰す。目を抑え悶えている隙を逃さず、
「岩よ 彼の者を潰せ」
メイジとレンジャーの頭上に大きな岩を出現させ押し潰す
あとはソルジャーだけ！
ソルジャーは目の痛みから復帰しそうになっており、すかさず
「土よ 彼の者を囲え」
ソルジャー3匹を木々を押しのけ土壁が囲い、土壁の中に魔法を繰り出した。
「炎よ 燃やし尽くせ！！！」
土壁の中に燃え盛る炎が充満し、逃げ場は無く熱を逃がすことも出来ない、焼かれ続けるしかないゴブリンの叫び声が土壁の中を響く。
20秒ほど燃やし続けると、叫び声は聞こえなくなった。
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