少年に世界を
日が昇り、朝日が2人を照らし始め、起きたシオンは土小屋から出てくる少年がまだ寝ているのを確認し顔を洗い旅立つ準備を始めた。
朝食は、すぐに食べれるものでいいよね。
オーレの実を取り出し食べながら、旅の予定を考えていると
夜中に軽く雨が降ったのね。もう止んで地面はぬかるんでいないけど、道が崩れたりしてないといいなー
草木が雨粒に濡れている様子を見てふと思いついた。
ここを出る前にあの花園にこの子を連れていこう!ここを離れたらいつ戻って来れるか分からないし、食糧も確保しておきたいしね。それに・・・故郷の風景が崩壊された姿だけじゃ悲しすぎるよね。
そう考えていると少年が起きて、体を起こした。
「おはよう いい夢は見られたかしら?今日は忙しいわよ。昼前にはここを出発してイエリ―の街まで行くからね。朝食を食べたらちょっと見せたい所があるから一緒に行きましょ?」
シオンは少年に笑顔で今日の予定を伝えると、オーレの実を食べさせ少年のいつもの用を終わらせると、無反応な少年と手を引っ張り森へと向かった。
「昨日も思ったけど、本当に植物の楽園なのよねー」
オーレの実やメーロの実、道沿いのに実っていたイゴの実を採取し持ってきた袋に入れながら花園に向かって歩いた。
「君はこの花園に来たことがあるのかしら?村の近くにあるし人が通っていた後もあるから村にとって身近な存在だと思うのだけど」
少年に質問してみたが変わらず無表情で、呆然と外を眺めてるだけだった。歩き続け花園の入り口につき入ると花園は昨日見た光景と全く違う光景になっていた。
雨が降ったことによって植物は水にぬれ太陽の光を反射し光り輝き、雨を集め小さな水の球体を作り出す魔法植物バブルリーフが陽の光を集め周囲を照らし美しい光景が生命力溢れ神秘的な光景に変わっていた。植物たちは水にぬれたことによって昨日とは違う顔を見せていた。
シオンは昨日とは違う花園に驚き、生命力あふれる姿に圧倒され息を呑み魅了される。
「なんて綺麗なの・・・昨日とは全然違うわ。雨が降っただけでこんなに違うなんて」
花園を見て、圧倒されたように呟き少年を見ると少年は無表情のまま花園を見ていた。
花園を見たら、何かしら反応してくれると思ったんだけど駄目だったか・・・仕方ないわね。少しずつ心を治していかなきゃね。
少年の手を引っ張り、村へ戻ろうとすると来た道から強い風が花園に吹き込んだ。
風が花園に吹き込み、花弁が空に舞い散る。色鮮やかな花弁が澄み渡る青空を染め上げ、空を様々な色で描いていく。バブルリーフの水泡が空に舞い、陽の光を存分に受け空と地上を照らしシオン達に光を注ぐ。
舞い上がる花弁はシオン達を祝福するように、照らす光は道に迷わないように
花園は2人の旅立ちを応援するように神秘的な光景を見せた。
シオンは、花園が魅せた光景に身を見開き口を開き唖然とした様子で見つめていた。数秒ほど唖然としていたがはっと少年の方を見ると少年は泣いていた。
無表情で声も上げず
ただ涙を流していた。
少年の目には、色が見えず白き世界しか映らない
少年も何故泣いているのか理解が出来ない。
心の奥底に封印された記憶が少年を涙させた。
幸せだった思い出 悲しかった思い出 家族との思い出 村での思い出
今は、思い出せないが少年の心の奥底に残っていた。
美しく懐かしい光景が、少しだけ少年の心を動かした。
まだ、世界は白い 何も思い出すことは出来ないが少年の心はまた動き始めた。
「ちょっと大丈夫!?もしかして昔を思い出して悲しくなったとか?それとも辛いこと思い出しちゃった!?」
泣いている少年に、シオンは慌てるが少年は花弁が地面に落ちるまで泣き続けていた。少年は泣き止み花園を見続けていると、
「君の故郷は、燃えてしまったけれど君は生きている。故郷に戻りたくなったらまた来ればいいわ。きっとあの花園はずっと残っているはずだから。戻りたくなった時は、君が望むなら私も一緒についていくわ。だって君を助けたのは私の責任だからね」
シオンが少年の前に立ち目を合わせ語りかけ、
「さぁ行きましょう」
少年の手を引き村に戻ろうと話しかけると
「うん」
少年はその言葉に答えた。
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#空っぽと色