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87.絶対教えてね!

私は待っている間、飲み物を飲んだり部屋の中を探索したりした。

以前アレックスと通話した時の金色のオウムの魔道具の他にもどうやって使うかわからない小さい箒の置物や、綺麗に並べられた5つの小石、紙製の人型の切り抜きなどをボーと眺めていた。


魔力は流していない為、どれもなんの反応もなく置物を眺めているような感じだった。



暫く経ってルークが戻ってきた。

私を見た瞬間に気不味そうな顔を見せるもすぐに止め照れた様子で目線を遠くにやり話す。


「待たせてすまない。」

「いいよ、どうかしたの?」


「ロティに慣れてもらおうと思ったのに自分に負けてしまっただけだ…。あまり気にしないでくれるに助かる…。格好悪いな…。」

「ふふ、ルークは格好良いよ。」


「そう映ってるならありがたい。遅くなったが屋敷を案内しよう。」

「うん!」



返事をするとルークは私に手を差し伸べてくれる。その手を取り屋敷の中を案内してくれた。


上の階から見ていくと空き部屋があったのと、まだ見ていなかったトイレと浴室も発見した。

後はいつもの寝室と衣装部屋だ。

階段を降りて下の階の応接室の近く行く。応接間の近くにも空き部屋があり、その隣には甲冑達が使っている部屋があった。


甲冑達の部屋の中を見せてもらったが、ルークの倒した魔物の抜け殻みたいなものが沢山あり早々に閉めた。


ルークもあまり確認しないらしく、そうなっているとは思ってなかった様で少し顔を引き攣らせていた。


玄関ホールの甲冑達は今日は動かず立ち尽くしたままだった。



屋敷の庭の薬草はやはりかなり珍しい薬草が植えられていた。

完全回復ポーションの原料の一部に私は目を輝かせてしまう。薬師として一度はお目にかかりたいし、作ってみたいものだ。


最も最近は治癒師に格上げした事により、薬師が日の目を見ない。

冒険者をしなくなった時まではちゃんとポーションのレシピを覚えておこうと心に誓った。


屋敷の散策は思いの外あっさりと終わりになってしまったが、今まで以上にこの場所が身近になった様な気がした。


考えていてと言われた欲しいものの答えはまだ出せないようで私は頭を悩ませるのだった。



◇◇◇



真新しい扉をノックする。

結局欲しいものは保留とし、スザンヌのところに来てしまった。


居るのかどうかもわからなかったが、中から足音が聞こえるとすぐに扉が開かれた。


「ロティ!5日は来ないと思っていたから吃驚したよ。」

「ごめんね、スザンヌ。予定が少し早まったの。スザンヌがいいなら今日から泊まってもいい…?」


「とりあえずお入り。玄関先よか茶でも飲みながら話そうかね。」


そう言うとスザンヌは私達を家の中に招き入れてくれた。

前回同様手土産を持参してきたため、スザンヌに伝えると嬉しそうに喜んでくれた。


お皿にクッキーとレモンパイを出す間にスザンヌも紅茶を淹れてくれた。


3人座るとスザンヌが話し始める。


「さて、飲みながら話そうかね。

ロティ、泊まるのは構わないよ。早く思い出したいだろうしね。ただちょっとワタシは夜出かけるよ。ルークはロティの側にいるんだろ?」

「ああ。勿論。」


スザンヌはレモンパイをフォークで切りながらルークを見た。ルークも紅茶を啜った後に頷いて返事をする。

スザンヌは安心した様子でにんまりと笑った。


「なら大丈夫だね。ん、このパイんまい。」

「何か用事があった?」


大きめの一口を口に入れて動かしている。

私から目線を外し少し照れた様子のスザンヌ。ごくんと飲み込むとフォークを弄びながらもごもごと喋る。


「…用事というかなんというか。」

「言いたくない?」


「…気恥ずかしいだけさ。

まあその、前回あんた達が帰った後ワタシも久々に街に繰り出したのさ。

酒場で一人酒してたらなんともまあタイプの男が店に入ってきてね。


眼福だと思って飲んでたらあっちから話しかけて来たんだよ!ま〜久々にときめいたもんだ!

楽しくて昨日も行ったし、今日も約束してるんだよ。」


照れて嬉しそうに言うスザンヌ。

その様子は恋をした乙女だ。可愛くてこちらまで嬉しくなってしまう。


「えー!スザンヌに恋人!?」

「やだね、まだ恋人でもないのに!でも顔もいいし、性格も良いときたもんだから参ったもんだよ。今恋人がいないのが不思議な位いい男なんだから!」


「幸せそうでなによりだ。」

「恋人になったら紹介してね?」

「気が早いね、けど勿論だとも。

だからワタシは悪いないけど、ここなら好きに使ってくれて構わないからね。今…16時か。

夕飯と風呂が終わったらロティに魔法を掛けてやるかね。その後はルークがロティを守ってやんなよ。

ま、ここにいたら誰も入ってこれないがね。」


スザンヌは幸せそうな顔のままレモンパイをまた一口食べた。顔が緩んだままパイを咀嚼している。


私もクッキーを口に放る。

甘いクッキーだが、スザンヌの蕩け具合の方が甘い。

ルークもパイを食べた後、スザンヌに尋ねた。


「帰ってはくるのか?」

「勿論帰るさ。間違いを起こす気はないからね。ほんの数時間抜けるだけだから安心しな。夜のうちに戻るよ。」


紅茶を少し切なそうに見るスザンヌ。

それがどう言う感情なのかはっきりとは分からない。



「わかった。今回ロティがどれだけ眠るかわからないが、スザンヌがいる時に一度ロティを置いて俺だけギルドに行ってきたいんだが、構わないだろうか?」

「ギルドに用事?」


「ああ、一応連れて行かれた看守の特徴をもっと詳しく聞いておこうかと思ってな。」

「行ってきな。数時間程度なら問題はないよ。」

「1時間もかからない。心配なら後にしようと思ったが、いいと言うなら行ってくる。

とりあえずそれ以外はロティと一緒にいる。

やはり心配だから部屋だけでもロティと同じ方が安心できるのだが…。」


「カーッ心配症だね!なら絶対に寝てるロティに変なことするんじゃないよ!」

「寝てる時はしない。」


「馬鹿正直に言わんで良い!」


大真面目なルークにスザンヌは呆れ顔で怒鳴った。先程の切なそうな顔は無くなりすっかりいつものスザンヌだ。


私は苦笑し、紅茶を一口飲んだ後スザンヌに尋ねた。


「スザンヌ、この間前世を見た時は3日で3年分位見たと思うの。今回はスザンヌの魔法の手助けがある。けどどれだけ思い出せるかも、どれだけ寝ているかもわからない。1日かもしれないし、半月かもしれない。ルークが落ち込んだ時にはよろしくお願いね…。」

「魔法をかけてやるから前世の分の覚えていない部分は思い出せると思っていい。


ワタシと会った所まで思い出したと言っていたね。残り20年近くの記憶がない感じか?

まーーー…長くて6日…。短くて2日…。

正確な数字は出せないけど、ロティは記憶を拒まずに思い出す事だ。わかったかい?」


「うん。大丈夫。」

「そうと決まれば食事の支度と風呂をさっさと済ませて魔法を掛けてやろう。」

 

「ありがとう、スザンヌ。」


漸く前世を思い出せる事に対しての安心感。

それとルークが傷付くかもしれないと言った言葉と、私が言っていたルークが浮気したって言葉の真相。

どう言う意味なのか今夜、はっきりわかる。



黙っているとそわそわと体を動かしそうになる。

スザンヌが席から立ったのを機に私も席を立った。


「おいで、部屋を案内するよ。

ま、前に使っていた部屋だから分かると思うがね。」


そう言ってスザンヌが部屋に案内してくれた。

前世、スザンヌで住み込みしていた部屋だ。


「懐かしい…。ありがとうスザンヌ。」

「いいよ。ベッドはルークが隣から運びな。」

「ああ、わかった。」



ルークとの同室を許可してくれた為、私が泊まる部屋にルークは隣のベットを魔法鞄を使って運び出した。 


「その鞄本当に便利だね。この間の記憶の報酬、そういうのにするかねえ。いやでもな、そんなに使わないか…?」


スザンヌは真剣な目で見つめ、自問自答を繰り返していた。

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