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84.意外と経験者…?

「かんぱぁぁぁああい!ルークとロティ結婚おめでとぉおおお!」

「羨ましいですっっっ!こんな!美人な!人とっ!」


まだ結婚していない、と突っ込みたいところだが酔っ払ってしまったアレックスに言ってもきっと無駄だろう。

これで20回は同じ事を言ってエドガーとカップをぶつけ合っている。


ノニアは冷たい視線を2人に向けて言った。


「嫌ね、飲み過ぎだわ。この2人。ねぇ、リニ?」

「…。」


リニは返事がなくカップを口元から離さずに少しづつ飲んでいるようだ。

リニは前髪で顔はハッキリと見えないものの、顔全体が真っ赤になっている。


「リニは飲み過ぎでだんまりね。」


ノニアがリニの前髪を少し掻き分けるととろんと琥珀色の目が蕩けていた。


私もルークが心配になり隣に座るルークを覗き込む。


「ルークも飲みすぎないでね…?」

「…ああ。」


5杯以上は色々なお酒を飲んでしまっている為か些か反応が遅く顔が赤い。

人もいる為この間のようにならないようにしなければ私が恥ずかしい思いをしてしまう。


肝に銘じているとゼラがカップを掲げて私に向けてきた。


「ロティ!飲んでますか!?」

「飲んでますよ。ゼラも…飲みすぎてないですか?大丈夫です?」

「サイラス様ほどじゃないですよ!」

「ふふふふふ。美味しいです…。ごくごくっっ、ふぃー!」


眼鏡を付けたまま特訓中に見た恍惚の表情で飲んでいるサイラス。


この中で酔っていない状態なのは私とノニアだけみたいだ。






時は遡り。

ギルドから出て皆で【ザックの酒楼】に向かった。

路地の裏の道をくねくねと何度も曲がったり、小さなトンネルを2度潜り抜け漸く【ザックの酒楼】に到着した。

ゼラはきちんとの店前で待っていてくれて、私達に気付くとにこりと笑って手を振ってくれた。


貸し切りなのか【準備中】と書かれた看板を見向きもせずにアレックスは鍵がかかっていなかった扉を開け、皆で中に入ると既に料理がテーブルの上に所狭しと並んでいてお酒まできちんと用意されていた。


店の店主は出てこなかったものの、席にノニア、私、ルーク、アレックス、が並んで座りノニアの向かいにはゼラ、サイラス、リニ、エドガーが並んで座る。


乾杯の声と共に飲み食いが始まり皆で今日の事は一時忘れ楽しい時間を過ごした。

1時間も過ぎると酔い始めた人がちらほら出てきて、3時間近く経った今は冒頭へ戻る。



まともに会話が成立するのはノニア位だろうと私は左隣のノニアに話し掛けた。


「ノニアはお酒がお強いんですね?」

「ええ、飲んでも滅多に酔わないわ。

ロティも全然酔ってないのね?酔わないのは少しだけつまらないわよね?」


可愛い笑顔を見せながら酔わない私の持つカップにノニアはコツンとぶつけた。

ノニアも全く酔っていないようで共感が得られたのは嬉しい。


「はい、そうですね。一度は酔ってみたいものです。この間久々にルークと飲みましたが、その時も私は酔わなくて…。」

「あら、ルークが飲むこと自体珍しいわね。

もう中々会えないから今日は飲んでいるのでしょうけど、パーティを組んでいる時になんて誘っても殆ど飲まなかったもの。

まあその代わりそっちの酔っ払いの世話をしていたから助かったけど。」


私達が座る列の奥を見る。

アレックスが立ったままエドガーとカップを何度もぶつけてはその中身を飲んでいた。


「うぇーーーい!かんぱあああぁい!おめでとおおぉぉ!」

「狡いです!羨ましいですー!」


エドガーに至っては泣きながら飲んでいる。

カップにも涙が入ってしまっている様な気がしてならない。

大きな体躯が泣き顔に合わず、くすりと笑ってしまった。


ノニアは面白いとは思っておらず、顔を顰めて舌を打った。


「ち!煩いわね。リニ位静かなら可愛いもんなのに!」

「めでたい、乾杯…。」


リニの名前が出たからかリニは持っていたカップを少し上に掲げぽつりと呟きとろんと笑った。


唐突にリニの右に座っていたサイラスが私の方へ身を乗り出してきた。


「ロティさぁぁん。本当に続きを教えれなくて残念なんですよぉ…。もっともぉおぉと…。覚えてほしかったんですぅ…。」

「あ、ありがとうございます。

サイラス先生には本当に感謝しているんです。

古代竜から帰ったばかりなのに私の特訓をしてくれて…。」


焦ったものの私はまた感謝の気持ちを伝える。サイラスは悲しい顔をしながらもお酒を飲みながら話を続けた。


「いいえぇ、そんなぁ。私がロティさんを見たかったんですぅ…。

鑑定したらとんでもない魔力でぇ…。試しに回復魔法かけてもらったら悪夢まで退けてしまってぇ…。

ごくっ。はぁ、本当に感動しましたぁ…。


古代魔法は美しくて繊細で素晴らしいですよねぇ…。

ロティさんの回復魔法は色々な状態を直してしまうのでしょうねぇ…。ごくごくっ。あぁあぁああ!もっとみたかったですぅ!!」


悲しい顔はどこへやら。

赤みを帯びた恍惚の顔が息を荒させている。

興奮状態なのか、両頬に手を当てうっとりとしている。


「サイラス!飲み過ぎよ!後、水にしなさい!」

「明日は分解魔法をかけますので大丈夫ですもんっ!」


ノニアが近くにあった酒瓶を取ろうとしたが、素早くサイラスが取り上げその瓶の中身を直に飲んでしまっていた。


「全く!」


ノニアが眉に皺を寄せ怒っているが、その怒っている姿すら可愛くてあまり迫力がない。


そこにとことこと鼠の亜人がテーブルの横に来て2つの瓶を置いた。


「楽しくやってるようで何よりだよ〜。

でも酔わない可愛子ちゃん2名がなんだか寂しいからボクからサービスだよ〜。」


小さな耳がぴょこぴょこっと動いて、まんまるの大きい目を細めてその人が言った。

ノニアはその人を見て笑って話す。


「あら、ザック。貴方特製のお酒なら私も酔えるわ。

だけど、この人達の介抱が必要だから今日は普通のお酒を飲む事にするわね。これは貰っていくわ。ありがとう。」

「お好きに〜。」


ノニアが酒瓶の1つを取りながらザックと呼ばれた亜人にお礼を言うと、ザックは手をひらひらとさせながら来た道を戻って行った。

もう1つの酒瓶をノニアは私に向けてた。


「私も頂いていいのですか?」

「ええ、だからザックは2瓶くれたのよ。

前に私達が助けた事のある亜人でね。ここの主人よ。

ここなら私達も自由に飲めるから王都にいる時はよく来るのよ。ほら、ロティも持っていきなさい!」


「ありがとうございます。」


私は緑色の酒瓶をノニアから受け取った。

瓶の色が濃いためか中身が何色か傾けてもわからなかった。

ノニアはそれを鞄にしまうと自分のカップの中身を飲みながら私に言う。


「飲む時は少量にしなさいね?ザック特製のお酒はかなり強いじゃ済まないから。

普通の人が一口飲んだだけでも泥酔状態になるからルークには飲ませないようにね。」


ちらりとルークを見るとたまたまルークもこちらを見たようで目が合った。

優しく微笑むルーク。次の瞬間に両方の腕が私に伸びてきてそのままガッチリと捕まってしまった。


「ロティ…。」

「ル、ルーク。ちょっと!?」


腕を取ろうとしたがルークはこうなると中々離れない。酔っているなら尚更。

私の頬近くにある顔を覗き込むと目を閉じていた。


その様子をノニアは穏やかに笑って話し始めた。


「くすっ、ここまで酔うルークを最後に見れてよかったわ。私達にはあまり零さなかったけど、ロティを待つ間不安だったのよ。

私はこのメンバーの中じゃ付き合いが1番長いから知っているけどね。


ルークがゼラに掛けた悪夢の魔法があるじゃない?以前本物の悪魔と戦った事があるのよ。

その時にメンバー全員が悪夢を見せられたわ。

悪夢が1番酷かったのがルークなの。

悪魔を退治した後もしばらく悪夢に魘されていてね、完治した時には悪夢の魔法が使えるようになったのよ。それだけ悪夢がルークに染み付いたってことね。


その時ルークが零していた事がロティに会えなかったり、ロティがいなくなる事への不安だったわ。きっとそういう内容の悪夢を見たんでしょうね。


だから、じゃないけどルークがロティを溺愛してるのは私達は知っているし、ロティの話も聞いてきたから私達の前ならいちゃついても構わないわよ?」

「わ、私が持ちません…。」


ルークが苦しめられた悪夢の事を聞いてその事を考えたいのに、ノニアは違うようでニヤニヤと顔を緩めている。

その目はおもちゃを見つけた子供の様に楽しそうにしていて、私の左耳近くに来て小さな声で耳打ちしてきた。


「うふふ、慣れることね?ね?ルークとどこまでいったの?もうしたの?ルークに聞いても教えてくれないのよ。」


そうノニアに聞かれると一気に体温が上がった気がした。特に顔が焼けるほど熱い。

ノニアは悟ったのかニヤケ顔を更ににやつかせて言う。


「あら、可愛い!その様子じゃまだね!

100年以上待たせたのだから初めては2.3日離されないかもしれないけど、頑張りなさいな?」

「どういう意味です??2.3日離さな」

「かんぱあああぁーーーいぃっ!」

「アレックスうっさい!!」



私の疑問はアレックスによって掻き消されてしまった。

疑問が残るまま私に抱きつくルークを見たが、変わらず目を閉じていて幸せそうな顔を浮かべたままだった。

❇︎12〜14歳に見えるノニアだが歳は50歳以上。

はっきりした歳は教えてくれないが、一度は結婚した事があるらしい。今は独り身。


❇︎ザックの酒楼は限られた者しか入れない。

予約はサイラスが密かに魔法で伝達していた。

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