表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/161

80.え…?どうして…?

ゴーレムの本体がよく見えるところまで来た。

少なくともまだゴーレムの手の届く範囲ではないではないため安心できる。


1体につき10人〜15人程の人が攻撃をしている。

ルークは水のゴーレムをアレックスと共に2人で1体を受け持っていた。


水を蹴散らしたのか、もう1体の水のゴーレムに比べたらだいぶ水が減って半分より少し多いくらいだ。


同行した男性治癒師が私達に言う。


「私はゴーレムの側に行って治癒を施します。ゼラさんは…。」

「私はロティさんの守り人です。ロティさんになにかあったらルーク団長に首を刎ねられるでしょうね。」

「ひっ、では私だけ行きます。」


怯えながら男性治癒師がそそくさと走っていってしまった。


ゴーレムは動きが遅いものの、力が強くその体の大きさからも冒険者達は少しばかり戦いにくそうだ。



「ゴーレムってどうやって倒すのかな…。」


私はゴーレムとは対峙した事がない。

ぽつりと独り言の様に言った言葉にゼラは反応し、

ゴーレムを見つめたまま話し始める。


「ゴーレムは体の何処かに核となる石があるのでそれを破壊すれば止まります。

ゴーレムが発生するのは自然発生と人がゴーレムを作成する2つのどちらかです。


これは自然のゴーレムではなく数からして作られたゴーレムなので、術者が側にいる可能性があるのですが…。」


ゼラが辺りを見回すも冒険者と魔導師団員がゴーレムと戦っているだけで他に人影が見えない。

私も周囲に気を付けつつゼラに尋ねる。


「術者がいたら何かあるんですか?」

「ゴーレムが作られた場合にはその作成者の命令のみを絶対服従とするんです。

作成者は術者となり、ゴーレムを操っているんです。

術者を捕まえて辞めさせれば一番手っ取り早いのですが…。おっと。」


ゼラが素早く片手を前に出すと魔法陣が現れた。

瞬時に魔法陣から突風が出ると私達に向かって飛んできていた岩を止めたようだ。

当たれば骨折どころじゃ済まされない50センチ以上ある岩や、中には鋭く尖った形のものまである。


「荒い人がいるもんですね、全く。もう少し丁寧に削げばいいものを!」


岩のゴーレムを見ると1体がもうボロボロに崩されていた。腕も無くなり、足だけで冒険者達を蹴散らしているが倒れたのも時間の問題だろう。


冒険者と魔導師団で協力して戦ってはいるものの、冒険者の方は早くゴーレムの核を探そうと躍起になり力づくで岩を壊している人が破片の処理など考えず散らかしているようだ。


下にいる冒険者にもその岩が当たり血を出している者もいる。

先程の男性治癒師も回復はしているものの、追いつかなく、冒険者が数人背負われたり、仲間に引き摺られ此方に逃げる様に走ってくる人が来た。


私は大きく手を振り声を掛ける。


「冒険者さん!こちらへ!回復します!」


「あ…ああ!頼むっ!」

「こっちも!!」


冒険者達もすぐに気づいてくれ、私の方に近寄ってくれた。



纏めて回復するため範囲回復魔法を掛ける。他に2.3回個別に高回復魔法を掛けると、近づいた全員が治ったようで私にお礼を言うとまたすぐさま戦場に戻った。




完全なる耐久戦だ。

負傷者は出るが、時間をかけて戦えば冒険者と魔導師団員が勝つだろう。

現にルークの戦っていた水のゴーレムは既にもう消えていた。


ルークもアレックスも次のゴーレムを倒そうとしている。


残り5体といってもいいだろう。

1台の岩のゴーレムも足を取られ、なす術がない。



僅かに安堵したその時、地面が大きく揺れた。


「地震!?」

「いやっ違います!ロティさん捕まって!」


ゼラに手を伸ばされ、すぐに掴むと一瞬にして空高く宙に舞う。

怖くて下を向きたくはなかったが、高さよりも怖いものが私達がいた場所に蠢いていた。

ゼラが冷たい目でそれを見て言う。


「砂漠でもないのに砂虫だなんて悪趣味な召喚獣ですね。それに私に召喚獣で挑もうだなんていい度胸です。」



目がないそれは長い体をくねらせていた。

ゼラは砂虫と言ったがそんな可愛いサイズではない。砂虫と呼ばれたものはサンドワームだろう。


大人が5人寝そべって並んでも足りないくらいには長い体に太さは直径2mはありそうだ。


皮膚に潤いは無く、表面は頭から尻尾の先まで段々になっていて、土色と茶色が混ざり合ったような色。表面には所々に棘が付いている。見たくもなかったが、首には見慣れた召喚証が痛々しく刻まれていた。


「グニー…。」


やはり襲ってきたのかと悔しさが滲む。

今はゴーレムに集中したかっただけ尚更だ。

サンドワームは目がないように見えるが私の方を向き、円光類特有の口を閉めた。


次の瞬間砂の嵐を私に向け放ってきた。

ゼラはなんなく私を掴んだまま宙を移動し避ける。

だが、サンドワームも私を追って口の方向を変えてくるため攻撃は止まらない。


「ロティさんを確実に狙うのですね。

嫌な砂虫です。とっとと終わらせ…」


ゼラが言いかけて止まる。

ぽかんとした表情でサンドワームを見つめている。私も同じく見つめた。



「…ゴーレムが…なんで…?」


信じられない光景だった。



下では冒険者や魔導師団と戦っていた5体のゴーレムが冒険者や魔導師団そっちのけでサンドワームを取り押さえている。


水のゴーレムは自分自身にサンドワームの体をのめり込ませて水を吸わせているようだ。

他のゴーレムもサンドワームの体を捻ったり潰したりしている。


口が水のゴーレムの中にあるためか声も出せずにもがくサンドワーム。

じたばたと暴れるのも虚しく、最後はあっけなく、酸素を取り入れられず大きな巨大を地面に転がした。



ゼラも私も呆然とその様子をただ見ていた。

ゴーレムは仲間ではなかったし、明らかに冒険者達を傷つけていた。

この平原だってゴーレムが開けたであろう穴だらけだ。


ゴーレムはサンドワームがくたばると冒険者達を見向きもせずにあちこちにあった穴の中に次々と埋まっていく。



まだ穴は残っているし、水のゴーレムが飛び込んだ穴は池みたいになっているし、平原は不恰好ながらもゴーレム達は全て消えた。



「どうなってるの…?」

「さっぱり…わかりません…。」


私もゼラも、そこにいた人達はただ呆然と立ち尽くした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ