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78.微力でも…。力になりたい。

その後は何度か昨日覚えた魔力制御と感情制御を繰り返し行った。

感情制御はゼラにも協力して貰い、特に魔力暴走が起きやすい怒りと悲しみの感情を魔法で私にぶつけて貰ってそれを制御する。


自分から湧かない感情を無理にぶつけられ、感情に煽られそうになりながらもなんとか感情制御も習得出来たようだ。



サイラスは顔を輝かせ上機嫌な様子で私の特訓をしてくれた。

朝はどうなるかと思ったが、サイラスのお陰で無事に解決出来たことに安堵する。



開始から1時間半経った頃、サイラスは自分のポケットから2つの腕輪を出して私に渡す。


「じゃあ、これをつけて下さいね。

盾の腕輪と魔法攻撃変換用腕輪です。片方づつ両手に付けましょう。」


昨日ルークがサイラスに渡したものだ。

違いは嵌め込まれている石の色の違いで盾の腕輪の方は青い石。魔法攻撃変換用腕輪は赤い石だ。


右手に魔法攻撃変換用腕輪、左手に盾の腕輪を着ける。

重くなく一見高そうなアクセサリーにしか見えない。


「まずは盾の方を試しましょう。指先に魔力を集めるような感覚でそれを腕輪に流す意識をしてみて下さい。」

「はい!」


こればかりは失敗が出来ない。

失敗したらこの値段もわからない高価な魔導具を壊れてしまう可能性があるだ。


慎重に言われた通りに魔力を流す。

腕輪の青い石が光る。



ーッボン!!


「わ!!」


魔力を流した途端に目の前に大きな青い盾が現れた。

盾は3m程、横は2m程だろうか。分厚く強固そうだ。

私が手を動かすとその盾も反応し一緒に動く。


「ちゃんと発動してますね!流す魔力は今の感じでいいですよ。じゃないと下手したら壊れますので。では盾をしまって次は魔法攻撃をしてみましょう。先程位の魔力を流して下さいね。」

「盾はどうしまえば…?」


「魔力を切ればいいですよ。」


サイラスそう言われ魔力を流すのをやめると盾はスーッと消え、石も光を失った。

便利だと思いつつも攻撃用腕輪に魔力を流した。


「…あれ?」


流してはいるものの反応がない。腕輪の赤い石は光ってはいる。

もう少し魔力を増やそうと意識を込めようとしたが、サイラスが慌てて止めに入った。


「ロティさん!これ以上流したら壊れます!一度止めて下さい!」

「は、はい!」


サイラスに言われ私も焦って魔力を流すのを止めると石は光が消えた。


サイラスとゼラと私は息を合わせてホッとした。

私の腕輪を見ながらゼラが話す。


「壊さなくて良かったですね…。

普通に使っても壊れないものなんですけどね、魔導具…。ロティさんは魔導具を使う時には絶対、魔力を弱める様にした方がいいと思います。」

「そうですね、その通りですね…。

魔導具は基本的に高価なものが多いですから。

そしてこの腕輪は使えないようですね。

ロティさん、スクロールは使った事ありますか?」

「あ、はい、本当に稀ですけど魔物に襲われそうな時とかになら。」


とはいえ、使っても2.3回くらいしかない。

スクロールだって充分高価なものだ。それを何個も使えるほどお金持ちじゃない。


サイラスは眉を顰め手を口元に寄せて、唸ったような声と共に話し始めた。


「なるほど…スクロールは一回切りのものですし、魔力も必要としませんからね。

もしかしたらロティさんは攻撃魔法全般使えないのかもしれません。

この腕輪もただ壊すだけになるかも…。」

「うっ…壊したくはないです…。」


「とりあえず一度ルークさんに報告しましょうか。」


サイラスはそう言うと自身が持っていた杖を上の方に掲げた。

杖の先端から魔法の光が溢れると鳥の形になった。


「ルークさんを呼んできて。」


すかさず昨日と同じ闘技場の左上ルークの所に飛んでいく。

1分も立たず魔法の鳥と共にルークが宙に浮きながら飛んできた。


サイラスとゼラが居るのに私を見るや否や抱きしめられた。


「ロティ!涙が止まったみたいでよかった…。気分の方は大丈夫か…?」

「ルーク…もうなんともないから大丈夫だから離れて…。」


サイラスとゼラの視線が痛い。さすがにここで抱きしめられるのは恥ずかし過ぎる。

私を抱きしめているルークの腕をぺちぺちと叩くが効果は見られないようで、私の話を聞かずにルークは話し出す。


「サイラス、呼ばれたのは何かあったのか?」

「ええ、ロティさんの状況説明をしなくてはならないと思って呼びました。


そのままで聞きます?」

「ああ。」


サイラスのにやけた口調が私の羞恥心を煽る。

ゼラの顔は呆れたような表情でルークを見つめていた。


サイラスは少しの咳払いをした後ににやけるのをやめて話し始めた。



「では、報告を。

ロティさんは魔力制御も感情制御も出来るようにはなりました。なのでそこに関しては良いのですが、問題は魔導具ですね。


盾の方は発動しましたが、攻撃の方は全く発動しませんでした。

魔導具自体の問題ではなく、ロティさんの魔力が攻撃に変換出来ないみたいです。

もし仮にロティさんに攻撃の物を与えたいならスクロールの方が良いかもしれません。

多少かさばりますけどね。


後は捕縛や睡眠系の魔導具の方を試すと良いと思います。」

「…なるほど。使えないとは…、壊す事は予想していたが、発動しないのは予想外だ。

助言まで感謝する。鞄の中を見てみないと魔導具があるかわからんな…。」


ルークが気不味そうにするとサイラスは顔を顰めた。


「ルークさん整理してないからですよ。なんでも突っ込むんですもの!パーティにいる時からあれほど」

ビィイイイーーーーー!!!!!!



唐突に警告音のような音が闘技場に鳴り響いた。

突然の事で音の大きさと音質に驚き、心臓が早鐘を打つ。




「ルーク!サイラス!」


アレックスの声がルークが先程来た方向から聞こえ、

瞬時に私達はそちらを振り向いた。


チェドの魔法なのか皆宙に浮き、素早く移動して此方にきてくれた様だ。

着陸するなり、チェドは険しい表情で私達に言う。


「王都のギルドからの緊急招集がかかったっす。

魔導師団及び勇者パーティの方々にも。


王都の約5キロ先の平原で複数体のゴーレムと交戦中との事っす、集められるだけの冒険者はもうそっちに向かってるそうっす。


先に交戦中のパーティの一部には負傷者もいるみたいっす。至急俺らも行くっす。

出来れば、ルーク団長にも、ロティさんにもお力を貸して頂きたいっす。」


「…。」


ルークも険しい顔のまま一向に返事をしない。


一刻も早くその場に行かなければならない状況だろう。 


焦る気持ちでルークを見つめるがルークは動かず話さず、少し俯いていた。

私と目が合うと苦い顔を見せる。その顔で私は悟ってしまった。


(私がいるから、グニーの事があるから返事が出来ないんだ。)



狙われて居なかったら、きっとルークは渋りながらも了解をすぐに出してくれただろう。

今答えが出せないのは、戦闘時に私を守りながら戦えるか考えているからなのではないのだろうか。


私がルークの足枷になっているような気がした。



ルークに視線が集まる中、ゼラがルークに向け口を開いた。


「私がロティさんをお守り致します。

サイラス様から事情はチェドと共に聞いてます。

ルーク団長の懸念材料はそれですよね?


今度こそ失敗しないようにします。

私はもう副団長でもありません。一団員ですが、今や1番下。ですが、ロティさんをお守りする力はあります。

絶対に傷付けませんし、ロティさん自身も魔力制御や感情制御が出来る様になったんです。

ロティさんの癒しの力は冒険者や魔導師団員に不慮が合った時には力を貸して頂けます。どうか許可を下さい…。」


ゼラは言い終わるとルークに頭を下げた。

それでも尚、ルークは渋るように苦い顔で考えている。



「っ行きます!」

「!?

ロティ!ロティ自身狙われているんだ!何かあったら…!」


私は堪らずルークから身を乗り出して行ってしまった。

ルークは私を咎めたがルークを見つめて抗議した。



「ごめん!ルーク!でも放っておけない…。

グニーに狙われてるのはわかってる、けど私の魔法で助けられる人がいるなら助けたい…。私はゼラさんにも守ってもらえる、ルークだって本当は行きたいんでしょ…?」


王国のために尽くしてきたルーク、同じ冒険者や魔導師団員達を出来れば死者の1人も出したくないのは同じ思いのはず。




駆け出したい気持ちでルークに訴える。

ルークは悲しそうな怒ったような顔で眉間に皺を寄せていた。


ルークはぎゅっと一瞬目を閉じると抱きしめられている腕にも力が入れられた。

目を開けると伏せ気味ながらもゼラの方を向き、ぽつりと言葉を出す。



「…ゼラ…守れるのか?」


それに対し、ゼラは真剣な強い眼差しで言い放つ。


「必ず。」



残念ながら私が完全にルークのお荷物になっているのはわかってる。

攻撃が出来ない弱い立場な上に、グニーに狙われているため、守られないと今は戦場にすら行けない。


ルークにだって、ゼラにだって迷惑を掛ける。


ルークには心配だって掛ける事は重々承知だ。

私が逆の立場なら溜まったもんじゃない。


我儘を言っているのはわかってはいるが、負傷者がいると聞かされてしまったら居ても立っても居られない。


ルークは伏せていた顔を上げ、不服そうな表情をしながらも口を開いた。



「行こう、さっさと土に還してやる…。」

「ありがとう!!ルーク!」


私が安堵して言うとルークは強く私を抱きしめ、誰も聞こえないように小さな声で私の耳元に呟いた。


「その代わり傷一つでも付けたら覚悟しておいて、ロティ。」



ぞくりと体が震えた。ルークの想いになのか、ルークの怖さになのか。

ルークが力を緩めると顔が見えた。



その少しばかり困ったような怒ったようなルークの顔が強く印象に残ってしまった。

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