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73.対人戦のルールとは…?

「何ということでしょう……!!こんなの…見た事ないですっっ!!」

「ひぇっ、すみません…。」



サイラスの目がぎらついていて怖い。

いつも掛けていた眼鏡を特訓前に外したから尚の事。


ゼラは初めハラハラとしながらずっと私達の様子を見ていた。一度も中断する事なく2時間は通して特訓をしていると思う。


杖を勢い良く振りながらサイラスは興奮気味に話す。


「謝らないで下さい!上出来です!!ああ、楽しいです!素晴らしい…。」


サイラスは私の隣で恍惚とした表情を浮かべている。

ゼラも途中からハラハラではなく、ただ驚いたような顔で私の特訓を見守っていた。

呆然と私が出す魔法を見つめてゼラが話す。


「凄いと思います…。悪い方の結果は予想していましたがこちらは予想外でした。

魔力制御をこの1.2時間で出来るとは思ってもみませんでした。魔法学校なら特待生レベルです…。」

「そ、それ程でも?」




特訓の始まり、私は自分が1番得意な回復魔法で魔力制御をする事になった。

というよりも回復魔法しか使えないのだ、それしか方法がない。


私が出来る魔法は回復魔法、高回復魔法、範囲回復魔法、毒消しの魔法だと伝えると、サイラスはまず私に手本を見せた。

範囲回復魔法を回復魔法の範囲に凝縮し、濃度を高めるように魔法を出すサイラス。


「ぎゅーって魔法を絞る感じで。

もう、押し込んで、押し込んで、出してみるって感じでやってみて下さい。」


などとかなりアバウトな説明の後に同じようにしてみてと言われやってみる。


そしたら出来てしまった。


「なっ!?一発!?ありえない!?」


ゼラが大声で驚く。

そこからと言うものサイラスはずっと目をギラギラ輝かせ、私に魔力制御や操作を教えてくれた。

かなりのアバウトな説明なのにすんなり魔法で実践出来る事に私自身驚く。


大きい範囲の魔法を小さくしていき、終いには指先に集めるように魔法を凝縮させていった。



始まって2時間、指先でなぞったとこだけ回復魔法を使う事も出来る様になった。


サイラスは私の手を握りながらうっとりとした顔で言う。


「やはり間違いないですね、ロティさんの魔法は古代形式の魔法から成るもので私達と形式が違うのですが、その難しい形式の魔法を制御出来てるのですから100点満点どころか1000点満点です。」

「古代?ん?そうなんですか?」


「今は古代形式の魔法の使い手はいないに等しいです。

難しすぎて主流ではなくなって、現代の魔法はもっと細かく区切られて使われるようになったのです。


以前記憶の魔女さんにあった時見せて頂いたのは古代形式の魔法でしたが…。

はぁ…術式が美しいです…。


回復魔法も私が使うものと違って効果も絶大なものですし、もう少し魔法を覚えれば治癒師になれますよ!」

「麻痺とか瘴気とかも治せるのはありがたいですね。出来れば覚え」

「是非!!もう覚えられるものは全て覚えて帰りましょうね!」

「サイラス様止まらないですね…。」



プラス1時間。合計3時間ぶっ続けて魔法を使った。あまり疲れを感じないのはただ魔力が多いからだろう。

まだまだ魔法が使える事が出来る感じだ。


だがサイラスはそうもいかないようだ。

私に教えるのと興奮状態のせいですっかり息が上がっている。


「はい、では、休憩に、しましょうっ!」

「サイラス様が興奮して1番疲れてますよ!大丈夫ですかっ!?」

「なんかすみません…。興奮させてしまって…。」


ゼラがサイラスの肩を押さえる。

薄ら笑を浮かべたサイラスは幸せそうな顔なのに目が見開いていて明らかに大丈夫ではない。


「ゼラさん!私は、平気です!久々に、こんな、興奮しました!はぁっ。はぁ。」


「ロティさん、私はサイラス様を落ち着かせますので、離れても大丈夫ですよ。

ルーク団長も対人しているみたいですし、覗かれても面白いかもしれません。

あああ、サイラス様、本当に落ち着いて下さい!」

「はぁ、はぁ〜。」


「じ、じゃあ、少し離れますね。」


私が居ても興奮を鎮められないだろう。

そそくさと私はその場を離れ、ルーク達の元へと向かう。


私達が闘技場の右下の方の場所で特訓していたのに対し、ルーク達は距離を取り左上に居た為、早足で走るように歩き近づいていく。


やはり対人中らしくルーク、アレックス、リニの姿が見当たらない。

ノニア、エドガー、チェドの3人と大きな魔物がいるだけだ。


昨日とは違い、ルークも真剣な顔で応戦している。

私に最初に気づいたのはさっき見た大きな魔物だった。

その後にすぐノニアが振り向いて笑顔で手招きする。


「ロティ、お疲れ様。順調そうだったからこちらは対人してたのよ。フェイが貴女の事気にしてるわね。」

「この子はフェンリルですよね?ノニアさんの子なんですね。」


「ええ、そうよ。フェンリルのフェイよ。

この子ロティの魔力が気に入ってるみたいね。」


フェイは尻尾をパタパタと振っている。

もふもふの白い美しく綺麗毛並みがノニアの愛情を物語っているようだ。

ノニアがフェイから私に視線を移しつつ話す。


「ロティ、出来たら回復魔法をフェイにくれないかしら?古代竜との交渉戦でフェイも頑張ってくれたんだけど、まだ疲れが抜けないみたいでね。

薬も魔法も嫌がるんだけど、ロティの魔法は欲しいみたい。」

「いいですよ。《回復(ヒール)》。」


フェイに回復魔法を掛けると座っていたフェイが立ち上がり私に頬擦りをしてきた。

柔らかい毛が顔に擦り寄るのが気持ちいい。


「も、もふもふ可愛いですね…。ふふ。」

「ロティが気に入ったらしいわ。ありがとう。」


ノニアがフェイを撫でながら微笑む。

その横からひょいとチェドが顔を出してきた。


「ロティさん、お疲れ様っす。サイラス様厳しくなかったすか?」

「いいえ、全然厳しくなかったですよ。寧ろずっと興奮しっぱなしで…。」


チェドは自分自身の腕を掴み震え上がっている。

冗談ではなく本気で怖がっている様子で顔色が悪い。


「ひぇ…。それも怖っす…。」

「どう足掻いても怖いんじゃないの!貴方、魔法学校でサイラスと同級生じゃなかったの?」


ノニアが呆れたようにチェドに言うとげんなりとした様子でチェドはノニアに言い返す。


「だから色々知ってて怖いんすよ…。」


色々とはなんなのだろうかと少し興味をそそられる。

顔色が悪いチェドの横からひょこっとエドガーが顔を出すと若干顔を赤らめ、ぎこちない笑顔を向けてきた。


「ロティさん、お疲れ様です。疲れているかと思いきや、意外とタフなのですね。」

「魔力は多いので、これくらいなら平気ですよ。」 


私は笑顔でかえすとエドガーの顔が更に紅潮した。

大きな体躯をまたも縮こめ目を泳がせて話す。


「うっ…。そうなんですね…。お強いですね…。」


そんなエドガーの様子は私しか見ていないようで、

あ、とチェドが声を漏らした。


チェドの方を見るとルーク達を指差している。

屋内なのに風を感じた。チェドの指差す方向に向け髪が引っ張られるように浮く。


「そろそろ終わりそうっすね。団長が…あーあー…。」


ルーク達を見るとそこには風の渦が出来ていた。

風の渦を見ていると中から何が此方に向かって飛び出してくる。



目の前にどさりと落ちてよく見るとボロボロになったアレックスだった。

地面に大の字になって軽く息を乱している。


「はぁーーー!酷い!ルーク!あの中に雷隠してた!危うく焼き焦げるところだった!風だけでも厄介だったのに!あ、ロティお疲れ!」

「…1対2でも勝てなかった。悔しい。」


どこからかリニの声もした。

アレックスの影が僅かに揺れるとそこから手が這い出て、アレックスの体を叩く。


「アレックス…もう少し出やすいようにして。」

「はいはい。」


アレックスは体を横に向けるとアレックスの影からリニが出てきた。

リニの使える魔法なのだろう。


「ロティ、お疲れ様。心配なさそうで良かった。」


長い前髪の間から琥珀色の瞳が優しく私を見ていた。

返事を返そうにも2人の姿を見て私は唖然としてしまう。


血だらけの傷だらけだ。

もしかするとルークもではないのかと思い、先程の風の渦の方を見るがもう渦は消えて無くなっていた。


宙に浮き此方に降り立とうとしているルークが見え、安心するのも束の間。また私の血の気が引く。

私の前にふわりと降りてくると嬉しそうにルークは微笑んだ。


「ロティ!こちらに来ていたのか。気付かなくてすまなかった。大丈夫か?」

「大丈夫じゃないのはルーク達の方だよ!?傷と血まみれだよ!?回復魔法かけていい!?」


ゼラとの対人では傷一つなかったものの、今は顔や手には切り傷が、服はアレックスとリニの比ではないものの所々切れている。


大の字に戻ったアレックスが手を挙げて返事をした。


「ロティお願ーい!」

「《範囲回復(エリアヒール)》」


すかさず範囲回復魔法を使うと体の傷はみるみる消えていく。

回復が終わるとアレックスは勢いよく飛び起きた。

リニも手を開いたり閉じたりしている。


「お、ありがとう、ロティ!お陰で元通り…以上になった感じだな。」

「能力強化魔法でもかけられたようだ。」

「普通の範囲回復魔法ですよ。治ってよかったです…。」


服は直せないものの、体の傷は回復できたようで安堵した。

ルークを見ると微笑みながら私に手を差し出す。


「ロティ、昼食も兼ねてどうなったか教えてもらえるか?」

「そうだね。」


「じゃ、ここで食べよっか。鞄に色々入ってるでしょ。」


そうアレックスが言うと自身の折りたたんだ鞄を出し、大きいシートを広げた。

そこに色々と食べ物や飲み物を出していくとまるで今から宴会でも始まるのでないかと思わせるものになった。

❇︎サイラスの眼鏡は見えすぎる魔法の制御に使用している。眼鏡を掛けていないと勝手に魔法の解析までしてしまう。

普通は発動しても見えない魔法の術式や、展開した魔法陣の強さや種類まで見えてしまうサイラスの為に作った専用眼鏡。魔導技巧師ベム特製。

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