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72.頑張らなくちゃ!

再び私達は席に座った。


今度は入れてくれた紅茶を飲むルーク。

顔色が良くなった分、冷静に見える。スザンヌは柔らかい口調で話し始めた。


「多少は落ち着いたようだね。」

「ああ、迷惑を掛けてすまない。」


「迷惑と言うほどでもないね。

ロティは特殊なんだからそれについていけるだけ良いってもんなのに、全てを受け入れるんだからロティはまあ当たりを引いたもんだよ。


愛はかなり重たいけど。」

「まだ重たいと感じるほど出してすらないと思う…。」


「どうだね、ロティ。」


愛情表現は激しいけど、重いとはどう言う状態なのかイマイチわからない。

スザンヌに尋ねられ、ルークがくれる愛情表現が頭をよぎり少し顔に熱が篭りながらも答える。


「愛情表現はね、多少あれかもしれないけど…嫌じゃないし、重い…はイマイチわからないから今のところ重くないんじゃないかな?」

「ロティがいいならいいがね。」

「あ。」


ルークが声を上げて、スザンヌを見つめる。

真剣な顔でルークはスザンヌに頭を下げた。


「スザンヌ…報酬は言われたものを用意する。だから思い出させて欲しい記憶がある。」

「…なんの?え、あ!!ちょ!」


きっとお酒を飲んだ時の記憶だ。

羞恥心からスザンヌにお願いする事もないだろうと思っていたが、違ったようだ。

なんとも恥ずかしい記憶を思い出さなくても良いと思うのだが、ルークはそうは思わないのだろう。

本当にスザンヌに言うとは思いもしなかった。

後悔しても遅い。


「この惚気夫婦め…。あんたに貸しを作るのは悪くないから思い出させてやるけど、酒にはのまれるんじゃないよ!」

「…本当にすまない。」


呆れ顔で怒るスザンヌはとっくにお酒を飲んだ時の記憶も見たのだろう。そしてその記憶がない事もわかるのか。スザンヌ凄い!と褒めたいところだが、そんな余裕今の私にはない。


真剣な顔なのに嬉しそうなルーク、私の顔はきっと真っ赤だ。



スザンヌは掌から赤い魔法の光を出すとルークに飛ばすと直ぐに青い光がスザンヌに還る。その青い光をまたルークに飛ばすとルークが一瞬だけ光った。


みるみるうちにルークの顔が赤く染まっていく。


「…あんたらどっちも林檎みたいになっとるね。けっ、あーあ、ワタシにも恋が転がってこないかねぇ〜。」


頬杖を突きながらスザンヌは深いため息を吐いた。





夕方まで色々話をした為、夕飯はスザンヌの所で3人で食べた。

ルークの鞄の中にあった食材で私とスザンヌが作り、楽しく食事が出来たのは嬉しかった。


多分5日後に来ると伝えてこの日は帰ることになった。



◇◇◇



昨日の夜は今日に備え早めの就寝をしたので、準備は万全だ。残念ながら前世の夢も見る事はなかったが。



今日から頑張って私は魔力制御と感情制御を叩き込む為に意気込む。

冒険で使っていた服装に着替え準備は万端だ。


着替え終え、ルークの元に行くとルークも準備が終わっていたみたいだ。


「ロティ、今日からは魔導師団の本拠地に転移する。そこから闘技場に向かう形になる。」


「わかった。あ。」


そういえば転移魔法の事を聞いておきたいのをまだ聞いていなかったため、ルークに尋ねる。


「ルーク私って転移魔法は使えないのかな?」


「転移魔法は魔導書から覚えるのだが、あれは結構理解が難しい。古代文字だし、原理を理解しないと魔法としては使えないのだが、見てみたいならサイラスの講義が終わった後にでも見てみようか。」

「あ、じゃあそうしたいな。」


「わかった、とりあえず今は俺に捕まって。」

「うん。」


返事をしてルークの腕に捕まると、ルークは直ぐに転移魔法を発動させた。




この間来た魔導師団の本拠地内のホールに着く。ホールから続く廊下を通り以前と同じように進む。



闘技場に着くと既に数人の人がいる。

遠くてはっきりはわからないが、サイラス達で間違いはないだろう。大きな魔物みたいなのも見えるが何かわからない。


「ロティ。」


私の方に両手を差し出すルークに、片方の手を握りながら話す。


「ルーク、この間サイラスに手を繋いで移動させてもらったからそうして欲しいな…。出来れば。

抱き抱えるのは皆がいないところにして?」

「…わかった。」


僅かに渋る感じがあったが、了承を得てホッとした。

ルークが私の手を握り返すとふわりと体が浮遊する。


前回と違いあまり高く飛んでいないので助かった。やはり闘技場に居たのはサイラス達だ。私達を見て手を振り朝の挨拶をくれていた。私も手を振り挨拶を返す。



闘技場に降り立つとそこには勇者パーティメンバーとチェド、ゼラが揃っていた。

後は大きな魔物だと思っていたのはフェンリルのようだ。美しい白い毛並みに黄色の瞳、首周りのサイドの毛だけ燃えるように赤い。

見惚れているとサイラスがにこりと微笑む。



「おはようございます。ルークさん、ロティさん。今日からよろしくお願いしますね。」


サイラスは頭を軽く下げ挨拶をした。

私もそれに続いて頭を下げる。


「おはようございます!よろしくお願い致します!サイラス先生。」

「まあ…先生だなんて…何年ぶりでしょう…。腕がなりますね…!」


うっとりと嬉しそうにサイラスがほおに手を当てながら言うと、顔を引き攣らせてチェドは嫌そうに話す。


「ひー…。ロティさん無意識にサイラス様に火をつけたっすね…。怖…。」

「もう!この間から怖い怖いって失礼です!チェドさん!」


可愛く怒るサイラスなのに、チェドのサイラスを見る目はまるで魔物でも見ているかのようだ。

少し頬を膨らませているサイラスが怖くは見えないと考えているとジリジリと近寄っていたゼラが私に耳打ちした。



「…サイラス様、魔導師団員からは裏番って呼ばれてるんですよ。勇者パーティと一緒の魔物討伐の時とかルーク団長よりも討伐対象には容赦なくて…。」

「ゼラさん、すっかり元気になったようで本当に良かったです。ゼラさんは今日一日私と一緒にいましょうね?」

「…。」


耳打ちなのに、しかも結構小さめの声なのに聞こえたのだろうか。サイラスは笑顔だが目は笑っていない。

ゼラは顔から血の気が引いていた。



区切るかのようにサイラスは手を2回パンパンと叩く。


「さ、時間が惜しいです。早速スパルタで始めましょうね!」

「は、はい…よ、よろしくお願いいたします……。」


「あちらに行きましょう。」


サイラスが指した方は闘技場の端の方だ。

そこで特訓をするのだろう。

私は不安になりながらもサイラスの後をトボトボとついて歩いて行った。

ゼラもまた私と同じような足取りで私の隣を歩く。



「ロティ!頑張るのよー!大丈夫よ!サイラスはオーガのように怖いけど、なんとかはなるわー!ならない時もあるけど。」

「ノニア…しっ!言っちゃダメだ!」


「アレックス…もう聞こえていると思う。最悪の場合には自分が助太刀する。」

「リニ、私もその時は行きますっ!」


「ルーク団長は行かないんすね?」

「…俺が居たらきっとサイラスのスパルタを止めてしまうからな。ロティを信じて待つ…。頑張って欲しい…。」

「ロティさあーん、頑張ってっすー!」


後ろから聞こえる不穏な声援に余計に不安を煽られたような感じがした。

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