68.味見はアウトか…?
ルークside
64話のルーク。
スザンヌと別れ屋敷に戻った。
屋敷に帰ったら話をしたいと言っていたが、もう話してくれるのだろうかとロティを見つめた。
ロティもまた俺を見たがきょとんとした可愛い表情を見せている。
まさか忘れてしまったのではないかと一瞬焦るとロティが尋ねてきた。
「どうしたの?ルーク。」
「帰ったら話を、と言っていたから。」
ロティは笑っていた。
どうやら焦りすぎただけのようで胸を撫で下ろす。
「ふふ、確かにそうだけどこのままここでより座ってゆっくり話したいな。それにこのドレスも脱ぎたい…。」
目線をロティはドレスに移した。
ロティは慣れない格好で疲れたのだろうが、俺の欲に少し付き合ってもらいたくて駄々をこねる様にロティに言う。
「ドレスはそのままがいい。」
明らか様に脱ぐ気満々だったのを止められ顔を引き攣らせている。
だが譲らない。なんとしても丸め込まなければ。
「えー、でも結構立ったり座ったり繰り返してるから皺にもなるよ…。」
「魔法で直せばいい。気にしないでくれ。ロティ。」
このまま横抱きで連れて行ってしまおうとロティを抱き抱える体勢を見せると混乱しながらも嫌がられた。
「ん?え、さっきも歩いていたから歩くよ…。」
「嫌だ。」
こうなったらまた風魔法を使うしか無いのかと考え始めた時にロティは恥ずかしそうにしながらも諦めた様子で口を開いた。
「…まあ、誰もいないから。」
こうもすんなり行くとは思わず一瞬驚き、嬉しさが込み上げる。
ロティを抱き抱えいつもの部屋のソファにそのまま座る。
距離が今日1番で近く、密着しているためこのまま暫く堪能したい。
「降ろしてくれないの…?」
「今日一日俺はロティに触るのを我慢していたからこのままがいいのだが、嫌か?」
「嫌じゃない…。」
「ならこのままで…、ロティ。」
「…ん。」
そのままロティにキスをした。朝とは違い嫌がらずキスを受け入れてくれる。
離れてはまた戻るの繰り返し。
小さく漏れるロティの息が可愛くて仕方ない。
一度大きく離れると目を開けたロティは蕩けた目をしていて、またすぐにキスしたくなった。
だが少しだけ俺の胸を押し距離を取り、上がった息を整えたロティは真面目な顔で俺に話し始めた。
「…ルーク。
私が今から言う事で、ルークがもし私を嫌ならきちんと今後を考えようね…。」
その言葉に眉に皺が寄ってしまう。
嫌になるつもりも嫌いになるつもりもない。
ただロティが消えていなくなる存在じゃなければいいと願っている。
「俺がロティを嫌になる話なんてどんなものか…。
聞いてもいいのか…?ロティ。」
「……うん。
嫌われてしまいそうで、怖いけど…。
私ね…。前前前世は【魅了の魔女】だったの。」
(スザンヌ…。魔女じゃないって言ったのは今は、という意味だったのか…?)
そう思い驚きを隠せなかった。
だが今は前世の記憶すら、半分くらいしか思い出せていないのにそれは覚えているのだろうかと疑問ができる。
それを尋ねるとロティはまた話し始めた。
「というより前世もその前も、魅了の魔女のことについては覚えていないの…。
魅了の魔女だった時の記憶はスザンヌに消してもらったらしくて、私は何も覚えてない。
スザンヌから聞いた話では人を繋ぎ合わせたり、人の魅力を高めたり、良いところを探し当てたりする魔法を使えていたんだって。
だけど、次第にその魔力が抑える事が出来なくなっていったんだって。
魅了の魔力が止められなくて、そんな私の奪い合いになってしまって。
それで怪我人や死者まで出した事に当時の私は耐えられなくて、記憶をスザンヌに消してもらったんだって。
どうやって魔女をやめたのかはわからないけど。死んでしまった事は確からしい。」
ロティ自身魔女だった事を覚えていなかったのか。
それは問い詰めなくて良かったと思った。
覚えていない話を尋ねたところでロティは困るだけだっただろう。
スザンヌが俺に口止めしたのは俺が記憶を軽んじていたのと、ロティに覚悟が備わっていなかったと言っていた。
記憶を軽く見るのはとうの昔に辞めたから良いとして、ロティの覚悟とはなんだろうか。
「…まだ私、魔力は魔女だった時のものがあるみたいだし…。
もしかしたら魅了だって無意識にかけてるのかもしれない…。
ルークも、私に魅了されたから好きなんじゃないのかなって、不安で…。嫌われるかもって…。」
覚悟とは嫌われる事にだったのか。
肩の荷がどっと降りて溜息と共にロティを抱きしめると一気に安心に満たされる。
「そんな事だったのか…。」
「そんな事!?
結構重要な話じゃない!?んんっ!?」
ロティに付けていた頭を上げキスをした。
リップ音と息だけが空間に響いたからか、ロティは唇を離すと顔を真っ赤にさせていた。
「確かに魔女だったと言われたら色々意味がわかるかもしれないな、魔力の事も容姿のことも。
まぁ、まだ判らないことも多いけど、1つ言えるのはロティが魅了の魔女だろうが、普通の女の子だろうが、俺はロティを愛してることには変わらない。」
「無意識で魅了の魔力で魅了状態にあるかもしれないのに?」
ロティに魅了されているならそれでいい。
互いに想い合っているならいい。
言葉よりも先にロティの耳や首筋にキスをした。耳まで赤くして可愛くて堪らない。
頬や頸にも本当なら余すとこなくキスの雨を降らしたい。
最後に短く唇にキスをしてロティに伝える。
「それならそれでいい。魔女だろうが何だろうが俺はロティしか興味ない。ロティが俺だけ見てくれるならそれでいい。他の奴を魅了しなければ…。」
もっと、もっと、深いキスを求めてまたロティに近づこうとするとロティの両手が俺の頬を押さえてしまう。
「ル、ルーク…。キスしすぎ…。」
こんなの序の口だろう。まだまだ足りない。
ロティの手を俺は両手を使い優しく剥がすと、右手一本でロティの両手首を捕まえ、ロティの胸の前あたりで固定した。
左手は頭の方に回りロティを捕らえる。
「まだ、足りない。」
「なんっ。」
それだけ言ってまたロティの口を塞いだ。
深いキスが苦手なのかロティは少し苦しそうに息を乱す。それでも尚辞めてあげられないのは真実を知った今、ロティを求めてしまっているからだ。
食べたい。
このままロティを俺のものに出来たらどんなにいいか。
そんな事を考えているとロティが俺の胸をグッと押して距離を取る。
息が上がり潤んだ瞳は完璧に俺を煽ってる。
一生懸命息を整えようとしているためロティをじっと見て待つ。
早く続きがしたいと思ったが、ロティは息を落ち着かせながら話し始めた。
「はぁ…。ルークはやっぱり私の事おかしいと思っていたの…?」
「おかしいというよりは謎だったが正解だな。
なぜ容姿は前前世から同じままなのか、なぜ記憶を保持したまま転生できているのか。
人とは違う魔力の量も気にはなっていた。」
「だよね…。」
「最悪…神とか女神とかそのかと思っていたんだ。
突然消えていなくなってしまう存在なのではないかと不安だった事もあった。
サイラスとゼラに魔力の事がバレてしまって色々考えていたらロティを置き去りにしてしまうし…。」
ロティが居なくなってからというもの不安で不安で仕方なかった。
ロティの言葉を信じて待っては居たが、その長い転生期間は色々な事を考えるのには充分すぎた。
それに魔力の事だってバレたくはなかった。
この小さな体に秘められた力がどれほどのものなのか、知るのは俺だけでいいのに。
ロティの肩のドレスをゆっくりと下げた。
「そう言うことだったんだね…って、ちょっと待ってストップ。なにをして…。」
完全にバレたみたいでロティに俺の手が止められる。
離されないと続きが出来ない。
懇願するようにロティを見つめたが、ロティもまた抗議するかの様に話す。
「ルーク…約束したよね?私が思い出して神様に誓ったらって…。」
「…。
誓った…が、ロティの前世の関係を超えるまでのことはしないとも言った。
要は越えなければ良いわけで…。」
ロティを少し齧るくらいも駄目なのだろうか。齧るといっても痛いものではないのだが。
この欲をすぐに満たすことはできないが、多少篭もった熱を下げる効果位はある。
全く止める気がないのだが、ロティは続けて抗議する。
「だっ!だけど今日は疲れたよっ!?ご飯も食べたいし、休みたいなっ!」
「これは休みに入らないのか?」
俺にとってはかなりの癒しの時間なのだが違うのだろうか。こんなに可愛くて、綺麗な恋人を前に我慢しろというのは酷と言うものだ。
右手はロティに取られているが、左手は生きている。
その自由な左手でロティの長いスカートに触れ、捲し上げようとすると勢いよくロティは俺から離れてしまった。
「心臓が凄く働いてるから入らないっちょっと!これ以上もう駄目!一回終わり!着替えるー!」
そう言うと逃げ出す小動物の様に部屋から飛び出して行った。
「生殺し…だな。」
ロティに触れて満足したはずがかえって足りなくなるとは思わずポツリと誰も聞くことのない不満を口にした。