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66.この手から。

引き続きルークside

62話のルーク。

教えるのは明後日からの開始という事に決まりこれで解散となった。


廊下を歩きながら何度も考えた事を再び考え始める。



再会してからずっとこの疑問は付き纏っていた。

何故姿が変わらないのか、記憶は何故保持したままなのか。魔力の量は何故多いのか。

前前世で幼い時から呪術、解術を使えた事は関係あるのか。


人間の常軌を逸しているがそんなこと些末な事だった。

俺はただロティと一緒に居れれば良かった。

正体がなんであれ、俺の前から消えなければそれで良かった。


出来れば俺だけがロティの事をきちんと知れていたら良かった。




なのにあの女がそれを邪魔した。

ロティを殺し、俺達を強制的に引き裂いた。

俺の記憶がない時に少しでもあの女に気を許したのが間違いだと痛感しても遅い。

俺から手は出していないものの、拒否も否定もしなかったのは俺が悪いのだろう。


とっとと捕まえて今度こそ始末してロティに安心を与えたい。

誰にも奪われたくない。



苛立ちながら廊下を歩いたせいか気付けばもう通信魔導具がある部屋の前まで来ていた。

ふと隣を見るとロティの姿がない。


「!!」


やってしまった。とうとう恐れていた事を。

苛立ちがピークに近づくとと先程の説教のように集中が一点になる。


1番大切なロティを置き去りにするとは何事なんだ。馬鹿か、俺は。



早足で歩いただろう廊下を走って戻った。

王宮で安全度は高いが、ロティを1人にすべきではない。どうか無事でいてくれ。



◇◇◇



「どうか少しだけでも時間を頂ければ…良い紅茶がありますし、美味しい焼き菓子も。」

「名前も本当の名を教えて下さい。貴女を夜会でも見た事がない…。こんなに美しく綺麗な人がいたら皆虜になりそうなものですが…。」


「…お茶はしませんし。…名前はロティ・キャンベルです。嘘じゃないです…。お願いなので話を聞いて…。」


近衛兵2人がロティの側に居たのを見て安心と怒りが募る。


(ロティは俺のだ。お前らなどにやるか。)



早足で歩み寄るとロティがすぐさま気づいた。顔をぱっと明るくさせたと思ったら慌てて俺の腕を引き、近衛兵の元から離れた。


「ロティ、少しあの近衛兵に話を」

「元はと言えばルークが置いていってしまったのと、私がついていけなかったのが問題なのだからあの人達に怒る事もないでしょ!

そんな怒った顔しないの!」


心臓を矢で射抜かれた様だ。

だが、悪いのは全て俺でついてこれなかったロティは一切悪くない。


「ロティッ…本当にすまない…。」

「大丈夫だよ。」


「いや…あり得ない事をした、1番大切なロティを置き去りにするだなんて…。」

「…いや、あの。大丈夫…。」


「1人にさせるだなんて失態だ、償うからして欲しい事を言ってくれ…。」

「…考えておくね。」


「本当にすまない!」

「…もういいよ、別に。」


ロティは心なしか顔を赤くさせている。

俺は許してもらえない様子に顔が曇ってしまう。あ、と声を漏らすロティが困った様に俺に言ってきた。



「…追いかけている時に転びそうになっちゃって。その時に知らない男性に後ろから支えてもらって助けてもらったの。」


体に雷でも落ちたようなショックだ。

置き去りにした挙句、転びそうになったのを他の奴に助けられてしまうとはなんて格好が悪いのだろう。


自分に苛立ちと呆れと失望とでロティに謝罪の言葉を幾度となく伝えた。

だがロティは気にしてないのか自分の足とスカートを見て難しい顔をしている。


「《回復(ヒール)》」


回復魔法を掛ける姿からどこか痛めたのだと思い、俺の顔からサーッと血の気が引いていく。


「ロティ、どこか痛かったのか…?」

「足がちょっとね。でももう大丈、ひあ!」


足がと言われた時に体が勝手に魔法を発動していて、でももう、の時点で発動した魔法をロティに向けていた。


すぽんと俺の腕に降りたロティは驚きと恥ずかしさからか顔を紅潮させていた。


「ルーク!大丈夫だから降ろして!」

「…。」


そう言われても大丈夫じゃないのは俺の方だとは言えない。

ロティを何かで俺に縛ってしまいたい。

そんな馬鹿な事を考えてしまうほど俺の頭はパニックとショックを受けていた。


ロティの事を考えてロティを放置するなんて本末転倒だ。


ロティの事をもっとちゃんと知る事ができれば俺は安心出来る。

けれど、ロティは話したくない様に見えた。

前世に一度記憶の事を聞いた時にも動揺を見せていた。

強要して聞くこともないのかとその時はすぐに諦めたが、出来るなら知りたい。


色々考えているうちに顔に出てしまっていたのだろう。ロティがおずおずと聞いてきた。


「ルーク…。どうしたの…?ずっと何か考えているみたい。」


考えている。いつだってロティの事を。

こんな顔見られたくなくて少し伏せてロティに伝えた。


「…ロティに、どこまで聞いていいのか分からなかった。


ずっと、ずっと前からロティについての疑念があった。

ロティが前前世を覚えていた事も…。変わらないその姿も。



普通ならあり得ないのに何故ロティは前世を覚えていたのか、と何度も追及したかった。

だが、聞くのが怖くて聞けなかった。



嫌われたくなかった。


色々な可能性を考えたが、明確な答えが判らない。

いくら考えても不安ばかり募る…。


ロティからの答えが聞きたい…。


愛している人を知りたいのは強欲なのだろうか…?」


遂に俺から言ってしまった。

本当は待ちたかった。我慢出来なかった俺をロティは呆れるだろうか、怒るのだろうか。


見つめているとロティが俺の頬に触る、その手が好きでしょうがない。

何度この手に救われたのかわからない。

手に擦り寄ると優しく微笑むロティ。


「スザンヌに少しだけ…相談させて…。」


その口から少し希望のある言葉が聞けて、俺は安心してしまった。

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