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65.俺だけ知っていれば良かった。

ルークside


50話〜61話辺りのルーク。

見た瞬間失敗だと思った。



自分色のドレスを着た彼女を今すぐ寝室に閉じ込めたい。


閉じ込めたら最後、数日は部屋から出してあげる事が出来ないだろう。

本気でそうしたい俺はロティと再会してから抑えが効かなくなっている。


まずいと思う気持ちの一方、最後までに至らなければと思う気持ちもある。



部屋に連れ込む事は出来ないにしろキスだけでも、と思いねだると化粧が崩れるからと嫌がられた。崩れる程のものをして良いのかとかえって変な妄想を駆り立てられてしまった気分だった。


もう早急に用事を済ませて帰りたい。

早くロティを齧りたいと思いながら王宮へと向かった。



◇◇◇



陛下にもアレックス達にと滞りなく会うことが出来たし、魔導具も貰った。

魔導師団員達もさっさと退団の意向を告げれば済むだろうと思っていたのは大きな誤算だった。


ゼラがロティに言ったことが俺の癇に触ることを言ったことも。

5年前はもう少し可愛げがあったと思ったが、どこへ消えたのやら。

俺に対人を挑むほど屈強になったらしい。


実際対人はここ数十年と負けなしだがゼラはわかっていっているのだろうか。

わかっていなくともロティに減らず口を叩けるくらいなら一度軽く潰しておこう。



◇◇◇



悪魔は予想外ではあったが完全な悪魔じゃなかった分、力も弱く遊びにもならない。

だが完璧な悪魔なら多少は手こずったかもしれない。

あの時の嫌な記憶が呼び起こされそうになるのをチェドに説教しながら払いのける。


説教に夢中になり過ぎてロティを放置してしまった事は反省点だ。

少し怒った様な顔で近づくロティは俺の心配をして、体の至る所をチェックした。


傷などないのだが、ロティは自分の目で確かめたかったのだろうか。

確かめ終わるとホッとした様子で俺を気遣ってくれた。


抱きしめてキスをしようかと手を伸ばすがまたもや阻止される。

朝から阻止されてロティに触ることが出来ずにいてもやもやが溜まってしまう。


しかも自分の悪口を言った相手の事を心配し出したロティ。

ゼラの状態を見ると放っておけないのだろうが、そもそも突っかかってこなければこうもならないし、これでも手加減したのだ。

俺はさらさら悪夢を解く気などない。


チラッとロティがこちらを見るのが可愛い。

俺にゼラの魔法を解いて欲しいのだろう。

今ここでキスしたらきっと怒るだろうが、言ってみるべきか悩んでいるとサイラスがロティの手を取りながら言った。


「ロティさん、ゼラに回復魔法を掛けてくれませんか?」


しまった、と思った。

サイラスは鑑定魔法でロティの魔力の量を見たのだろう。

先程はどうやってここまで来たのだろう。

すでにその時からサイラスに知られていたのか?


説教をしてロティを見ていなかった事が悔やまれる。


ロティの魔力の量を俺はきちんと知らない。

だが前世、前前世を考えると尋常じゃない事はなんとなく想像していた。


だがサイラスは何故ロティに回復魔法をかけさせようとしているのか気になり行末を黙って見つめていた。



「《回復(ヒール)》」


ロティの回復の緑の光がゼラを包むと、ゼラの顔色が一気に変わった。

唸りは消え呼吸は落ち着き、顔色は俺と戦う前より良くなった。





俺はとんだ誤解をしていた。


ロティは回復役だけしか出来ないと思っていた。現に本人もそう思っているだろうがこれは違う。


俺はサイラスを見つめ名前を呼ぶが、サイラスはじっと見つめ返すだけで返事をしなかった。



(ここでは言うなということか…。有り難いか…。)


サイラスは瞬時に判断してくれたのであろう。

ロティの魔力が王国の脅威になるレベルだということに。だがそれを口外しないようにするつもりなのだろう。


先程の魔法も観客席からは回復魔法と覚醒魔法をかけた様にしか見えないだろう。




起きたゼラはやはり対人した事を後悔しているようだった。

だがゼラにとってはこの対人は必要なものだったのかもしれない。

自分の力量を知らずにトップになんて立つべきではない。


除隊もあり得る中、ゼラの態度と今後への期待で降格処分にはしたが、ゼラも理解はしているようで安心した。


ロティとサイラスに礼を言う様言うと、ゼラもまたロティと握手してしまった。



(…礼だけで良かったのに。)


折角の良くなった顔色がみるみる青白くなりロティの手を逃さない様捕まえている。


サイラスは俺に真剣な顔で言う。


「ルークさん、お話がしたいのですが。出来れば今ここにいる人だけで。」


「………。ああ、手短になら。この後も用事があるからな…。」


(出来れば誰にも知られたくなかった。

俺だけがロティを知れればそれでよかったのに…。)



そう思っても時間は戻る事などなく次の話し合いに向け観客席へと5人で移動する事になった。



◇◇◇



観客席の隅の一角でサイラスは話し始めた。

内密にしてくれたのはありがたい話ではある。

話が悪戯に広がれば無理にロティを捕まえる奴も出て来るかもしれない。



サイラスの言う事はほぼ正しい事だった。

もし仮にまた何かの拍子で魔力暴走が起きた時にはどんな風になるかわからない。

この魔力の量での暴走は絶対に避けなくてはならない。


だがサイラスが幽閉と言った瞬間に思い切り睨んでしまった。


「そんな事俺が許可するとでも?」


「ルークさんの感情の問題ではないのです。

何百万人、何億の命が曝される危険の話です。

仮に魔力暴走を起こさなくてもロティさんが他の国に攫われでもしたらそこで魔力を悪用されるかもしれないのです。」



理解している。

サイラスだって意地悪を言っているのではない事も。

俺に次ぐ魔導師だからこそ、俺が居なくなり王国を守る魔導師の1人として切り捨てられない可能性は無視できない。


チェドやゼラだってそうだ。

魔導師団は有事の時に一番最初に行かなければならない。だからこそサイラスはこの2人を話に混ぜたのだろう。

ゼラは俺に降格処分させられたが、実力としては魔導師団の中では1.2を争う魔導師だ。

何かあった時には先陣をきる。


そんな事を考えているとロティがふと、提案を出してきた。


「魔女になればどうにかなります…?」



俺の心臓が跳ねた。

以前はロティの正体の一つとして考えていた事だった。


実際、魔女はなりたくてもなれない。

特化した魔法と長命。

スザンヌにも魔女の成り立ち聞いた事があった。


ロティの正体が知りたいが為に何度か尋ねた沿線上の話であったが、ロティの正体については頑固として口を割らなかったし、知っているのかもわからない。

魔女についてもかなりはぐらかされた。


俺が聞いた話は必要な時に魔女は生まれる事、そしてその生い立ちは不幸な事が多い。

決め手はロティは魔女ではないと言っていた。



その詳しい理由も内容も教えてくれなかった。

気まぐれなスザンヌだが、教えないと思っている事は絶対に教えず譲らなかったため諦めるしかなかった。


だがロティは魔女じゃないとだけ教えてくれたのは貴重な情報だ。


ロティの正体を仮説にする。

幻、幻覚の類、人族以外の何か、実験などで魔力を高められた人、呪いによるもの、聖女、神や女神の類などを考えたがどれもしっくりこない。


幻にしてはロティを見る人はロティを認識できているし、前世から続く幻などないだろう。


人族以外の族でもしかしたら人に近く、魔力が膨大な者がいるかもしれない。

だが、100年以上生きてはいるがそんな者は出会わなかった。


実験や呪いも辻褄が合わない。


聖女はかなり当てはまりそうだが、解術だけではなく呪術も使えるあたり違うのではないかと思う。

呪いが使える聖女がいたらそれは聖女ではないだろう。


残るは神などの存在。

人の形をした中身が神であったなら魔力は納得がいく。

創造主たる神は何がどうあっても不思議ではない、だからこそ怖さがある。

ふと、いつか消えてしまうのではないかと。

何かの使命で今は人になっているだけで、その使命が終わったら消えてしまったら…。



そんな妄想だけで酷く絶望を味わう。



1人考えに耽っていると、サイラスが閃いた様に言い出した。


「でしたら!

超スパルタで魔力制御を覚えましょう。

私がロティさんの講師になります。感情制御の魔法も教えますから。3〜5日あれば大丈夫ですよ。」


顔が歪んでしまう。

サイラスは普段は優しいが、魔法や戦闘の事になると人が変わってしまう。

サイラスは教え方は厳しいかもしれないが、的確にハイスピードで教えてくれるのは間違い無いだろう。


俺が魔力制御を覚えたのはそれこそ前世のロティが居なくなってからすぐあたりで、誰にも頼らず独学で覚えたもんだから時間がかかってしまったのもある。


俺が教えてもいいが、脱線したり、教えるのに手を抜いてしまうだろうからロティの講師役には向かない。


サイラスの講師は以前魔導師団でもその力を発揮し、技術の向上を図れた。

だがその度にサイラスに怯える者が出てしまい、怖がられるのは俺以上だろう。



ロティが無事ならいいがと心配をしてしまったのはサイラスには言えない事だ。

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