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61.爆弾じゃないよ…?

ルークとゼラの対人戦に誘発されたのか、闘技場内で魔導師団員同士の対人が繰り広げられようとしていた。

勇者パーティのサイラス以外のメンバーも混ざっている。


先程の規模ではないためか離れて3.4組のペアが同時に対人を取り組もうとしている姿を尻目に、私達5人は観客席の隅のほうに集まった。



チェド、ルーク、私、ゼラが一列に並んで座るとサイラスが私達の前に出て杖を上に向けた。


「《沈黙》」


杖から出た水色の光は結界の様に私達5人を包み込む。

この空間だけどこか異質に感じてしまったのはきっと先程まで聞こえていた闘技場からの音が一切聞こえなくなってしまったためだろうか。

コンコンと結界を叩きながらサイラスは説明してくれた。


「この中の音は外には聞こえませんし、外の音も今は聞こえません。

ですので内密な話などにはとても役立つ魔法なんです。

あまり強度はありませんので火弾でも当たってしまえば壊れますが、今はこれでも大丈夫でしょう。


さて、ルークさんは私が言いたいことを察しているみたいですが、一から話していきますね。ロティさん。」


「はい?」


急に名前を呼ばれてドキッとした。

まるで何かを咎められるかの様なサイラスの瞳にたじろぐ。

真剣な眼差しでサイラスは私を見つめて言った。


「私とゼラは鑑定魔法という魔法が使えます。

その物の性能だったり、人の魔力を測ったりもできるんです。

どうやるかと言いますと、ただものに触れるだけでわかってしまうのです。


先程、終戦後のルークさんの元へお連れする際に、

私はロティさんと手を繋ぎましたよね。

あの時に無意識に読み取ってしまったんです。


貴方の魔力は通常の人間が持てる魔力を遥かに越しているのです。

この魔力で魔力暴走を起こしたら王国どころか大陸の半分は消し去ってしまうかもしれないほど。


ルークさんの呪いについて、私もお聞きしたことがあります。

その時にロティさんが魔力暴走を起こした事も。

ルークさんの呪い自体、特殊で精密な呪いの構造なので魔力暴走をした時にその魔力でも呪いをかける自体で魔力をほぼ使ってしまうほどのものだったのでしょう。


その呪いに全て変換した事はある意味幸運だったのかもしれません。じゃなければ大変な事になっていたでしょう…。


ロティさん魔力は脅威です。

自覚もされていないようですし…。通常回復魔法だけで悪夢など消せるはずがないんです。」


「あれはサイラスが覚醒魔法を使ったからじゃ…?」


私は首を傾げた。

私がかけたのはただの回復で、覚醒させたのはサイラスなのに、とさえ思う。


だがサイラスは首を横に振り、話を続けた。


「私はただ目を覚ます手伝いをしただけに過ぎません。悪夢を払い除けたのはロティさんです。


悪夢の払い除けについては説明を省きますが、

ロティさんのその魔力は国を余裕で潰せる程です。

他に漏れれば他の国から狙われてしまうかもしれません。

また魔力暴走を起こした時には取り返しのつかない事になります…。


ロティさんは回復魔法専門みたいなので、魔力暴走を起こした時にどんなことが起こるかもわからない。


このまま何も手を打たず、王国に知られればその脅威から幽閉もありえます。」


幽閉ともなれば私はずっとそこにいることになり、ルークにも会えないんじゃないかと不安になる。

だがそれはルークも一緒なのだろう。

幽閉と聞いた途端黙って聞いていたルークが怒って口を出した。


「そんな事俺が許可するとでも?」


「ルークさんの感情の問題ではないのです。

何百万人、何億の命が曝される危険の話です。

仮に魔力暴走を起こさなくてもロティさんが他の国に攫われでもしたらそこで魔力を悪用されるかもしれないのです。」


サイラスはルークを見つめて切実に話す。

ルークも理解はしているようで眉間に皺を寄せていた。


「私…そんな爆弾みたいな扱いなんですか…。」

「それくらいの魔力が備わっていますから…。ですよね、ゼラさん。」


サイラスから話を振られたゼラがびくっと怯えてながら首を縦に振る。


「は、はい。確かに…魔女ならまだしも人間でその魔力はありえないです…。」


脅威やありえないの言葉に私のメンタルは少し凹んでしまいそうだ。

どうしたらいいものかと思い一つ提案を出す。



「魔女になればどうにかなります…?」


それを聞いたゼラは焦った表情で首を横に振る。


「いえ、魔女はなりたくてなるものではないんです。

魔女が魔女と呼ばれるには条件がありますから。


まずは人族なのに老いが遅く長命である事、それと他の誰も使う事が出来ない魔法を所持している事。記憶の魔女で例えるなら記憶に関する魔法ですね。


魔女自体希少なので、記憶の魔女以外この王国にはいませんが、遠い遠い東の国には別の魔女が存在しているらしいですが、それも確かではありません。

魔女はその存在を隠したりもしますから。」


確かに前世でも今世でも知っているのはスザンヌだけだ。私も前前前世が魔女だったらしいが、それについては詳しく知らない。

きっと魔女だった時の魔力を引き摺っているのだろうが、なぜそうなっているのかがまるでわからない。


ふと疑問に思った。


魔女はいつから魔女じゃなくなるのだろう。


話が脱線はしてしまうためその疑問をそっと心の隅に避けてサイラスに話しかける。


「魔力暴走起こさず…、尚且つこの魔力の事がほかに知られれば大丈夫…じゃないですか?」

「魔力暴走は絶対起こらないと言えませんからね…。」


サイラスは苦笑して眉を下げて言う。

それに続いて同じような表情でゼラも切り出す。


「魔力の事も私達みたいな鑑定魔法を使用する人にふとした拍子に触られればばれてしまいます。」


鑑定魔法が使える人は少ないとは言え、中には使える人がいる。絶対人に触らない、ぶつからないで生きれる訳もない。

サイラスは顎に手を当て考え込んだ。


「無理に魔力を抑える方法もありますが、グニーの事がありますので襲われた時に対処出来ないのは困りますよね。」

「そうですね…。」


ここでまた回復が使えなかったりしたら前世と同じ羽目になる。

それはどうしても避けたい。

苦い顔をする私と裏腹にサイラスは閃いたように声を出した。


「でしたら!

超スパルタで魔力制御を覚えましょう。

私がロティさんの講師になります。感情制御の魔法も教えますから。3〜5日あれば大丈夫ですよ。」


優しく微笑んでいるサイラスだが何故かその顔は裏があるようで怖い。

さっきルークは魔力制御には数ヶ月かかったとか言っていたような気がする。

それを3〜5日というのはこれ如何に。


私以外の3人も苦い顔や恐怖を顔に滲ませている。

ルークが嫌そうな顔でサイラスに尋ねる。


「サイラス…がやるのか…?」

「はいっ。教えるの得意ですから。」


キラキラと笑顔のサイラスにチェドは悲鳴をあげて、頭を抱えしゃがみ込んだ。


「ひー!怖いっす!!サイラス様怖くてほんと嫌っす!!」

「…頑張って下さい。ロティさん…。」


最初の印象はどこへやら、ゼラも血の気が引いた顔で私の応援をしている。

サイラスは頬を膨らませて軽く怒っている様子で話す。


「まあ!酷いですね!

最短で鍛えていくの楽しいじゃないですか。

それに私も治癒師ですから。相性抜群ですよ、ロティさん。ああ、ここまで教え甲斐があるのは久々で楽しみです…。」


語尾にハートマークでもつきそうなサイラスの言葉に、その恍惚とした顔はもはや何かを教える人の顔ではなかった。


肯定も否定もしない私はサイラスから魔力制御について教わることが確定したようだ。

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