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4.中身は中々変われないからね。

「あ、この薬草も欲しい!少し多めに取って!」

「これも……。ロティさん結構人使い荒いっすね。

いや、いいんですけどね、報酬金破格でパーティ組んでもらってるし。」


多少文句混じりの声でアリリセは薬草が入っている袋を持ちながら、言われた薬草を採取するため屈んだ。薬草を土から抜く音がブチッブチッとする。


その抜いた薬草は選別する事なく袋に無造作に入れていく。選別は時間がかかるため後で1人でやるのだ。


薬草といえど、量が入れば重いため持って貰うのは助かる。


私もしゃがみ込み薬草を抜きながらアリリセに話しかける。


「ちなみにアリリセさん、エルダーの花だけじゃ瘴気跡が消せないのはご存知かな?」


バッとこちらを向くアリリセの表情が、一気に強張り顔色を悪くしていた。

今にも叫びそうだし倒れそうな表情を見て、私は慌てて笑って弁解する。



「うんうん!やっぱり知らなかったよね。

大丈夫、大丈夫!私薬師もできるってウルカさんに聞いてるでしょ?

エルダーの花も加工して妹さんに塗ってあげるよ。

瘴気跡に塗らないといけないからお兄ちゃんじゃ妹さん嫌がるかもでしょ?」


きっと体全体に跡があるはずだ、同性の方が妹的にはいいだろう。


アリリセは顔色がゆっくりと良くなり、また泣きそうな顔になりながら口を開いた。


「ロティさん…。薬草採取面倒臭いし、ちょっと薬草の袋重いなぁとか思って…。ごめん…。

俺の依頼なんだから早く取って帰りたいとか思ってた…。

エルダーの花の加工は知らなかったし…ましてや妹にそこまでやってくれるとか…あ、タメ口になってました、ごめんなさい。」


「薬草採取大変だよねぇ。

私は回復(ヒール)ばっかりで攻撃魔法使えないから一人で森に入る事が出来ないの。


薬草でポーションが作れるから、薬草採取手伝ってもらえば報酬金が低くてもいいかーと思って、パーティ組んだんだけど、完全に言い忘れてた!

先に薬草採取手伝ってね!って言うべきだったね、ごめんね!


言い忘れた分でエルダーの花の加工と妹さんへの薬塗りは私がするから許してね。

それとタメ口でいいし、さんづけなしでロティでいいよ。私もアリリセって呼んでいい?」


「わ、わかった。そうだったんだ。

いや、俺もこんな少ない報酬金でなんでパーティを組んでもらったのか気にはなっていたんだ。


実は親の家業でほぼ全財産を使っちまって…。時間が経てば家業の方も安定するから今はちょっと頑張ろう、と思っていた矢先の事だったから…。

手伝い込みでも、まだ足りないけど、なんか…ロティって見た目もだけど中身も女神様みたいだな…。」



確かに報酬金は少な過ぎるくらいだ。

私は何かしら事情があるのだろう、後は薬草採取できるからまぁいいかと突っ込まないでいた。

アリリセは思ったことをすぐに口にするタイプなのだろうか。

 

女神と言われ悪い気はしないがあまりいい気もしない。


「うーん…容姿はともかく、中身を褒めてくれるのは嬉しいよ。ありがとっ。」


語尾に力が入り手に持っていた薬草が土から抜ける。アリリセの持っている薬草袋をチラ見すると、そろそろこの薬草も終わりでいいかと思えるくらいには薬草採取が出来た。


細身だが、まあまあ力がありそうなアリリセでも、これ以上薬草袋を持つのはキツくなるだろう。

私が薬草の事を考えている最中、アリリセはジロジロと私を見ていた。


私の顔をまっすぐ見てアリリセは首を傾げながら話す。


「自分の容姿が嫌いなのか?こんな美人、見た事ないのに。」


自分で言って恥ずかしかったのか、言った後にアリリセは顔が真っ赤になっていた。


「んー嫌いじゃあないけど、あまりいい思い出がなくて。よし、この薬草はこれくらいでいいや。後はエルダーの花を見つけよう!」


半ば強制的に会話を終了させた。

容姿は冒険に関係ないのだ、先に進もう。


実際、シュワールの森に入り、薬草採取をしながらだが約3時間経っている。


他の人なら見つけるまでに、何日も森で探さなきゃならない時もある程、咲く条件が特殊だ。

だな私にはなんとなく咲いている場所がわかるのだ。


私の勘ではエルダーの花に近づいてる。


そう考えると凄くスムーズに行ってはいるのだが、アリリセには伝えていない。

このパーティが終われば解散するし、次は瘴気にやられても魔法か薬での対処が出来るはずだ。


エルダーの花の咲く条件を伝えれば何故そんなに早く見つけるという芸当が出来るのか、と怪しまれるかもしれない。

探し物が得意なだけで何かをしているわけではないので、下手に言葉にしないほうが得策だろう。



◇◇◇



ザクッパキッと音を立て、葉っぱや枝を踏みながら歩く。

時々出てくる魔物をアリリセは剣で切り倒していく。


スライムや角兎など弱い魔物しか出ていない為、苦戦する事なく倒せるが、アリリセがどこかしら傷をつけると私は回復(ヒール)をかける。

と言っても最初の頃にちょっぴり切った位の傷に2回ほど回復しただけだ。


アリリセもそこそこ戦えるようで安心した。


魔物を倒した時に出る毛皮や肉、角や骨など必要なものを剥ぎ取りながら私は気になっていたことをアリリセに尋ねた。


「ねぇ、アリリセ。妹さんはいつも森に一人で行くの?」


アリリセは首を振って答える。


「いいや、今回が初めてだ。

連れて行っている時はあまり魔物に遭遇しないよう気をつけていたし。


いつもは俺か親父と行くんだが、去年あたりから魔物の倒し方を教えてて、角兎の1匹なら倒せるようにもなっていたから大丈夫だと思ったんだろう…。

正式な冒険者になるまでは控えさせないと…。後は一人では今後森に行かないように…」  


とブツブツ言いながら考え事をしているようだ。


私は角兎の1匹も倒す力はない為、10歳の女の子といえど戦闘能力がある事が少し羨ましい。アリリセにとっては心配の種のようだ。


アリリセも戦闘を見ると剣捌きも良く、オークあたりなら1対1の対戦も回復があれば行けそうな気もする。


D等級とはいっていたが、恵まれたパーティに入れればもっと高等級を目指せるのだろう。妹を助けて、気兼ねなく冒険出来るといいなと思った。

❇︎冒険者の等級付け

G級 初心者

F級〜B級一般冒険者。

A級 特級冒険者。ギルマスはA級以上。

S級 王国専属冒険者兼特級冒険者。

S S級 メルニア王国では10人程しかいない。

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