プロローグ
初投稿です。
心お豆腐です…。お手柔らかに、よろしくお願いします。
「こんなに可愛くていい子なのに…勿体ないね…。」
大好きな祖母にそう言われるのは何回目だろう。
皺々の手で私の頭を撫でる祖母の目は私を憐れむ様に悲しい目をしている。
私が両親から愛して貰えないことをたまにこうして独り言の様に呟き、私を撫でて消化しきれない思いを吐いている事に気付いたのはいつだっただろう。
私は別に両親から愛されなくても、祖母がいるだけで十分幸せだった。両親に何もして貰えない分祖母が懸命に私を育ててくれているのだから勿体ない訳がないのに。
私は祖母ににこりと笑顔を作って答えた。
「勿体なくないよ?おばあちゃん。わたしおばあちゃんといられて幸せだもん。それと……ふふふ。」
「ん?なんだい?」
「んーん!内緒!」
それともう一つ、祖母の他に私を支えてくれる事。
誰にも言ったことが無い私の秘密。
それは時々知らない2人の夢を見る事。
夢に出てくる人達に会えることが私の楽しみなのだ。
1人は男の子、もう1人は男の人。
歳も顔も違うけれど、その2人に会えるとホッとして泣きそうになってしまう。
男の子の夢は一緒にお祈りしたり、お出かけしたり、同じベッドで眠ったりする夢が多い。
揺れる黄緑髪は柔らかくて、私の手を握るその手は温かくて、私を見つめる目はつり目で三白眼が特徴的な優しい目。
くしゃっと笑う顔は私の心を満たしてくれる。
誰かに怒られている時には、私の前に出て庇ってくれる。
勇敢で優しい男の子。
会ったことがないはずの男の子なのにとても懐かしくて恋しい。
もう1人の男性は短めの綺麗な銀髪に青い瞳の顔が凄く整った人。綺麗な顔は表情をコロコロと変えて困ったり焦ったり戸惑ったり。
泣きそうな顔をしたと思ったら、優しい顔をしたり、笑ったり、怒ったり。
不思議とどの顔も嫌じゃない、寧ろ可愛く見えたり、心がくすぐられるような気持ちになる。
最初はどこか遠くに感じるその人が、たまにぐっと近くなり気が付けば私を抱きしめてくれている。
縋りたくなるほど求めているような気持ち。
2人共会話をしているはずなのに声にモヤがかかり、聞こえ辛いし起きてしまうといつもはっきりと覚えていない。
2人の言葉を覚えていたいのに、何を言っているのかわからない。
それなのに、何度も見て会いたいと思ってしまう。
幼いながらにこんな夢を見る事が少し後ろめたくてなのに大切にしたくて、大好きな祖母にも話せない。
夢を見ている最中は温かい気持ちになれる。が、終わりはいつも憂鬱だ。
何故なら夢の最後は私はいつも同じナイフで心臓を刺されて死んでしまって目が覚めるから。
それも含めてたった1人の家族にも言えない秘密なのだ。
この事はきっと誰かに話す事のないまま忘れたりしていくのだろうと思っていた。
けれど、その夢は17歳になった今もたまに見てしまうほど私にしっかりと染み付いていて私から離れる事はなかった。