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16.蜂蜜…よりも甘い…。

長話の末、すっかり冷めてしまった紅茶を私は一気に飲む。冷めても美味しい紅茶で一息つき、最後の質問をする。


「ルークは…。」

「うん。」


「色々後悔してない?」

「後悔?」


眉を顰めルークは首を傾げた。その顔がなんだか怖いが、私は見て見ぬ振りを貫く。


「私に付き纏われたり、呪いをかけられたり、面倒事多かったでしょ…?それこそ記憶が戻ったら2人とも解術してお互いに別々に違う生き方を…ひゃ!?」


急に体が浮かび上がった。

怖くて無意識のうちにぎゅっと目を閉じてしまったが、すぐにぽすんとお尻が着地するのを感じ、恐る恐るそっと目を開けた。



「!?下ろして!?ルーク!」


顔の横にはルークの顔がすぐ側にあった。


ルークは魔法で私を浮かせて自分の太腿の上に乗せたのだ。なんとか降りようと試みたものの、がっしりと腰と肩にルークの手が回っているため降りる事が出来ない。


体をかなり密着させられていて恥ずかしくなる。


肩に回っている手が引き寄せられ、ルークの肩に私の頭が埋められてしまった。


「変な事言うから降ろさない。ここで反省して。」

「いや、でも、本当にっ」


「俺は前前世からロティを愛してる。

記憶を無くしたのは汚点でしかない。悔やんでも悔やみきれない。

だけど、悔しいがそこをどうこう言ってもどうしようもない。ロティのおかげで記憶は戻った。

前前世…何百年前から俺の想いは変わらない。


ロティが俺から離れたくても、もう俺はロティを離してあげられない。離れようとしないで。


俺の全てがロティのものでいいんだ。

本当はロティもそうなれば良いのに…。」


ルークは切なそうな声で言った後、ゆっくりと私の額と瞼にキスを落とした。

落ち着いていた体温がまた急激に上がり出してしまうのに、止まる事なく耳や頬にもキスの雨が降る。


「る、ルークッ…。ちょっ、待って…。」


「…ロティが変な事言うからだ。

ロティも記憶が戻ったらさっき言った事を後悔すると思う。

いや、それに関しては後悔してほしい…。」



右手で私の左の手首を掴まれ、手の甲にもキスをされる。


ルークの熱を帯びた青い瞳に負けそうになる。


その眼は優しい色のはずなのに、今は獰猛な猛禽類の様に私を獲物として見られているかのようで、思わず目を閉じてしまう。



「今そんな顔したら今すぐ食べていいって言ってるみたいだな?ロティは煽るのが上手…。」

「…!?そんなことは言っていない!

そしてそれは褒められていないっ!」


目が泳いで何処かに行ってしまいそうだが、目をこじ開けた。

目が合ったルークはさっきの猛禽類は優しい瞳に戻り、心なしか笑っている様に見える。


「しょうがないな。今はこれくらいで勘弁してあげる。」


ルークは私に巻きつく腕の力を緩め、私が太腿の上から落ちない様にだけ支えてくれたのをチャンスだと思い、すかさず私はルークから降りる。


きっと顔は真っ赤だろう。

恥ずかしさからなのか、怒りからなのか体が震える。



「くくっ、そんなに恥ずかしがらないでいいのに。


時間も遅いし今日はもう休もうか。

明日は呪いの鑑定に行こう。この屋敷自体俺が敵対するものを排除する魔法がかけられているから、夜間も襲撃は出来ないと思う。

だが、本当なら一緒の部屋で寝る方が1番安心なのだが。」


ルークはやや困った顔で言った事に私の震えはぴたりと止まり考え込む。


また魔物に襲われたらと思うと背筋が凍る。

羞恥心と命だったら取るのは命だ。



「ベッドは別だよね…?」

「残念ながら?部屋にはベッドがひとつしかない。と言っても大人が3人位腕を広げて寝ても余裕なくらいには広い。それでも一緒が嫌なら俺は同じ部屋のソファで寝るから。」


ルークが笑顔で話すが、この屋敷の主人にそんな事はさせられない。

私は首を全力で横に振りながら答えた。


「なら私がソファで…。」

「それはダメ。」


「なんで…。」

「ロティがソファで寝るくらいならソファを鞄にしまう。

ベッドにも魔法がかけられている。

寝込みを襲われても一撃ではやられないだけの魔法だが。」


守りは頑丈な様で安心はするが、やはりルークをソファに寝せるのは忍びない。


広いというし、両端で寝ればそんなに緊張もしないだろうと私は諦めた。


「…じゃあ、一緒に寝る。」


そう伝えると何故かルークが驚いた。



◇◇◇



寝室へ通されると仄かに明るいシャンデリアが部屋を照らしている。


あまり物を置いていない寝室はかなり広い天蓋付きのベッドと横にはベッドサイドテーブル。

白い椅子が数脚とシンプルなドレッサーがあるだけだ。

窓もある様だが、カーテンがもう閉めてある。


「俺はシャワーを浴びたいから、先に寝ていると良い。飲み物はサイドテーブルにあるから好きにしてくれ。」

「わ、かった。お言葉に甘えて…。おやすみなさい。」


頭を下げると前頭部にルークがキスしてきた。

勢い良く頭を上げるが華麗にかわされ手を振り

「おやすみ。」

と言われ寝室の扉がしまった。





「私の心臓…きっと今日一日で少し筋肉付いた気がする…。」


キスされた頭を押さえながら独り言を呟きつつベッドへ向かう。

のそのそとベッドに上がり枕に顔を埋めると、枕は真新しい匂いがした。


(ルークの匂いはしないな…。……いやいやいや。何考えてるの…。)


1人で変な事を考えてしまい恥ずかしくなる。

ベッドに潜り込み柔らかさに身を許すと体とベッドが1つになったかの様に包まれた心地がした。

今まで使っていたどのベッドよりもふかふかで気持ちが良い。


(今日一日ですっかり色々変わった気がする…。

それに…頭の中…整理しないと……。)


頭を整理しようとするが、自分ではわからないくらい疲れていたのだろう。暖かさと疲れで私はものの数十秒で眠ってしまった。

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