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第18話 疑い

(な、何だ、急に力が…!!)


 俺の肩が、アマンダさんの握力で軋む。

 心なしか周りの空気がピりついており、先程まで聞こえていた周りの冒険者からは悲痛な叫びが聞こえなくなっていた。


「別に無理に答えなくていい。私達にそんな権利はない。冒険者は自由がモットーだからな」


 アマンダは笑顔を見せながらそう言うが、ゼルの肩を掴んでいる手は緩められない。


 この人達が何故こんなにも俺を問い詰めているのかは分からない。俺がエリナさんに話していた内容は、紫色の血を流す魔物が居たと言う事だけ。エリナさんの話によれば、それは異常な魔物と言う事が分かった。


 この人達は、かのSランクパーティー。もしかしたらこの事態にギルドマスターに呼ばれていたのかもしれない。


 ここは素直に言うべきだ。


 しかし、これは正式にギルドから依頼を受けた訳じゃない。アルベイル王からお願いされた事だ。

 Sランクパーティーがどれだけ偉いか分からないが、アルベイル王からお願いされた事を知ってこの人達がどういう反応をするのか分からない。言うにしても、王城に行った事を知っているガンツさんに言うべき。


 そう考えたゼルは静かに口を開く。


「偶々、その死体を見かけたんです」


 無理に否定するのは良くないだろう。心を静めろ。表情に出すな。


「本当か?」


 アマンダさんは片眉をあげ、眉間に皺を寄せている。

 俺は自分に言い聞かせながら、笑顔を作った。


「はい。お話がそれだけならお暇させて貰いたいのですが」

「そうか…分かった。じゃあな」


 アマンダさんがそう言うと、俺の肩から手を離した。

 俺は笑顔でアマンダさんから距離を取る。


「また機会があれば、お話ししましょう」


 ゼルは笑顔を張り付けたまま、2人に礼をしてギルドから出た。




 *


「…もしかして変に思われたか?」

「今のを見るとそうかもしれませんね。何故か私と喋ってた時ぎこちなかったですし」


 アマンダ達はゼルがギルドから出て行った後に、大きな溜息を吐きながら話し合っていた。


「ただ話を聞くだけじゃなかったのか? 張り付いたような笑顔しながら出ていくもんだから、何かあったとは思ってたけどよ」


 センは足を組み、椅子の背もたれに深くもたれかかりながら言う。


「…すまない。少し実力を見せてくれるのではと思って私が手荒に接してしまったのだ。ついでのつもりだったんだが…まさかあの歳であんな冷静な対処をされてしまうとは…」

「いえ、私も何故か嫌な印象を与えてしまったようです」


 もう少し優しく接するべきだった。あの歳であの強さなら、経験上突っかかってくると思ったんだが…。


「…やっちまったもんはしょうがないわな。まぁ、今はキメラを作っている者の方が大事だろ」


 センはそう言うと、酒場の店員に注文を繰り返すのだった。




 *


 俺は1度宿に戻り、ある物を持ち出すと、王都から1時間程離れた森の奥へと来ていた。


 何故王都から出たのか、しかも王都から1時間も離れた所へ来たのか、それは1つに現状打てる手が何もないからだ。国王には話す機会が早々来ないし、貴族が近くに居ることから一層話す機会が減る事になる。

 ガンツさんに関してもそうだ。まず忙しいからと言って取り付く島もない。エリナさんに関しては信じようともしてくれなかった。まぁ、俺も初心者が変な事を言っていたら信用しないから悪くは言えないが。


 だから何かの手がかりがあればと、此処まで来た訳だ。


 2つ目に故郷の村へと稼いだお金を届ける為である。王都から普通に届ける事も考えたが、この俺の手の中にある200万ゴールドをいち早く届け、皆の役に立って欲しい。そう思って此処に来た。


 こいつは王都の近くで呼べば、騒ぎになるだろうから。


「ーーーッ!!!」


 俺はいつも首に掛けている小さな棒状の笛を手に取り、大きく息を吹き込んだ。


 人間では聞こえない高周波の音が周りに響き渡る。


 これは俺の相棒を呼ぶ為の笛だ。元居た国では、よく狩りの手伝いなどをして貰っていた。此処は隣の国だが、アイツならこの音を聞き取り、数時間で辿り着くと踏んでいる。


「さて…何か見つかるといいんだが」


 ゼルは、弓を携え素早く木の上へと登る。


 エリナさんの話によれば、あの魔物は相当異常な事が分かっている。なら、普通に鷹の目を使うよりも"アレ"を使った方がいいだろう。


「…鷹の目…絶視!!」


 そう叫ぶと、ゼルの瞳は黒から琥珀色へと変わる。

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