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第16話 例の件

(流石にここまでしたら、そろそろ本気に…)


 俺がそんな事を思っていると、


「「アレンッ!!」」


 2人の女の子が訓練場の入り口から走りこんで来る。


 そして女の子が俺達の間に入り込み、指導して貰っていた男と離される。


「お、お前ら何でっ!?」

「何でって心配で来たんじゃない!!」

「早く帰る」


 ミーサはアレンを怒鳴り、ソフィはアレンの腕を引っ張り帰ろうとしている。


 まだ指導は始まったばかり。折角の2ランク上の冒険者、騎士団長と模擬戦をした時はあまり技術を学べなかった。此処で帰られるのは、避けたい。


「待ってください。指導はまだ始まったばかりですよね?」


 俺がそう聞くと、3人は何故か顔を青褪めさせた。


「くっ! くそっ!!」

「す、すみません! まだ私達運よくDランク冒険者になったばかりの新人なんです」

「すみません」


 アレンは一言、声を荒げて訓練場の出入り口の方へと向かった。ソフィはゼルに向かって頭を下げた後、アレンを追いかけ訓練場から出て行った。


 何故謝られるか分からなかったゼルは、無難に返事を返す。


「いえ…そうだったんですね」

「はい…もし良かったら名前を教えて貰っても良いですか?」

「ゼルです…」


 とりあえずは流れに身を任せようと考えたゼルは、素直に答える。


「ゼルさん…お詫びは今度必ずします。何かあったら必ず私達”灼熱の牙”がお手伝いします。今日のところはお先に失礼します」


 そう言うと、武闘家の女の子は深く礼をして訓練場から出て行った。


「…まだ指導して貰いたかったな」


 ゼルは1人、ボロボロな訓練場の中で呟いた。




 *


「おぉ。やっと来たかお前ら」

「やっと来たかじゃねーよ、オッサン。夜中にあんな事頼みやがって」


 部屋の奥に座っているのは、ギルドマスターのガンツだった。


 私達は部屋に入った後、部屋中央にあるソファへと座った。


「すまない。だが、緊急だったんだ」


 ギルドマスターであるガンツは、申し訳なさそうに頭を少し下げる。


「仕方ないですよ、今この王都に置いて私達ぐらいの強さの人は、ソラン騎士団長ぐらいですから」


 ユウは小さく溜息を吐いて、ソファにもたれかかる。


 ユウの言う事も分かる。だが、こんな事で呼び出される私達の身にもなって欲しいっていう事だ。折角、酒を飲んで気持ちよく寝ていたのに…。


「てか、早く本題に入ろうぜ」


 センは隠そうともせずに、大きく欠伸をしている。


「で…どうだった?」

「別に何もなかったよ。ただ、サイレントカメレオンが大量に居たのは確かだ」

「どういう事だ?」


 オッサンは訝し気に此方に見ている。


「実はサイレントカメレオンが全て討伐されていたんです。1匹残らず…」

「…何?」

「報告では大量のサイレントカメレオンに、巨大なサイレントカメレオンが居るという話だったけど…その巨大なサイレントカメレオンも討伐されていたよ。しかも全部一撃だった。…まったく…これだと女の子と遊んでた方が…」


 センはボソボソと愚痴を呟いている。


 センの言ってる事は事実だ。大量のカメレオンの頭には、貫かれたような傷があった。それ以外には傷は見当たらなく、一撃で頭を貫き殺されていた。


 サイレントカメレオンは相当な隠密能力を持つ。私達のパーティーは魔導士であるユウがいるおかげで王都周辺を隈なく、正確に探す事が出来るが、普通のパーティーでは魔力量が足りなくなる為、少しの範囲しか探せない筈。


 ハッキリ言えば、ユウ程の魔導士はこの王国には居ない。

 つまり、この王国の冒険者でサイレントカメレオンを大量に討伐できるのは、私達しかいない。


 その筈にも関わらず、全て討伐…しかも隠密能力に長けた魔物に対して、頭を狙った一撃で倒されている。


「相当な奴がいるのかもな…」


 オッサンもその事に気づいた様で、唸っている。


 もしかしてこの周辺に相当な魔物が存在しているのか、それとも私達の様な手練れが潜んでいるのか…。


「面白くなってきたな」

「そうか? 面倒くさいだけだろ」

「面白いわけないでしょ。それよりもまだ報告はあるんです…」


 ユウが神妙な顔で呟く。


 そうだ…そう言えば…


「その巨大なサイレントカメレオンからは紫色の血が流れていたんです」

「何だと!?」


 ガンツは勢いよく立ち上がる。


「紫色の血…」


 ガンツの額からは、一筋の汗が流れ落ちる。


「はい…間違いないでしょう。巨大なサイレントカメレオンの正体はキメラです」

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